第4章 成陵西高校の教室

成陵西高校の教室 1


 昼休み。恵子たちは教室で弁当を食べた後、文化部棟へ向かった。


「すると、つまり、また鍾馗神を召喚せずに成仏させたってことですか?」

「はい。その男の子は、母親の前ですっと消えていきました」

 恵子は同意を求めるようにいずみと奈津美を交互に見る。

「……ふむ。たいしたものです」

 兎我野は独り言のようにつぶやいた。

「なぁ、こんなこと、いったいいつまで続ける気なんだ?」

 相変わらず威圧的な態度のいずみが腕組みをしながら問う。

「前に言った通りです。次の期末テストまでです。片瀬さんが弓道の大会前で大変なのは知っていますが、こちらも中断するわけにはいきませんから」

「じゃあ、せめて目的を教えてくれないか?」

「目的?」

「あぁ。目的なくダラダラするのは嫌いなんでね」

「目的は、前も言ったように古道さんが約束をやぶ――」

「それは口実だろ」いずみが鋭く割って入る。

 兎我野は渋い顔をしてしばらく黙っていた。恵子もいずみも同様に黙った。

 奈津美は険悪ムードにあわわ、あわわと呟いていた。

「片瀬さん。キミが疑いたくなる気持ちは十分に分かります。でも本当に何もないのです。強いて挙げるならば、初めに古道さんに伝えたように、僕の研究の手伝い――、つまりこの街の民俗学研究のデータ集めをしていることぐらいです。幽霊が視えるとか、鍾馗眼とか非科学的で信じがたいかもしれないけど、本当にそれだけなんです」

 兎我野はすまなそうな顔をした。

「……で。次はどうすれば良いんだ?」

 いずみが納得していないのは明らかだった。

「そうですねぇ。古道さん、高岡さんの知っている幽霊の噂を解決してきましたから、次は、片瀬さん、キミが知っている噂にしましょうか」

「ふんっ。分かったよ。私が知っている幽霊の噂を解決してやる」

「よろしくお願いします。必ず三人で行動するように」

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