エッセイ 写真

本は開き、目で文章を追い、読み進め、頭の中でそれを想像しながら楽しむと言う不思議なことができる。


本を読んで、読み終わった後ふんわりとした優しい気持ちになる人も多いのではないだろうか。


私はそんな人の一人のわけだが、本と同じように優しい気持ちになるものがある。


それが写真だ。




私は写真を撮ることが好きだ。


写真に興味を持ち始めたのは高校生のころ。携帯電話。今でいうガラケーの写真機能を使って、空を撮るところから始めた。


なぜ空だったかと言うと、高校生のころ、後輩が写真コンクールで入賞した作品がとても美しい空だったからだ。空は空でも、道路のミラーに反射して移る青と白のコントラストの美しい空と雲だった。


私はその写真に見とれた。友人でもあったその後輩に、とても美しい、こんな写真をどうやってとったのだと聞くと、カメラを向け続けたと言われた。


私は、どういう意味か分からなかったが、自分もカメラを使い始めてなんとなくわかってきた。


ふとした瞬間も逃さないように、カメラを向け続ける。暇があれば指でフレームを作って被写体を箱の中にいれ続けた。


空の写真はフォルダを占拠し続けた。


多摩モノレールと空、西武線と空。鳥と空。中でも桜と空のコントラストはとても美しい。


済んだ水色の中に淡い桃色が映り込み、風で揺れている姿が私にとっては一番美しいものに感じた。


空の被写体を多くとった後は、海が好きになった。海と空の色は同じ青でも少しずつ違う。朝と、昼と夜と、すべての時間で違う表情を見せると自然の雄大さに私は惹かれた。


一年以上瀬戸内海の近くに住んでいた私は、暇があれば自転車にまたがり、海へ向かった。


足と海、人と海、石と海。そんな風に何かと何かを合わせると一つが引き立った。


海と夕焼け、海と自転車。私は見る人が美しいと思える写真ではなく、好きだと思える写真を取りたかった。


海の写真でいちばん大好きなのは友人がバーベキューをした後にふとした瞬間で笑ったあの写真が大好きだ。


そして、気が付けば人との写真が好きになった。


自分が写っていないこともしばしばあるが、それでも、人が笑顔でいる写真はとても好きだ。


その瞬間を切り取ってもう一度思い出すことができるその余韻が写真に残っている。


私は大好きな人と、くしゃくしゃな顔で笑った写真が大好きだ。


久しぶりに会った幼馴染の笑顔や、いつも一緒に遊んでいる友人のふとした真面目な顔、同じ時間を共有した仲間の顔が、まぶしく見える瞬間だ。




写真はそんな風に今を切り取ってくれる。


何度も何度も見返して、不思議な気持ちになるのは、今その瞬間にタイムトリップしているからではないだろうか。

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