第5話 名前で呼んでくださいっ!
「部活ですか?」
「そうだ」
俺の提案を聞き返してくる篠原。
さすがの篠原でも全てを悟ることは出来ないみたいだ。篠原って人間だったんだな。
「失礼ですね。私はちゃんと人間ですよ?3次元の」
そう言って、ぐっと体を前のめりにする篠原。テーブルを挟んでいるからぶつかる事はない。
「そうだな。篠原は3次元だもんな」
「その爽やかすぎる顔で言われると、なんかイラッとする発言ですね。それに頑張って胸を寄せているのに目線を全然向けないなんて」
「そんな慎ましい胸を見たって、どうしようもないだろ?」
頑張って……Cくらいか?いやBかもな。
ていうか3次元の胸なんざただの脂肪が膨らんだ肉にしか見えない。余分な肉で余肉だな。
「そんな……!陽向くんは巨乳好きなんですね!?」
少し潤んだ瞳で篠原が聞いてくる。
その表情はどこか絶望じみていた。
「いや俺はどちらかといえば貧乳派だな。でも2次元に限り巨乳派でもある」
「つまりどっち派でもあるということですね?」
「まぁそうなるな」
基本基準が2次元だし。
二次元美少女たちの胸なら大きかろうが小さかろうが愛せる。
「これなら私にもチャンスが……!」
なんのチャンスかは知らないが、俺は3次元の胸には興味ないからな篠原。
「で、話を戻すけど」
篠原の固有スキルである、心術把握で話が脱線というか変な方向に行ってしまったが、話を戻そう。
篠原の心術把握どうにかなんねーかな。
「そうですね。では、んん。聞きたいんですけど、どうして部活を創ろうと思ったんですか?」
まあ当然の疑問だろうな。
突然俺が言い出したんだし。
けど理由を聞かれると少し恥ずかしいな。
邪な気持ちじゃないけどさ。
「……友達が欲しくなったんだ」
「2次元の?」
「おい、篠原。首をコテンと可愛らしく傾げるな。」
くっ篠原めっ!
純粋無垢な目をしやがって!
ああ、たしかに!た・し・か・に!2次元の友達は欲しいさっ!でもな!でもな……!俺が2次元で欲しいのは友達じゃなく彼女なんだよっ!ってこういう話じゃないか。違うな。うん、違うな。二次元美少女の皆さーん、俺のココ空いてますよ。
「ちげーよ3次元のだよ」
すぐさま否定する。
すると、篠原は目をこれでもかと目を見開き、すくっと立ち上がり、俺の腕を掴んで……
「陽向くん!今すぐ病院へ行きましょう!」
なんて言いやがった。
「ちょっと待て!落ち着け篠原!俺は正常だ!」
「嘘です!二次元美少女萌えでloveで昼夜問わずはぁはぁしていて、頭の中で二次元美少女と結婚したらどんな結婚生活になるかヒロインごとにシミュレーションしてまたそれでデュへへって言っている陽向くんが3次元の人と友達を作ろうとしてるなんてっ!」
……酷い言われようだぜ。前は2次元を語ったら病院だったのに今じゃ3次元だぞ?……どうすれば俺は病院を回避できるんだ?
それに篠原、なんで俺が脳内シミュレーションを毎日寝る前にしていることを知っているんだ?
「え?……毎日は知らなかったです。……知りたくもなかったですけど」
シミュレーションしていることは知っていたのか……!あぁ待って!あからさまに引かないで!けっこう傷つくからっ!
「で、陽向さん。どうしてお友達をお作りになりたいと?」
「その他人行儀な話し方は今すぐ辞めてもらえないだろうか篠原さん」
冷静になった篠原は……冷静になり過ぎた篠原は、俺をあたかも他人のかのように話す。これけっこうメンタル来るな。けっこう気のしれた仲のやつからいきなり他人行儀になられるのはやばい。まじやばい。でも、呼び方は陽向のままなんだな。
「なら、陽向さんもその他人行儀みたいなのは辞めてください」
「え?他人行儀って俺は篠原に他人行儀で接してはないだろ?」
思い返しても篠原に他人行儀で接したのは、最初くらいなもんだ。どこが他人行儀なんだ?
