十一章 ゴルカッソス攻略戦

ゴルカッソス攻略戦 01

 巨大な目標、三つ首竜ゴルカッソスはまだ出現したばかりで動きが鈍いようにも見えた。


 これを先制すべく、俺は三人に攻撃指示を出す。


「今回はツキコによる継続的な遠距離攻撃をベースダメージにする。ヒナタは敵の意識がツキコへ向かうのを阻止、クウは敵を引き付けているヒナタのバックアップに回れ」


「「了解!」」


 俺の指示通り、まずは戦いの火蓋を切って落とさんと、十分に引き絞られた矢がツキコの弓から放たれる。ウズルズと戦った時と同様に、まずはツキコが初弾を叩き込むのだ。


『バシュゥゥンッッ』


 放たれた黄金色に輝く光の矢が腹部へ直撃すると、寝ぼけているように見えた三つ首が、目をパチクリさせて一斉にツキコの方へと頭を向ける。


 次はヒナタの出番である。


「ヒナタっ!」


「はいっ!」


 のっそりとツキコに向けて進撃を始めようとしたゴルカッソスの図太い足に向けて、ヒナタが注意を引き付ける為にパンチを叩き込んだ。


『ドスンッッ!』


 しかし、ゴルカッソスはあまりヒナタのパンチを気にしていないように見える。


「このっっ!」


 重ねて数発叩き込むが、どうも足では効果が薄いらしい。

 そんなヒナタに向けてクウが呼び掛けた。


「ヒナタ、足を踏み台にして背中に登ろう! 足よりは攻撃が効きそうだわ!」


「うんっ、分かった!」


 足への攻撃に見切りをつけて前衛二人は、巨大な足を踏み台にしてゴルカッソスの体を駆け上がっていく。凸凹に硬質化している胴体部分をよじ登ると、二人は背中の上へと到着した。


「ヒナタは攻撃しやすそうな所を殴ってみて! 私も斬撃が通る所を探してみる!」


「おーけークウちゃん! とりゃあぁっっ!」


 ヒナタは近くにあった硬い背びれを殴っている。足よりは効いているのか、次第に三つ首がツキコの方ではなく、背中で暴れるヒナタの方へと注意を向け始めた。今の所、何とか作戦通りに進行しているらしい。


「いいぞヒナタ! ツキコは次の攻撃を!」


「うんっ!」


 俺の指示を受けて、ツキコがゴルカッソスの腹部に新たな矢を打ち込む。このツキコの攻撃は十分に効いているらしく、緩慢であった三つ首の動きが徐々に活性化してきた。


「三つ首が活性化してきたそ、反撃に注意しろ!」


 俺の警告を聞いて、ヒナタは上方へと視線を向ける。丁度そのタイミングで、三つ首のうちの一つが、背びれを殴るヒナタに向けて噛み付こうとしてきた。


「うひゃっ!」


 背びれを跳び箱のように飛び越えて、ヒナタはそれを回避する。


「大丈夫ヒナタっ?」


「うんっ、大丈夫! クウちゃん、攻撃の方はどう?」


「駄目みたい。背びれは硬くて斬撃が通り難いわ」


「打撃は逆に効いているみたいだよ。――あっ! もう一回来るっ!」


 再び噛み付き攻撃がヒナタを襲う。


「わわわっ! これじゃ私も攻撃出来ないよっ!」


 ヒナタが必死に回避行動をしていると、横からクウが飛び出した。ヒナタを攻撃する首目掛けて切りつけるつもりらしい。


「はあっっ!」


 クウが切りつけると、首は痛がるような素振りを見せた。


『グルルルッッッ!』


 地響きのような低い唸り声を出しながら、ゴルカッソスは首を振る。


「よしっ! 首なら斬撃が通るみたい!」


 背中の上で暴れる二人に集中していて、ゴルカッソスはツキコの攻撃を無防備にも食らい続けている。


 ヒナタが敵の意識を引き付け、クウがヒナタへの攻撃を妨害し、ツキコは柔らかい腹部へ継続的にダメージを与え続ける。作戦通り全員が最大限の役割を果たしているように見えた。


 そうして俺達が戦う最中も、背後の観客席からは発砲音や爆発音が聞こえている。サスライは本当に、熟練の魔法少女三人を相手に一人で戦っているのだ。俺達が今、失敗する訳にはいかない。


 俺は振り返らずに、目の前の戦況に集中する。

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