第二章 お墓にいる幽霊の正体は!?
第3話 人骨スープ事件(事件編)
1
コージは
「何も、ぬかなくたってよ」
コージは夜空に向かって文句を言った。空気が冷たいので、口から出た息が白くなり、もくもくと空に立ち
コージがこんな夜中に
夜中に家を飛び出したというのに、母は追っても来なかった。そのことも、コージのいら立ちに
「へんっ、あんな家になんて二度と帰るもんか!」
ケンカの原因はコージのゲームだった。コージは晩ご飯を食べてから、約二時間もの間ずっとゲームをしていた。先月
コージはやっとの思いで
「ほら、コージ。そろそろゲームを止めて、勉強してから寝なさいよ!」
ゲームを始めてしばらく
ボス戦は
すると、ようやくボスが
「よっしゃ、いけ、いけ! ああ、くそっ! これでどうだ!」
コージはテレビ画面に向かってさけびながら、コントローラーを
「ほら、いい
「うん、分かってるって。もうちょっとだから」
母に注意されても、コージはゲームを続けた。もう少しでボスが攻略できそうなのに、こんなところで戦いを止めるわけにはいかない。テレビ画面の中では剣と盾を持ったとんがり
勇者のこん
「ぐあああ! 何だと、この私が人間にやられるとは」
ひょろ長い敵はうめき声を上げながら、胸を抱えてうずくまった。
勇者はそれを見下ろしている。
しばらく敵は苦しそうにうめいていた。しかし、しばらくすると急に静かになり、何事も無かったかのように、すっと立ち上がった。
「なーんてな。くはははははは。人間のブンザイでよくやったとほめてやろう。だが、ムダだったな。全ての準備はそろった。
ひょろ長い敵は
「魔王様、私の体を差し上げます」
ひょろ長い敵の頭上に黒い雷が落ちた。すると、ひょろ
ようやく敵が
ここからが、本当の勝負だ。いくぞ!
コージは胸を高鳴らせながら、画面と手元に
魔王は大きな剣を振り上げて、勇者の目の前に雷を落とした。
すると、画面がピカッと光り、数回
そして、
2
暗闇はずいぶん長く続いた。
「くそっ、まだかよ! 長げーよ! 早くしてくれよ! 急いでるのによ!」
暗闇のままの画面にコージはイライラした。
早くしないとまた母にどやされる。その前に何とかボスを
「ほら、早く
後ろから、母の怒った低い声が聞こえた。振り向くと、母が
それを見てコージは
「おい、何すんだよ!」
「何って、あんたがずっとゲームを止めないから仕方ないでしょ。もう二時間よ!」
「だって、ボスが強いから!」
「ゲームは一日一時間までってこの前も言ったでしょ」
「そんなこと言っても、ボスが倒せなかったんだから仕方ないだろ!」
「知らないわよ、そんなこと」
「もうちょっとだったのに」
「何回も
「まだ、セーブもしてなかったんだぞ!」
これで、今日した二時間のプレイが
「はいはい、ぶつくさ言ってないでさっさと寝なさい!」
母はコンセントを置いて、コージの
「イヤだ! もう知らねえ。俺はもう家を出る!」
コージは怒って
「もうっ、この前もそう言って家出して、すぐに戻ってきたじゃないの。
「うるさい。今日は本気だ!」
コージは家から飛び出した。母はあきれた様なため息を
コージはその後しばらく町をさまよって、寝る場所を探した。友達の家に
公園のベンチならベッドの代わりになりそうだったが、そこには
コージは夜なので足元に注意して目をこらしながら、しんちょうに飛び石を飛びこえながら、対岸を目指した。
対岸の河川じきの
コージは近くのベンチに向かって、ベンチの上に寝そべった。息が白くなるような時期なのでかなり寒かったけれど、こおってしまうほどではない。がまんすればどうにか眠れそうだった。
コージがベンチに横たわっていると、足の下に
コージは
コージが向かった先にはお寺があった。お寺のまわりは
光はゆらゆらと上下にゆれながら、墓地の中をまっすぐ
本当を言うと、コージは怖くて
3
ヒロトは
今は授業中だから勉強に
そうやって何度も自分に言い聞かせるのだけれど、ついつい
朝から楽しみで、通学中なんてルンルンと鼻歌を歌っていた。一分また一分と時間がたち、それだけカレーが近づいてくる。そう思うと、ついつい時計ばかり気にしてしまう。時計の秒針がコチコチと進むのを見るだけで、口の中がヨダレでいっぱいになってくる。
今日はカレーだ、いやっほう!