「ですから……ですからその……呼び方を……」
「ん?呼び方?」
呼び方って篠原って呼んでることか?どこも不自然でもなければ他人行儀でもない気がするけどな。
「だから……名前で呼んで下さいっ……!」
「はぁ?名前?」
「はい!名前です!」
「名前って苗字のあとにつくあれのことか?」
「はい!そのあれのことです!ていうかなんでそこ確認する必要があるんですか?」
「いや、一応」
名前か。名前ねぇ。
よく分かんないが、3次元の女の子にとって苗字で呼ばれることは他人行儀みたいらしぃ。まぁ別に篠原のことを名前で呼ぶのはいいんだけど。目を爛爛とさせている篠原もいることだし呼び方を変えるか。
「分かった。名前でこれからよべばいんだろ?」
「はい!ではさっそく……どうぞっ!」
「さっそくかよ。まぁいいけど、ピー」
「ピーチ、ピーチ姫はダメですからね?」
「ピーちゃん……」
「それだとインコみたいになっちゃいます!」
「冗談、冗談」
「もう、お願いしますよ陽向くん!」
「りょうかい」
1回呼吸を整えるために深呼吸をする。
スーハースーハー
よし、準備完了だ!こころの準備が。
「も、桃?」
「へへっ、はい!なんかフルーツみたいなニュアンスでしたけど気にしないことにしましょう!」
と嬉しいのか(なにが嬉しいのか分からない)コップについであったミルクティーを一気に飲み干し、ももちゃんお外走ってくるの勢いでおかわりを注ぎにいった。
俺はそんな篠原もとい、桃を見送って
「ふぅ」
と息を吐いていた。
あーやべ。なにこれ?
すげー緊張というか、照れくさいんだけど!
実写は○ないの小鷹くんの気持ち分かるわー。
なんて思って、火照った体をどうにかして冷まそうとしていた。
✩
「んん。ではさらに、話を戻しますけど」
桃がおかわりを注ぎに戻ってきてから、また話を戻すことに。今日は脱線してばっかだなと思いつつ話をすすめる。
「どうして3・次・元の友達が欲しいのですか?」
3次元強調しなくても分かってるから。
「ああ。今日桃と一緒にいて分かったんだよ。俺の気持ちが」
「え?それって?」
なぜかパァーっと顔を輝かしてる桃は無視して俺は話をすすめる。
「やっぱ自分の趣味のことで話せる相手が居るってのは楽しいなって」
俺がそういい終えると、パァーっと輝やいていた桃の顔はみるみる暗くなっていった。
「はぁ。ミクロでも期待した私が馬鹿みたいですね」
何を期待してたんだ、何を。
溜め息辞めろ。近くを通り過ぎたウエイトレス(男性)がすごく心配してるぞ三次元美少女。人様を心配させるなってどっかのラノベかなんかでも書いてあったぞ。
「でもまぁそういうところが陽向くんですね」
「お、おう?」
良く分からないがとりあえず頷いておく。いや疑問形にしたから頷いたとは言えないかもしれないけど。
「それで、もっとこういう話、できれば二次元美少女の話(笑)をしたいと思い友達を作ろうと思ったわけですか」
(笑)をつけるな(笑)を!
「そういうことだ」
「でもなんでそれで部活なんですか?部活を創らなくてもいいのではないんですか?」
まぁ確かに部活を作らなくても友達は作れる。桃の言い分は超正しい。しかしだなそれじゃあダメなんだよ。
「確かにそのとおりだけどさ。ほら俺みたいにこういう趣味を隠したいって思ってるやつもいるかもしれないだろ?そこで」
「部活を創って、その部活内なら気兼ねすることなくそういう話を出来ると思ったわけですか。一理ありますね」
さすが桃。頭の回転率が早い。
「それに教室とかでアニメに興味あるか分からないやつ相手に話しかけるよりも、アニメとかが好きな奴が来るのを部活を創って待ってればいいだろ?」
「なるほど。分かりました」
「分かってくれるのか!?」
「はい!陽向くんがチキンだということが!」
るせー。
✩
翌日、俺はギリギリに学校に登校してしまった。
チャイムがあともう少しでなるというときに廊下である人物に出くわした。
「はようざいまーす」
「はぁ。おはよう陽向」
「どうしたんすか?先生。ため息なんかして」
「この時間に君と鉢合わせすることにため息が出てな」
