エッセイ 爆発
檻に閉じ込められた少年は、ずっと待っていた。
檻に閉じ込められた少年は、越えられる天井をいつも眺めた。
檻に閉じ込められた少年は、
自分の可能性を知らない。
生きることが苦しいと思えた。
自分で考えて生きることはこんなにも楽しいのに、こんなにも苦しいものなのだ。
押し込められた小さな箱の中で私は息をする。
こんなに人が多くいるのに、人の心は見えない。あふれかえる人の苦しみを、人は言葉にしないとわからない。
死にますか?
生きますか?
笑いますか?
怒りますか?
謝りますか?
ほめますか?
自分の存在を、この多くの人込みの中で見失うことはありませんか。
19歳はとても不安定だった。
今まで、よしよしと頭をなでられて、手とり足とり導かれて、それに準ずるがまま生きてきた。
けれど、人は一瞬で「自立」させられる。
世の中がそう決めたように、私たちはおぼつかない二本の足で立たなくてはいけなくなる。
渋谷駅、
人が行きかうプラットホームの中心で、私が座り込んだ。
世界が勝手に先に行く。
私を置いていってしまう。
私はどこに立っていたらいいのかわからない。
存在意義を主張していた制服はない。大量生産のありふれた服でここに座っていても誰も私を気に留める人間などいない。そう気が付いた。
行き場のなくなった感情が私の中だけで爆発した。
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