覚悟 04

 サスライの背中を見送る俺の傍で、ヒナタが大きな声を出した。



「隊長! 敵がっ……とうとう三つ首竜が姿を現しましたっ!」



 俺は振り返り、出現した宇宙生物の姿を見上げた。事前にデータは確認していたはずなのだが……実際に目にする敵はあまりにでか過ぎる。


「すげぇな……。まるでビルが蠢いているみたいだ……」


 こんな巨大な生物と、俺達は本当に戦えるのだろうか? 不安は大きいが、今はびびっている場合ではない。俺達はこの場をサスライに託されたのだ。俺は自分自身の腹をくくってから、みんなに確認した。


「全員、覚悟は出来ているか?」


 視線を送ると、それぞれが返事をした。


「はいっ!」

「勿論だよっ」

「いけるわっ」


 軽く頷いてから、俺は三人に指示を出す。


「全員、戦闘準備っ!」


 三人はそれぞれの武器を構えて、巨大な宇宙生物と対峙する。


「よく聞けっ! いきなり三つ首を狙わず、まずはでかい胴体部分からダメージを与えていく。三つ首の一つは高熱の水蒸気を吐いてくる。このブレス攻撃は威力が高いので、余裕を持って回避するように。また、あの馬鹿でかい尻尾による尾撃テイルブロウを受けると即死の危険性が高いらしい。これだけは絶対に回避しろ!」


 目の前の強大な敵を睨みつけながら、三人は俺の言葉に耳を傾けている。


「今こそ姫結衣魔法少女隊の力を示す時だっ! あの子の、流離夜宵の信頼を裏切るなっ!」


 大きく息を吸って、俺はスタジアム中に響き渡るような大声で言い放った。



「この街の平和は俺達が守るっ! ゴルカッソス攻略戦――開始っ!」



 俺が放った懐かしいキャッチフレーズに、三人は目をキラキラと輝やかせて応えた。



「「「おうっっっ!」」」



 一際大きな声で掛け声を揃えると、三人は一斉に走り出す。

 俺は三人の後姿を見送ると。


「CQCQ」


 符号を唱えて変身端末を開き、スタジアムの照明を背に片膝をついて構えた。


『……パンッ……パパッ…………カンッ……』


 三つ首竜に挑もうとする俺達の背後では、既にサスライと悪い魔法少女達が交戦しているらしく断続的な発砲音や金属音が聞こえている。


 こうして、ゴルカッソス攻略戦が始まった。

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