「先生!それは酷いですよ!それは俺に学校に来るなって言ってることと同じじゃないですか!それとも俺のことがそんなに嫌いなんすか!?」
なんて人だ!生徒にこんなことをいう教育者がいるなんて!どこのクラスの先生だ!……うちの担任だ。
「違うぞ陽向。私は嫌いな生徒やつがいても顔にも口にも出さない。それに学校に来るなとは言ってない」
うむぅ。そうなのか。しかし、さらりと先生の裏の顔を見た気がする。
「じゃあなんでなんすか?」
「私は君にいつも言っているよな?」
そういうと先生は手に持っていた出席簿をポンと俺の頭に叩いて言った。
「少しは時間に余裕を持って行動しろと」
「……すいませーん」
「まぁこの話はまた後ででいい。教室に入れ。チャイムも時期なり終わる」
「はいっす」
☆
教室に入ると俺以外のクラスメイト全員が席についていた。みんな早いね!いつもなら皆が席につき始めたくらいに教室に入れるのに今日は先生と話したせいで遅れちまった。この瞬間がけっこう恥ずかしい。
先生も少し遅れて教室に入る。
先生が教室に入ると教室の空気が1段とピリっとしたのが分かる。なぜなら皆知っているからだ。この先生を怒らせると怖い&めんどくさいと。
セミロングの髪にすらりとした身体つきの先生は美人で評判だ。
しかし、怒らせるととんでもなく怖い。
「じゃあHR始めるぞ。週番号令頼んだ」
『はい。起立』
いつも通り、そしていつものHR。
俺は窓際後ろから2番目という最高のポジションでさっき見たアニメの事を考えつつHRをぼーと過ごす。先生に何度か睨まれた気もするが気のせいだろ。
ぼーとしていたらいつのまにかHRが終わっていた。
「よぉ陽向。今日もギリギリ登校だったな」
ぼーとしていた意識をこっちの世界に引き戻してくれた声があった。俺の隣の席の親友(俺はそう思ってる)関智和せきともかずだ。宿題を見せてくれたり、連れションに行ってくれたりといいやつだ。智和は席が隣ということもあって入学式の時に一番に話しかけてくれたほんとにいいやつなのだ。
「あぁ、まじ今日は危なかった。もう少しで遅刻するところだったからな。危うく俺の目標の3年間皆勤賞をのがすところだったぜ」
「だったらもっと早く登校すればいいだろ?」
苦笑いしながらいう智和。まぁそのとおりなんだけど。
「いやでも朝は忙しいからな〜」
「どうせアニメ鑑賞だろ?」
「ばっかお前!そんな大きい声で言うなって」
「く、口を塞ぐな!そんなに大きい声じゃ無かっただろ?」
「大きい声じゃなかろうが、学校でそれも教室でその話はするなって」
「へいへい」
全く、俺はこの趣味を隠してるんだからさ。うっかり口を滑らせたなんてことになったら親友だろうが殴るぞ!……わりと軽めのやつを
「別に隠さなくてもいいと思うけどな」
「いや隠さなきゃ駄目だろ?」
「なんで?」
「ただでさえ俺は友達が少ないのに、こんなオタクな、それも二次元美少女が好きだとバレたらもっとほかのやつらに敬遠されるだろ?しかも顔がキモいのか俺が歩くと道ができるし」
「それはお気の毒に」
「あれけっこうメンタルにくるんだよな」
俺が教室から出てトイレに行こうとすると、俺を見かけた他の生徒はさっと端に避けて真ん中を開けるんだよな。どこの組長だっての。
「つーかお前が友達が少ないのはお前が人見知りなだけだからじゃん。学校で喋ってんのって俺と先生とあとはあの人くらいか。それに道ができるのも……」
「できるのも?」
「いやなんでもない」
「そこまで言ったら最後まで言えよな」
「わり」
最後まで言って欲しいが、俺はこれからレコーダーからスマホに移したアニメを見なきゃならんので忙しい。最近のレコーダーはほんとに凄いな。
『瀬尾くん今日もギリギリだったね』
『ね。やっぱ不良なんだよ』
『だね。朝から先生に怒られてたみたいだし』
『でもちょっとカッコイイよね』
『カッコイイけどさやっぱ怖いよ。ほらっスマホの画面を凄い形相で見てる』
『ほんとだ』
「いいか陽向。道ができるのは顔がキモいからじゃなくてだな……ってイヤホンしてるのかよ」
この後輩キャラもなかなか可愛いな。
今度グッズを買ってあげねば!!
