第5章 成陵御霊神社

成陵御霊神社 1

 昇り始めた朝日が林の隙間から本殿を照らす。ちゅぴちゅぴ、ちゅぴちゅぴと小鳥がさえずっている。

 御霊神社の宮司である三笠は、境内を竹ぼうきで掃除をしていた。

「おじいちゃん! たいへんっ! たいへんっ!」

「なんじゃ、朝から騒がしいのう」

 猫のアテナを連れて巫女姿の香奈枝が駆け寄ってきた。

「たいへんなの! 鍾馗鏡がなくなったわ!」

「なんじゃと?」三笠は竹ぼうきの動きを止めた。

「鍾馗神堂の扉が開いたままになってて。周りを探してみたけれど、どこにもないの」

「この前の女子高生か?」

「ううん。あの子たちは成陵西高の子だから……」

「あぁ、先生のところか」

 香奈枝の足下でアテナがすりすりと灰色の身体を寄せる。

「アテナ、なんか知ってる?」

 アテナは、「みゃーお」と鳴き、金色の目を細め、香奈枝の足に気持ちよさそうに顔をこすりつけている。

「わしも見てみよう」

 三笠はくるりと向きを変え、鍾馗神堂に向かった。

「アテナ、行くよ」

 香奈枝とアテナもついていく。


 林の中は、まだひんやりとしていた。奥に進んでいき、鍾馗神堂の前で止まった。

「確かに、ないな」

「うん……カギも壊されてるの。やっぱり早く直しておくべきだったわ」

 三笠は辺りを歩き回り、ある場所でしゃがみ込んだ。そこには小さな水たまりが出来ていた。

「昨日、雨降ったかしら?」

「いや、これは……」

 三笠は、水たまりにそっと人差し指をつける。

「まさか、砕焔か……」

「さいえん?」

「香奈枝ちゃん、先生に知らせるんじゃ」

「うん、わかった」

「また戦いが始まる……思ったよりも早かったのう」

 三笠は睨み付けるように水たまりを見た。


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