第4話 正規のデート!
「ふぁぁ」
「朝から凄い欠伸ですね」
「ちょっとな。昨日は……ふぁぁ……二次元美少女あいつらがなかなか寝させてくれなくてな」
「もう、ゲームばかりしてるからですよ?」
「ゲームじゃないデートだ」
たくっ、マロンちゃんをやっとメロメロにできたと思ったら、妹のメロンちゃんが嫉妬って……モテる男はつらいな〜。
「ほら陽向くん、そろそろ現実世界に戻って来て下さい。マロンちゃんとかメロンちゃんとか知らないですけど、そろそろそのうっとりしてる目をどうにかして下さい!」
「なぁ、ナチュラルに心を読むの辞めようぜ?」
ヒロイン属性を持っている篠原は、当然のごとく心を読むスキルを保有している。こいつにこんなスキルあったら無双すんじゃねーの?特に俺に。
それと、別に全く気にしてないんだけどこの前の土曜日くらいからか、篠原が俺の事を名字で呼ばなくなり、したの名前である陽向と呼ぶ様になった。ほんと気にしてはないんだけどな。……ちょっと嬉しいというか、恥ずかしいだけだ。
今日は祝日で学校が休みだ。
俺はこの休みを利用して積み本やら、録画して見てないアニメやら、美少女ゲームをしてはぁはぁしようと決めていたのだが、昨日突然篠原から招集命令が下された。
「なぁどこ行くんだ?俺なんも知らされてないんだけど」
仕方なく……半ば脅されたからついてきたというか朝迎えに来た篠原に歯向かうことはできなく、ついて来た俺だが、どこに向かっているのかが分からない。病院かな?病院ぽいな。……逃げようかな。
「言ってないですからね。それと、病院ではないですよ?」
ふぅ良かった。
「安心してください。病院は別の機会にでも行きましょう!」
……それは安心できねーな
「ふふっ。冗談ですよ。今日は陽向くんを調きょ……矯正するために、私が考えたデートプランを実行します!」
今調教っていいかけたよなっ!?
「い、いえ、そ、そそんなことは……」
目、泳いでる!泳いでるぞ!
ってデート?なんで?
「陽向くんが犯罪を犯さないために、私が体を張って、『ああ、3次元の女の子とのデートは楽しいな〜』と思わせるためやるんです!」
いや、絶対二次元美少女かのじょたちとデートした方が楽しいに決まってるだろ?つーか篠原も俺なんかとデートしたって嫌だろうに。
「私は嫌じゃないですよ?」
上目遣いで俺の顔を覗き込んでくる篠原の顔は不覚にも可愛いと思ってしまった。……篠原が3次元じゃなければどれほど良かったか……。
「失礼ですよ?陽向くん」
なおも俺は、どこに行くのか分からないまま、篠原について行った。
それと、全く全然気にしてないんだけど、俺は途中から声を発していない。なのに会話が成り立つという不思議な現象が起きていた。……全然気にしてないんだからねっ!
……こえーよ。篠原。
☆
「で、なんでここをチョイスしたわけ?」
俺は隣で目をキラキラと輝かせている篠原に聞いた。確かに、デートとはいえ、場所は必ずしもここを選べという決まりなんてものはない。しかし、俺が想像していたのは水族館や遊園地、はたまた映画館といったいかにも3次元の女の子が行きそうな場所だった。だが、この三次元美少女である篠原がチョイスしたのはそのどれでもない!俺の予想とは全然違うところだった。
「ワンピ○ス展……ね」
俺の目に映るワンピ○ス展という文字。
そう、この三次元美少女である篠原はデートといいチョイスした場所はワンピ○ス展。普通の女の子が選ぶ場所ではないと思う。普通の女の子なんて知らないけど。まぁ俺もワンピ○スは好きだからいいんだけどさ。篠原、俺以外の男とデートしたらどこ行く気してるのだろうか?心配だ。
「え?駄目ですか?」
「いや、駄目ではないけどさ」
篠原やっぱワンピ○ス好きなんだな。
つーか好きすぎだろ!
「良かっです。昨日ネットでワンピ○ス展をやっているのを知って、期間が今日までだったのでどうしても行きたくて、行きたくて……あっ……!」
「おい……」
つまりはあれか。俺は篠原に付き合わされてるということか。どうりで夜中にテンションの高い声で電話してきたわけだよ。
「あっでもあれですよ?ワンピ○ス展を見たらちゃんと正規のデートをしますからねっ!」
なんだよ正規のデートって。
まっ篠原が楽しめるのならいいだろ。
自分の好きなアニメや漫画のイベントに行きたいのは俺も分かるし。
ワンピ○ス展の展示されている、フィギュアや原画、アニメのカット映像などを見て回っていると急に篠原がテンションをあげた。
「見てください!チ○ッパーですよ!チョ○パー!」
「あぁそうだな。チョッ○ーだな」
凄い食いつきようだな。
篠原はどうやらワンピ○スのキャラクターではチョッ○ーが一番お気に入りらしい。
「なんでそんな冷静でいられるんですか!?チ○ッパーがいるんですよ!チョ○パーが!」
「逆になんでそんなにテンション上げれるんだよ」
まるで子供みたいにはしゃぐ篠原。
目をらんらんとさせ、食い入るようにチョ○パーを見ている。まったく子供だな〜。
「じゃあ逆の逆に聞きますけど陽向くんはどういうタイミングでテンションを上げるんですか!?」
「そりゃお前二次元美少女とか見た時に……おい!篠原!見てみろよ人魚姫だ!」
やべーテンション上がるぅぅううう!!