「ん?なんか言ったか?」
「いやなんでもねーよ」
微笑ましく俺を見ている智和に何故かイラッとした。
☆
長く感じる午前の授業が終わり、昼休みになった。いつも思うんだが、ていうかここ最近、入学して1ヶ月くらい経った今だから思うんだけど、俺は授業中に当てられることが全くない。全然ない。いや別に当てられたいって思ってるわけじゃなくて当てられないなーと思ってるだけだぞ。つーか出席番号順とかで強制的に当たる筈のやつにも俺は一回たりとも当たったことがないんだよなー。これはあれか?あれなのか?
……先生達に嫌われてるのか?。
いやまさかな。そんなわけ……これが本当だったら俺はこの学校で居場所がないぞ?今はこうやって昼休み智和と飯を食っているけど、もし智和が休んだりしたら俺は昼飯、便所飯直行コースになってしまうぞ?それは防がないとな。
「つかさ、お前って女の子に興味あんの?あー三次元な」
唐突に智和が聞いてきた。
「ない」
「はは。即答かよ」
「あるわけねーに決まってんだろ。つか、なんでだ?」
「いや、最近篠原さんと仲良くしてるみたいだからさ」
「仲良くはしてねーよ。つか、なんで知ってんだよ」
「俺にはいろいろな情報網があるからさ」
「どこのギャルゲの主人公お助け親友だよ。どっからの情報かは
知らねーけど言いふらすなよ」
「なんでだ?」
「なんでって、俺みたいなのとつるんでるのを知られたら篠原が困るだろ?だからだよ」
「お前も何というか、あれだな」
「ん?」
「いや、いいやつだと思ってよ」
「辞めろよてれるじゃねーか」
「で、あんな美人といるのに興味がないと」
「全然ない。二次元美少女の方が数兆倍ましだ」
「お前も揺るがねぇな陽向」
「ははっ。よせよ照れるじゃねーか」
「あぁまじで尊敬するわ。お前がTVに出た時、陽向の友達かなんかでインタビューされたら、いつかはやると思ってたんですけどね。いやでもまさかほんとにやるとは……いい奴だったのに。って言ってやるよ」
「おい待て。それは俺が捕まった時の話じゃねーか!」
「そうだけど?」
「そうだけどって……」
「まっ陽向が三次元の幼女に手を出すことは当分ないか」
「まだださねーよ。つーかなんで幼女限定なんだよ」
「いやほんとにいい奴だったんですけどね……」
「ちょっとまてぇ!!今のは言葉のあやだ!まだっつーかこれからも手は出さない!」
誤解を解くのに何分もかかった。
まったく、YesロリータNOタッチの俺は三次元なら中学生にしか興味がないのに。
☆
授業が終わり放課後。
俺は学校の特別棟にある空き教室に桃を呼び出していた。
「どうしたんですか?こんなところに呼びだして。告白でもしようとしてるのですか?」
「その全然期待してない声でいうなら聞くな」
「私だって馬鹿ではないですから、陽向くんがどういう人かも分かりましたし、というか悟りましたし」
僧みたいな発言だな。なにを悟ったというんだ。
「で、このほんとに机も椅子も何もない教室に呼んでどうしたんですか?」
「いや智和に聞いたんだ。特別棟に空き教室があるって」
「はい。それで?」
「ここを部室にしようと」
「なるほど。確かに立地的には最高ですね。角部屋で隣の教室は資材置き場になっていてあまり人が来ませんし」
「だろ!」
やっぱ持つべきものは親友だな!
もしも、彼女ができて学校で気持ちいいことしようとしたらどかがバレないかを調べていただけはある!……親友変えるべきかな?
「部活申請すら出してないのに部室を決めるとはさすがです」
「はは。褒めるな褒めるな。ん?部活申請?」
はて?何かの呪文か?
「部活申請ですよ!部活申請!新しく部活を創るとなったら届け出を出さないとダメでしょう?」
「誰に?」
「生徒会にですよ」
「そうなのか」
「そうなのかって知らなかったんですか?」
「ていうかその概念がなかった」
だってしょうがないじゃないか!
俺が見るアニメってすんごい確率でヒロインが設立さてるんだもんっ!そういう申請とかなんとかって言うエピソードあんまないんだもんっ!
