覚悟 02

「自己紹介するわ。私の名前は流離夜宵。訳あって、一年くらい前から魔法少女をやっているわ。こちらはカラスの姿をしているけど、私の兄よ」


 紹介を受けて、お兄さんは頭を下げるような動作をした。


「私は小金井月子だよ。よろしくー」


 ツキコは懐っこく近寄り、両手でサスライの右手を取って握手をする。するとサスライはツキコの顔を凝視しながらこう言った。


「貴方……大分前に見た気がするわ」


 サスライのその言葉に、ツキコは嬉しそうに目を見開き口角をつり上げた。


「やったーっ! 覚えててくれたんだねっ! 私ってば昔、街の中でヤヨイちゃんに助けてもらったんだよー」


「……やっぱり。あの時私やウズルズが見えていたのは、魔法少女だったからなの?」


「違うよー。だって魔法少女になったのは最近だもん」


「最近? ……ふぅん……」


 新種の生物でも発見した時のような目でツキコを観察しているサスライに、横からヒナタとクウが挨拶した。


「私は明石アカシ日向ヒナタですっ。どうぞ宜しくお願いします!」


「私は水城ミズキクウよ。この前は助けてくれてありがとう。宜しくね」


 二人が自己紹介をすると。


「ええ、宜しく」


 と短くサスライは返事をした。こうして挨拶を済ませた俺達は、直ぐにゴルカッソス攻略について打ち合わせを始める。




 十分程度の打ち合わせが終わって、俺達はゴルカッソスが出現する予定の時刻を間近に迎えた。皆が緊張感を持って、互いの位置取りや連携について最終チェックをしている。


 そんな時だった。


 ツキコがふと真顔になり、観客席側をキョロキョロと見渡し始めたのだ。俺はその様子を不思議に思って、ツキコに声をかける。


「どうしたツキコ?」


 そう俺が尋ねるとツキコは。


「……誰か居る……」


 と小さく呟いた。

 そのツキコの言葉を聞いて、サスライが何かを察したように声を上げた。


「まさか――――あの連中、こんな所にまでっ」


 サスライはツキコと共に、探るように観客席に視線を巡らせている。

 暫くすると、ツキコが指を差して言った。


「あっ、あそこに居るよー」


 ツキコが指したその先には……。


「くっ……やっぱり……」


 三つの人影が見えた。


 背が高い女の子が一人と、背が低い女の子が二人である。随分可愛げのあるミリタリー系の服装をしているように見えるが、それぞれが何やら、独特な雰囲気をかもし出していた。


 そう、まるで『魔法少女』のように。

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