しかも、おかずにはアジフライが付いている。
そのうえデザートにはフルーツヨーグルトまで!
こんな最高の給食はめったにない。
ヒロトはつい鼻歌を歌ってしまいそうにそうになって、あわてて声を引っ込めた。すると、鼻歌のかわりにお腹がぐうぅと大きく鳴った。
ああ、もう待ちきれない。
集中、集中。今は授業を頑張らないと!
ヒロトはお腹をさすりながら、授業に集中しようと
今はヒロトの得意な理科の時間だ。どうしてもカレーのことが気になってしまうが、それでもがんばって、ヒロトは先生の話を聞いた。
先生は黒板に絵を描きながら岩石の話をしている。
「ですから、川の底に
先生は教卓の上に、机の引き出しくらいの大きさの
「みなさん、先生のまわりに集まってください」
先生は箱を一番前の席の子の机の上に置き直して、そのまわりに児童たちを集めた。
「この箱の中を見てください」
先生は箱の
箱の中にはいろいろな種類の石が所せましと並べられていて、その一つ一つに小さなラベルが貼られていた。理科が好きなヒロトにはそれらが
「何これ、ただの石じゃん」
先生は困ったように笑いながら、小さくうなずいた。
「たしかに、石ですね。でも、ただの石ではありませんよ。よく見てください!」
先生に言われて、児童たちはもう一度、今度は
児童たちは箱の中にある石を一つ一つじっくり観察した。石の色や形は様々な物があった。赤いもの、黒いもの、青いもの、ごつごつしたもの、つるつるしたもの、ザラザラのもの、ピカピカのもの、どれもが
「あれ、これ、もしかして。
「本当! 中の方がキラキラしてる」
一人の女子が声を上げると、それを聞いた他の女の子たちも箱のまわりに
先生はにやりと笑ってうなずくと、女子たちに向かって音のない
「すばらしい! 正解です。それはアメジストと言って宝石の一種です」
先生は箱の中からいくつかの石を取り出して、みんなに見せた。
「はい、こちらを見てください。これらの石は全て宝石です。
女子たちは宝石と聞くと目を
先生は一つ一つをくわしく説明してから、取り出した石を箱の中の元あった場所にそっと戻した。フタをしめて宝石の箱をしまうと、先生は次の箱を取り出した。
4
宝石を見て喜んでいる女の子たちをよそに、ほとんどの男子は
先生は
「次にこれが何か分かる人はいますか?」
「はいはーい。それは
ヒロトは手を上げて答えた。先生はにっこりとほほえんでヒロトを見た。
「その通り! まず
化石を見てワクワクしない男子はいない。
ヒロトももちろん化石が大好きだ。
だって、ここにある石が大昔には生きていたってすごい事だし。
男子は先生の手元にある化石を見て、きらきらと目を
「うおー、すげー!」
「だって、これが生きてたんだぜ!」
「そうですね。この三葉虫やアンモナイトは四
先生は化石を見せながら、大昔の地球の話をした。
「次はこれと、これと、これです。さて、これが何か分かる人はいますか?」
先生が今度は赤いけばけばした石と、黒色で少しつやのある石、
「では、もう少し分かりやすい物を見せてあげましょう」
先生は小指の先くらいの大きさの、小さなビンを取り出した。ビンの中には小さな金ピカの
先生がビンを振ると、中の金色の砂はサラサラと小さな音を立てた。
「これが何か分かる人はいますか?」
「金色の石だけど、何だろう砂みたい」
ユウキが先生が持っているビンに顔を近づけて、目をこらしている。
「そうですよ、金色をしていますね。だから、何でしょう?」
「金色だから、そのままんまだけど、金かな?」
「その通りです。これは金です。砂のように小さい粒なので
先生が指し示す石を見つめながら、ユウキはおやっと首をかしげた。
「じゃあ、これで車とか飛行機ができるの?」
「そうですよ。これらの
先生は金属の原石をみんなに見せた。機械が好きな男子たちは、その固そうな石をじっと見て、不思議そうな顔をしていた。どう見ても、それらはただの石ころで、ピカピカ光る金属になるようには見えなかった。
「なあ、鉄とか銅は
先生の持ってる小さなビンを見て、タクヤがつぶやいた。
「いろいろな物に使われてますよ。金属の中でも特に
「でもさ、金で作るのって
タクヤが
「えー、お母さんは金の
「たしかに、指輪も金でできているものがあります。もちろん金歯も金ですね。でも、それだけじゃありません。パソコンとか、
先生は金属について説明し、説明を終えると、金属の原石を箱に戻した。
そして最後に、そこいらで見かけるような小石や穴ぼこの空いた石を箱から取り出した。
