リシュ編:前日訓練
「……それでルーヴィッドは来ないんだな?」
翌日の放課後、クスネからある紙を受け取っていた。そこには、好き勝手戦って良いなら訓練も必要ないよなとサボりを宣言するルーヴィッドの言葉が書かれていた。
確認のためにクスネに質問すると、彼女はコクンと首を縦に振った。今日の最後の授業は選択授業でクスネとルーヴィッドは同じ授業を受けていたから、彼女を伝言係に選んだのだろう。今ルーヴィッドがどこにいるかもリシュにはわからないし、探すだけ時間の無駄だと切り捨てる。
「まあいいや。この方がむしろ実戦に近いわけだし」
明日の模擬実戦でもルーヴィッドは俺たちを無視して一人でラスクたちの所に突っ込むだろう。その後の動きを確認したかったから、今日の訓練には支障はないとサボりは気にしないことにした。
「拙者は爆発魔法を使わない方向で良いのだな?」
昨日はリシュが叫ぶだけ叫んで教室から出ていったから、オルドは確認としてリシュに質問する。
「それで良いよ。今日はとりあえず俺とクスネと手合せして、オルドの戦士としての力を調べる。それに則って作戦を指示するから」
「心得た」
オルドは自分の要求が通った事に安堵の息を吐きながら、ストレッチをする。クスネも準備と了解という紙を近くに置いて柔軟をしていた。そのクスネの姿を見て、リシュは今日はみっちり訓練しないといけない事を改めて意識する。
クスネはこの学校に入学した時にはすでに声を失っていて、リシュだけでなく他のクラスメイトたちと話す時も筆談とジェスチャーのみである。だから実戦の時には彼女と意思疎通を取るのが非常に難しい。できる限り作戦を覚えてもらって、その時々でリシュが指示出しをする必要がある。今日一日しかない訓練時間は非常に大事な時間なのである。
しかし二人とも戦闘において縛りはあるものの、基本的にリシュの言う事に素直に従っていた。リシュはその二人の姿を見て、昨日の絶望感が薄れるのを感じていた。
(そうだ、俺がリーダーなのは確かなんだから、しっかりしないと。テンション下げてる場合じゃねぇ!)
リシュは両手で頬を叩いて対戦相手を思い出して気持ちを切り替える。
魔法使いとしての成績も上位に位置するラスクは手ごわいが、双子の姉であるショコラは戦士組では下位の方、妹のココアは魔法使い組で平均レベル、そしてもう一人のメンバーのタジムも戦士組では下位の方というだけでなく、リシュは彼と幼なじみで良く一緒にいるから戦い方を熟知している。相手のメンバーの実力を思い出して、リシュは再び勝てる自信を取り戻していった。
そして二人に混じって柔軟を始めながら、作戦をいくつか口頭で説明していった。
「リシュチームの全メンバーのフィールドアウトを確認。勝者はラスクチームです」
翌日、リシュたちはラスクたちにほとんど何も出来ずに一方的にやられたのであった。
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