成陵御霊神社 4
恵子と奈津美は昼休みに兎我野に会い、ここ数日間の出来事を話していたのだ。
御霊神社へ行ったこと、林の中で祠を見つけたこと、祠の中の鏡を触ったこと、さらには、カメラなしで幽霊が視えるようになったこと、包丁の持った幽霊にいずみが襲われたこと、そして教室でよく話す幽霊を視たこと。
ただ、兎我野が御霊神社に行き来している情報を得たことは話さず、たまたまあの周辺を歩いていたところ雨が降り、雨宿りをした場所が神社だった、ということにして話した。
恵子が一通り話し終えると、兎我野が口を開いた。
「実は、キミたちに話すべきことがあります。今日、片瀬さんが退院して元気なら、三人で御霊神社に来てください」と。
「あとは神社で話します」
そう言うと兎我野はそれ以上のことはなにも話さなかった。ただ、いつになく深刻な表情をしていた。
「なるほどな。兎我野が神社で何しているのかってことを自ら話すってことか」
「それは分からないけど。でもわざわざ神社で話すってことは何か意味があるんだろうね」
「そうだな。この前の巫女の正体も気になるところだしな」
「片瀬さーん」
若い看護師が病室に入ってきた。
「あら」
看護師は恵子と奈津美を見ると軽く会釈をした。
「手続きが完了したので、もう退院して大丈夫ですよ。お大事になさってください」
用件だけ伝えると、すぐに別の患者の応対に行ってしまった。忙しいのだろう。
「看護師さん、わたしと同じ名字だった」
奈津美が目を大きくして驚いている。
「へぇ、高岡?」
「うん。なんか親近感沸くね」
「いいなぁ。あたし会ったことないよ、同じ名字の人。古道だよ、古道」
「なかなかいないな」
「それはそうと。いずみ、どうなの? この後いけそう?」
「あぁ、大丈夫だ。話聞く分にはなんら問題ない」そう言うとギプスをした腕を高くあげて見せた。
「いいの? 迷惑じゃない?」
「そうやって気にされる方が迷惑だ。ちゃっちゃと聞きに行こうぜ」
いずみは早速立ち上がった。
退院の手続きを済ませ、十八時前には病院を後にした。退院祝いと、怪我をさせてしまった謝罪を兼ねて、近くのファミレスで夕飯をごちそうした。
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