第2話


ん…。


まぶた裏に光を感じて男は意識を浮上させる。男はなにか柔らかで暖かなものに包まれていた。やさしいその温もりに抱きしめられているのは心地よく。目覚めは気分がいいものだった。目を開けば男の隣には昨日出会った女の女体が横たわっていた。

男はそれに目を細めて微笑むと自分にかかっていた毛布を女へとかけた。


眠っている女は商売女だが、眠っている顔は幼くあどけなく見える。起きている時の取り繕った大人の女を気取ったツンとした顔よりかわいく見えた。

起き上がってコートを羽織り、忘れ物がないか確かめる。


その物音に女が起きる。それに気づいて男は振り返って「まだ寝てていいよ」と頭をなでて「昨日はありがとう」と寝ぼけ眼をする女のその胸元に幾枚かの紙幣を差し込んだ。


「お金ってあんた昨日何も…。」


「昨日はゆっくり久しぶりに眠れたから。お礼だよ」


一人の夜は冷たくさびしいものだから。お金を断ろうとした女に再びお金を握らせて男は部屋を出た。



「はー。まだ吐く息が白い」


早朝の路地を歩く男が息を吐き、その息が白く霞む。それを確かめて昨日終わった仕事を振り返る。久々に善人を相手にしたいやな仕事だった。


朝日の似合わない男はその日の光から逃れるように影の多い路地裏のさらに日の差さない地下にもぐった。

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