「最後にこれらが身近な石です。この学校の校庭や花だんに落ちているものもあります」
先生は石を持ち上げて説明しようとみんなに見せた。すると、タクヤがつまらなそうに耳をほじりながら、石を見下ろした。
「なんだよ、今度は本当にただの石かよ! 普通の石なんてどうでもいいだろ! 何にも使えないもんな、役立たずだ。
タクヤは気だるそうに言い
「こんなことしてても時間の
タクヤは左腕に巻いた
「価値が無くはないよ!」
ヒロトは何だか分からないけど、タクヤの言葉が
「
ヒロトは、自分でもおどろくほどタクヤに腹が立っていた。
むきになったヒロトを見て、先生もみんなも目を丸くした。大人しいヒロトが悪ガキのタクヤに向かっていくなんて、初めてのことだった。ヒロトとタクヤはにらみ合いながら、口ゲンカのように
「たしかに、ヒロト君の言う通りです。たとえば、この石を見てください。軽石って言って
先生は次々に小石を取り出して、一つ一つの石の
「これらの石はどれも、普通の石です。ですが、これらが無いと、私たちの生活は成り立たなくなってしまうんです」
先生がヒロトの肩を持つようなことを言うので、タクヤの
「おい、止めろよ!」
「何だよ、お前は関係ないだろ!」
「ヒロトは俺の親友だからな。ヒロトに何かしたら許さないぞ!」
ヒロトとタクヤのやり取りを見ていたユウキが、たまりかねた様子でタクヤにつかみかかった。
悪ガキのタクヤと、
一度ケンカが始まってしまうと、二人を止めるのはとても
「ゆう君、ケンカは止めて!」
ミユちゃんがユウキに声をかけた。すると、ユウキの
「しょうがないな」
女子たちが
「良いか、ヒロト? タクヤを倒さなくても?」
「うん、大丈夫。別に気にしてないし」
「そうか、なら良いか!」
ユウキはケロッと機嫌を直して、ニコニコ笑った。
「ゆう君、えらいね。ヒロ君もね!」
ミユちゃんがほめると、ユウキの顔が
収まりの付かないタクヤは近くの席を
5
理科の
「では、みなさん、給食の席に移動してください」
先生のその一言で、児童たちは教室中に散らばって、思い思いのグループを作った。
ヒロトのクラスでは、先生の
今日もヒロトはユウキとミユちゃんと一緒のグループを作った。いつもなら、グループにはもう一人、ミユちゃんと仲良しのノゾミもいるのだが、今日は
ヒロトたちが三人で給食の
「他にも空席はあるだろ!」
ユウキはコージをいやがるような
「何でお前が来るんだよ?」
「別に良いだろ! ノゾミが休みで、この席はどうせ空いてるんだし」
「まあ、良いけどよ」
少し不満そうだったが、ユウキはそれ以上は何も言わなかった。
席が決まると、今度は給食
給食当番の児童たちは先生に引き連れられて、給食室に向かって行った。そして、五分ほどすると、カレーの入った大きな鍋とアジフライの入ったボウルを持って教室に戻ってきた。それを台に置いて、盛り付けの準備が始まる。カレーの鍋のフタが取られると、教室中にいい
グウゥ、グウゥ。ヒロトのお腹がまた鳴きだした。
少し遅れて、人数分のフルーツヨーグルトが入ったカゴを二人で持った児童たちと、ご飯の入った容器を重そうに抱えた児童が教室に入ってきた。
給食当番の子たちは少しぎこちない手つきで給食を器によそうと、一人ひとりの席に配っていった。最初にサフランライスが配られ、次にカレーの入ったボウルが運ばれてきた。それからアジフライとフルーツヨーグルト、最後に牛乳が机の上に並んだ。
給食を配り終えた給食当番の子たちは、エプロン着を脱いで、それぞれの席に戻った。
カレーを目の前にして、ヒロトのお腹はグゥグゥと鳴き続けている。
先生が自分の席に座り、手のひらを合わせた。男子たちのほとんどはカレーが大好きだ。だから、みんな待ちきれない様子で、先生を見つめている。
「はい、みなさん、手を合わせてください! いただきます」
先生がいただきますを言うと、クラスの男子たちがいっせいに「いただきまーす!」と元気にさけんだ。その
ヒロトのとなりの席では、ユウキも
いただきますから数分がたったころ、最初に食べ終わった男子が席を立った。
「先生! カレーのおかわりをしても良いですか?」
「はい、どうぞ。ただし、よくばりすぎないで、みんなで分け合いながら食べてくださいね。アジフライとヨーグルトは欠席した子の分しか残っていないので、おかわりをしたい子は後でじゃんけんをして決めましょう」
「はーい!」
カレーの前にはすぐに長い
早くしないとカレーが無くなっちゃう!
