第7話 先生を落とすのもチョロイもんですよ!

「そ、それ、は」


「はい!ワンピ○スの単行本です!それもチ○ッパーが主に中心の巻です!」


ワンピ○スの単行本を桃に見せつけられてうろたえている先生をよそに桃は次から次へと手にしているワンピ○スの単行本の情報を語る。

つか、先生!なんであの鬼!悪魔!たまに見せてくれる優しさがまじ天使っ!とまで呼ばれるほどの先生がたかがワンピ○スの単行本を見せつけられてうろたえてるんですか!

はっ!あれか!先生はワンピ○スが嫌いなのか!

まさかあの先生にも苦手な物があるとは知らなかった。


「……はっ!んんっ。で、そ、その本が何だと言うんだ?」


なんとか冷静を取り戻したのか、先生はいつもどおりの口調で聞いてくる。でも先生、眉がすげぇヒクヒクしてますよ。それじゃまるで俺が昨日プレイしたPCゲームのヒロインを攻略したあとに訪れるボーナスステージのドキドキタイムで見たヒロインのヒロインがヒクヒクしてるのと同じですよ!


「陽向くんっ!陽向くんはちょっと思考を停止させてください!」


「お前は俺に死ねと言いたいのか!?」


何故か知らないが、また勝手に俺の心を読んだ桃に、遠回しに死ねって言われた。まだ遠回しなだけ精神に来るダメージは少ないがやはり少しは来る。


「陽向……なぜお前は泣いているんだ?」


先生が俺を心配そうな顔で見ている。

俺が泣いてるって?んなバカな。あれ?おかしいな先生の顔がぼやけて来たぞ?


「もう、陽向くんはメンタル弱すぎですよっ、ほらハンカチでその目から出でいる物を拭いて下さい」


「すまんちょっと借りるぜ」


何故か目からででくる液体を拭く。

勝手に目から液体って出るんだな。


「えー陽向くんのせいでちょっと途切れてしまいましたが話を続けましょう!」


「そうだな」


え?話が途切れたせいって俺のせいなの?いや、俺のせいか。俺が液体をハンカチで拭っている間にも桃と先生は口論を続ける。


「先程の先生の質問にお答えしますがこれは漫画本です!」


「それくらいは当然私も知っている。だからその本が一体何なんだと私は聞いているんだ」


「では順を追って説明しますね。まず、先生は先程、私と陽向くんが作る友人部がただの友達を作る部活ではないとおっしゃいましたね?」


「あぁ。そのとおりだが?」


「確かに先生のおっしゃる通り、私と陽向くんが作ろうとしている部活は一般の、普通の友達を作るのが目的ではありません」


「やはりな。しかし、一般やら普通というのが些か遺戒に思うな」


「はい。そのとおりです。普通の友達を作りたいのはもちろんというか作って欲しいのが私の願いでもあるのですが、私が主に陽向くんが作りたいと思っているのはこういう本、ワンピ○スは万人受けされてますが、こういったアニメや漫画、つまりオタクな趣味を持った方々と友達になりたいのが目的なのです」


桃が流れるような弁舌で真の目的を説明していく。先生はそれを黙って聞いていた。


しかし、ほんとに桃は凄い奴だ。俺のために先生に対して真っ向から話してるんだから。こいつはなんでここまでしてくれるのだろうかと思ったが、頭に過ぎったのは桃の口から出た調教という二文字だった。どうやたって俺を調教したいのか桃は……!


「ほう。そうか。そしてその部活の顧問をやらせるのなら私が適任だと篠原は判断したわけだな」


「はい。そのとおりです」


先生が俺たちの作る友人部に適任?なんで?

でも二人してなんか分かりあってるな。


「先生私たちの部活道の顧問になって頂けませんか?」


「うーむ」


もう一度、桃が先生にお願いをする。

しかし、先生はまだ決めかねているようだった。

後何か、先生を動かせる何かがあれば先生は顧問を引き受けてくれる、そんな空気が漂っていた。


「先生少しよろしいですか?」


「なんだ?」


桃は先生を連れて、カーテンで仕切られている本棚の前に行き何かを話していた。


「ここにはワンピ○ス1巻から最新刊までの漫画と、私たちの大好きなチョッ○ーのグッズを置いてあるんですよ!」


「な、なに!?」


「ちょっと見てみて下さい!」


「う、うむ。少しだけなら……こ、これは!?」


話の内容までは聞き取れないが、先生はカーテンを開けてなかにあるものを見てテンションをあげているようだった。なかに何があるんだ?


「篠原」


中を覗いていた先生が桃に向き直る。


「これからよろしく頼む」


「はい!こちらこそよろしくおねがいしますね!先生!」


そして、爽やかな笑顔の先生と満面の笑みの桃がガッチリと握手を交わした。


「陽向くんー!先生が顧問になってくれましたよー!」


「ましで!?」


握手を交わした桃は俺に振り返りそう報告した。

どうやらあの握手は顧問を容認した証だったらしい。つーかほんとに落としたよ先生を。どうやったんだよ。


「陽向もよろしく頼むぞ」


「は、はいよろしくおねがいします」


俺も先生とガッチリと握手を交わした。

気のせいか先生の顔がこの教室に入った時より輝いてる気がする。


「私が顧問になったということはこの友人部は正式に部になったということでいいんだな?」


「はい」


確認してくる先生に桃が答える。まぁほんとは部員が規定に達してないんだけど。




こうして友人部が正式に部になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る