「はぁ、しょうがないですね。私が書類申請とかもろもろやっときますよ」
「いいよ。俺がやるし。つーか桃は俺の部に入る気ないだろ?だったら部外者にやってもらうわけには」
「何を言ってるんですか?」
こいつバカ?みたいな目でみる桃。
「入るに決まってるじゃないですか」
「そうなのか?」
「そうですよ」
「俺はてっきり嫌がると思ったんだけどな」
「そんなわけないじゃないですか。それに陽向くんは勧誘とかできないしょ?」
「たしかに」
「決め顔で言わないでください」
想像してなかったが、人見知りの俺が勧誘なんて……考えただけでも震えが
「それに調きょ、超矯正するには私も部に入った方がなにかと便利ですし」
言い直したな。なんだ超矯正って。つーかやっぱ矯正はこれからもするだな。今まで何やられたのかは知らないけど。
「いろいろやっとくので今日は帰っていいですよ陽向くん」
「今からだとかかるだろうし、待ってるよ桃が終わるまで。夜道を女の子一人で帰らせるわけには行かないし。まっ俺なんかと帰るのはやだろうけど」
「……陽向くんはそういうところがずるいんですよ」
授業中読んでてまだ読み終わってないラノベの続きが気になって今すぐ読みたいからとは言えないな。
✩
「どうしますかねぇ」
「な、どうすっかなー?」
翌日の放課後も部室になる予定の空き教室に俺たちは来ていた。しかし、俺も桃も頭を悩ませていた。
「顧問を用意しろか」
昨日桃が書いた申請書類をまだ残っていた生徒会のやつらに渡すときせめて顧問を用意しろと言われた。……怯えた声で。何故かは俺にも分かんねーけど。
〜昨日〜
「ふぃやっぱ緊張するな」
「渡すのは私なのにですか?」
「それでも緊張するものは緊張する」
生徒会室と書かれた扉の前、まだなかに残っている生徒会の人に申請書類を出すため俺は桃の後ろにいる。ストーカーではないからな。
「あ、その前に陽向くん」
「なんだ?」
「私が生徒会の人と話す間というか、生徒会室に入ったら目を小さいものを見る時の目にしておいてください」
「なんで?」
「そうするといろいろ測どるからですよ」
「そうか」
よく分かんないけど、桃に従っておこう。ほぼほぼ桃に任せてるわけだし。
「では行きますよ。目を作ってください」
「おう」
トントンとノックをし中に入る。
「失礼します。申請書類を出しに伺ったのですが」
「申請書類?なんの……ヒィ!!」
中に入っていた生徒会の眼鏡をかけた男子生徒がまるで幽霊でも見たかのように悲鳴をあげた。俺を見てあげた気もするが気のせいだろ。
「はい。部活設立の申請書類です」
手に持っていた申請書類を眼鏡男子生徒に渡す桃。
「ぶぶぶ、部活のし、しし、申請書類ねね」
それを震える声で受け取る眼鏡男子生徒。大丈夫か?
「あ、あれ?人数なんだけど、ふふ2人なの?」
「はい」
「す、すまないけど部活を設立するには部員最低3名と顧問1人がひ、必要なんだよ」
「ですってよ陽向くん」
そう言って俺に振り向く桃。
そうだったのか。知らなかったな。
(え?そうなんですか?)
「ぁ?そぅなん?」
初めて喋る人だから口が思うように回らない。だがちゃんと伝わったようで
「あ、い、いや!人数はふ、2人でもい、いいよ!」
いや伝わってなかったようだ。でも人数が2人で良くなったらしい。
「で、でも、せ、せ、せめてこ、顧問を用意してくれると……」
「はい!分かりました!」
俺が答えようとすると桃が代わりに答えた。
ていうのが昨日あった。
なんでなんなに男子生徒は怯えていたのだろうか?謎だ。
つーか顧問かぁ。顧問ねぇ。
「先生に頼んでみましょう!」
俺が悩んでいると桃が気合を入れて発言した。
先生?先生ってどこの?
「先生って?」
「私たちの担任ですよ」
「あの人が引き受けてくれるとは俺は思えないんだけど」
だってあの人、人の顔見て溜め息すんだぜ?
可愛い生徒の顔を見て溜め息をする先生ってこれいかに。
「大丈夫ですよ。私に考えがあるので」
「そうなのか?」
「はい!」
もうここまで来たら全部桃に任せよう。
下手に俺が手を出すよりいいと思うし。
そして俺は不敵に笑った桃の顔を見逃さなかった。
桃のやつ良からぬことを考えていやがる……!
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