人魚姫だ!人魚姫!!
アニメで登場した時はあの愛くるしい表情と可愛い声にやられちまったぜ!
「……そうですね」
「おい!篠原!テンション低くなってるぞ!あげてこーぜ!」
「陽向くんは変わらないですね」
「どう言う意味だ?」
「チ○ッパーではなく、美少女である人魚姫さんにテンションをあげるなんて」
やれやれという表情で俺を見る篠原。
おい篠原それちょっと私怨入ってませんかね?
どんだけチ○ッパー好きなんだよ。
「あっ……」
「どうしました?」
「あの人……」
俺が指さした先に居たのは、前にアニメショップ限定のチョ○パーを買うために徹夜して並んだ時、先頭に君臨して、全身をチョ○パーで固めていた女の人(推定)だ。
「すごいですね……」
「だな。今日も今日とてすげぇ」
その女の人(推定)は今日も変わらず全身をチ○ッパーで固めていた。しかも、驚いたことに前見た時とは全然違う装いだった。……あっ写真せがまれてる……。
「あそこまでのチョ○パー愛……感服です」
何故か知らんが篠原がすげー尊敬の眼差しで女の人(推定)をみてる。小声で私もやるべきでしょうか?などと言っているが、俺はその格好をするなら一緒に歩きたくはないな。
「でもあの人……どこかで見たことがある気がするんですよね。背丈とか、雰囲気とか……」
「そりゃどっかのイベントか何かじゃねーか?たぶん格好から見てもだいたいのイベントには行ってると思うし」
あの気合の入れようならほかのワンピ○スのイベントにも行ってるだろう。俺もお気に入りのアニメならイベントと聞きつければすぐ駆けつけるからな。
「いえ、私はこういった物はあまり行かないですし……身近な人の気がするんですよね」
「そうか」
俺にはそういった感じがしない。いや、知り合いが少ないわけじゃないからな!
俺たちはその後もいろいろ見て回った。
いたるところで篠原がテンションあげて喋るからその度に周りの人たちが何事かと振り返り、またそのテンションあげてる本人が美少女なのでちょっとした騒ぎになったりもした。
……疲れた。
「はぁ、疲れたぁ」
「いや〜良かっですね!ワンピ○ス展!」
俺たちはワンピ○ス展を出たあと、近くにあったファミレスに入った。軽く飲み物などを注文して、俺はぐったりと椅子の背もたれに寄りかかったのに対して、篠原はまだ興奮が冷めやまないのかワンピ○ス展の感想を嬉々として語っている。篠原分かったら落ち着け。
「ていうかさ篠原」
「なんですか?陽向くん?」
「結局今日、ワンピ○ス展しか行ってなくね?」
「……あっ」
時刻は夜七時。そこそこいい時間だ。
それにしてもよく、こんな時間までワンピ○ス展にいられたよな。普通なら30分もあれば回れるコースをたっぷりと五時間以上かけて回ったからかな?足がものすんごく疲れた。
俺の言葉を聞いてからすぐ、さーと篠原から血の気が引いていく。
「わ、私としたことが……つい興奮しちゃって」
ついで五時間以上も拘束されたらかなわねーな。
「どうしましょう……正規のデートをしようと思ってたんですけど」
だから正規のデートってなんだ!
俺は何故かかなり落ち込んでいる篠原に元気づけるわけでもないが言葉をかける。
「でもまあ俺は楽しかったけどな。3次元とはいえ美少女である篠原とデートができたんだし」
ほんとうは二次元美少女あいつらとデートがしたかった!いつになったらその画面から出てきてくれるの!ねぇ!ドラ○もんっっ!!!
「本音が丸分かりなのは気にしないことにしますけど、ありがとうございます陽向くん」
笑顔を見せる篠原。
うん。やっぱり落ち込んでる姿よりは笑顔のほうがいいな。
「それに……」
「それに?」
「こうやってアニメの話を出来るのはやっぱり楽しいしな」
俺は今のところ智和しか友達がいない。いや、もしかしたらこれからもずっと智和かいないかもしれない。けど智和はあまりアニメを見ない。アニメを話せる友達がいないってのは少し辛い。けどこうやってワンピ○ス限定とはいえアニメの話をできるっていうのはやっぱり嬉しい。
「……そうですか。それは良かっです」
顔を赤くして頷いてくれる篠原。あの時、偶然助けたのが篠原で良かったかもしなれない。
「だから俺こそありがとな篠原」
「お、お礼を言われることなんてしてないですよ」
「まっ確かに今日に関してはな」
「もう〜酷いですよ、陽向くん」
今日に関しては俺が振り回されたからな。
でも今のお礼は今までのことについてだ。
「でさ俺考えたんだけど」
俺はついさっき思いついたことを篠原に提案した。待ってるだけじゃダメだと思ったから。友達を作るにはいや、話相手でいい、そういう人を作るためには自分から行動を起こさないと行けないと思った。
「なんですか?」
「部活を創ろうと思うんだ」
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