成陵西高校の教室 12


――わりぃ。遅くなった

 いずみからのSNSメッセージだった。

 恵子はすぐにいずみへ電話を掛けた。呼び出し音がなったが、すぐに切られてしまった。

 変わりに、「まて」という短いメッセージが届いた。指示通り待っていると、数十秒後に、

――利き腕が思ったように動かねぇし、しかも病院だから電話は出れん

 また余計なことをしてしまったと思った。

――ごめんなさい

 とだけ、短いメッセージを返す。

――別に怒ってないから、気にすんなよ

 それから、クマがフラダンスしている楽しげなスタンプが送られてきた。

 スタンプなんて普段使わないのに。しかもフラダンスって、意味分からないよ。

「――友達っていいな」

 安藤の言葉が頭の中で再生される。恵子は口元が僅かに震え、小さな涙を流した。


――いずみ

――なに?

――大好き

――なんだよいきなり。きもちわりぃな

――いろいろとごめんね

――もういいから

――ありがとう

――ああ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る