ヒロトとユウキも急いでカレーを食べ進めて、席を立ち、おかわりするための列に並んだ。カレーはどうにかヒロトの番まで残っていた。
よかった、おかわりできる!
ヒロトは後ろに並んでいる人のことも考えて、少なめにおかわりした。
カレーの入った器を持って戻ってきたヒロトに、先に席に戻っていたユウキが何かを
「なに、どうしたの?」
「おい、あれ見ろよ!」
ユウキは小さな声で言いながら、ヒロトの前方をあごで指した。
ヒロトの向かいの席では、コージが浮かない顔でイスに座っていた。いつもは
「おい、コージ、何でカレーを食べないんだよ?」
「ああ、別に。ちょっとな」
「本当に、コー君、どうしたの? 今日は元気ないよ」
ミユちゃんもコージを気づかって、コージの顔をのぞき込んだ。
コージは辛そうな顔をしながら、ミユちゃんを見上げた。
「あのさ、俺、昨日な、見ちゃったんだよ……」
コージは今にも泣き出しそうな声で、何かにおびえるように、ゆっくりとしゃべり始めた。
6
コージは見えない何かを見るみたいに、
「俺さ、昨日家出したんだ。母ちゃんがゲーム中に電源コードをぬいたからさ」
「えー、またコー君家出したの? 今月だけでも三回目でしょ!」
ミユちゃんが
「それでさ、
「それで、何を見ちゃったんだよ?」
「ああ、今から話すよ」
ユウキに
ヒロトはだまってコージの話に耳をかたむけた。
「川の橋の辺さ、ちょっといったところ。お寺があるだろ。そこにお
「だから、何をだよ?」
「何をって、あのな、
「えっ、幽霊!?」
ユウキとミユちゃんがそろっておどろきの声を上げた。
ヒロトはそこまで聞いてもまだだまっていたが、コージは幽霊と口に出した後はうつむいてだまり込んでしまった。そこで、ヒロトはやっと口を開いた。
「ねえ、その幽霊って、どういう風に見たの? そのときの事を教えてよ」
「え、ああ」
コージは
「最初はな、お墓の方から変な明かりが見えたんだ。それで気になってその光の方に言ってみたら、その光がすうぅって横に動いたんだ」
コージは
明かりは上下にゆらゆらとゆれて
「それが幽霊なの?」
「ああ、あの光はきっと
コージには光の動きが死んだ人の
「たしかに、ちょっと
ヒロトは首をかしげながら、コージの顔をのぞき込んだ。
「いや、それだけじゃないんだよ」
「じゃあ、何なんだよ。もったいぶらずに全部話せよ!」
ユウキがコージをせっついた。
「その後でさ、俺も光の
コージはおびえた子猫のような目をしてヒロトたちを見た。
「きっと、お墓の中から穴をほって、幽霊がはい出してきたんだ!」
「それで、その後はどうしたの? 光を追いかけたの?」
「いいや、怖くなって家に帰ったんだ。でも」
コージはしゃくりあげた。
「落ちついてよ。
ヒロトがそう言うと、コージは
「俺な、幽霊に
「取り憑かれたって、何かあったの?」
「ああ、今朝起きたら、急に体が重くて。服がじっとりしていて、こうして今もご飯すらのどを通らない。これって、きっとあの幽霊の
コージは目に涙をためながら、助けを求めるような
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