エッセイ 親父のいびき


 今年も一年が始まる。年越しを田舎である岡山で迎えたわけだが、離れで寝泊まりする息子と、その娘は同じ部屋に布団を並べて眠らなければならないわけだ。これが悪夢の始まりとなることを田舎に帰る前の私に伝えてやりたい。

親子そろって鼻腔が詰まりやすくいびきをかく。恥ずかしい話なのだが、自分でもどうしようもないので隠すことはしない。。そして、父は酒を飲むといびきが悪化する。いつか、睡眠時無呼吸症候群といわれ、酸素マスクのようなものを装着していたが、永遠とつけていけないことからつけるのをやめた。今日は年を越す。親戚と鍋を囲み酒も進む。実家に帰ってきて、うまい酒だっただろう。娘と酒を酌み交わすなんて、、、お父さんうざい。と言って部屋にこもるような娘出なかったことを少し感謝してもらいたい。心の中では「親父うっぜ」と思うことはしばしばである。さて、話がそれたが、父のいびきは酒が入ると悪化する。昨晩それを実感した。うとうとと薬が入って眠いなあぁ。と思えた頃だ。

グオオオオオオオオオオオ・・・・・

地鳴りかと思った。だって木造家屋の床が震えるくらいだ。

なんじ、えれぇ地響きが怒っとるなんな!

布団を引っぺがして起きてみると、揺れているわけではない。

グオオオオオオオオオオオ…ふぁああ…ふぁっ!らああああ♪

………親父か!

何故かわからないが、らぁああと寝ながら発生練習までしてくださる始末。私は睡眠競争に敗れた。仕方がない。これは布団をかぶって、音楽を聴こう。

………GReeeeNが負けるだと…

私は負けてはいけない。父のいびきはボリュームを増し、無呼吸の特徴である、呼吸が止まるという現象に心臓をどぎまぎさせていた。これでは私が過呼吸に陥ってしまう。父の呼吸音に心臓が持たない。

私は布団の中に入っていた厚手の毛布を引っ張り出し、離れの片隅にあった物干しをひきづり、父と自分の布団の間に入れた。そして、自分の布団を壁際ぎりぎりまで引っ張り、できる限り父から遠く離れると、間の物干しざおに毛布を掛けた。毛布が音を吸収して、少しは穏やかに眠れるのではないだろうか。そう考えたのだ。

しかし、父のいびきは私の想像を絶した

毎年夏の合宿で子のいびきの横で寝てる仲間たちに頭が下がる。

私は父との睡眠競争に二日連続で負けこうして文章を書いている。

頭まで痛くなってきた。深夜三時だ。アイフォンの電池が切れる前に眠りに落ちたい。音楽が消えたらもう地獄だ。地獄のほうがましかもしれない。

毛布はあまり効果がないことを知った。薄いのだ。布地を通り抜けて、天井から轟音が聞こえてくる。私はもう嫌になって眠っている父を蹴ってやろうかと思ったが、蹴ったところでもう一度寝ればこの轟音…。

私は押し入れから、最も厚い敷寝を引っ張り出して毛布の上にかけてやった。これ以上厚みのある布はない。これでだめだったらもう明日の朝寝よう。そう心に決めた。父のいびきは強敵だ。これはもう頭が痛い。かちわれる。やっちもねえ。ぼこぼこじゃ。そう言いたくなる。

そうやって昨晩は何とか睡眠にありついたのだが、今日はその敷寝を母屋に持っていかれてしまった。

もう仕方がない。私はあきらめた。

初夢を 悪夢に導く 実の父。

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