魔法少女をプロデュース? 04

 所変わって、ここはツキコの部屋の中。俺はキョロキョロと周囲を見渡したり、女の子の部屋特有の花のような香りを堪能したりしながらも、屋敷や部屋の大きさに改めて感嘆を零す。


「それにしても……相変わらずでかい家に、でかい部屋だな」


「そう? 私ってばあんまり大きい部屋だと寂しくなっちゃうから、一番小さいのにしてもらってるんだよ」


「それでも俺の部屋の倍はあるぜ……」


 ベッドの上にあったペンギンのぬいぐるみを機嫌よさげに抱えながら、クウは不思議そうにツキコに尋ねた。


「でもさ、ツキコってなんでいつもお金無いの? お菓子とか本を買う時に、なんだか凄い悩んでるよね?」


「えーっ。それはねぇ、若い頃からお金を持っているといい大人になれないって、お父さんがお小遣いを少なくしてるからなんだよ」


「「いいお父さんだ……」」


 小金井家の教育方針に、俺とクウが声を揃えて感心した。


「ねぇねぇ、今から何する? ゲームでもするー?」


「今日はもう遅いだろ。早めに寝るぞ」


「えーっ。それじゃあ、お風呂はー?」


「ふむ、風呂か。大分外歩いたからな、出来れば入りたいが……風呂場、借りてもいいのか?」


「勿論だよ。私ももう一度入ろうかなー」


「だから、さっき入ってたのは夢だって……」


 俺が呆れ顔でそう返していると、ツキコは何かを企むように微笑を浮かべた。


「それじゃーあー……今度はぁ……」ニター


「ん……今度は?」


「みんなで一緒に入っちゃおうかー?」ドーン


「――おおっ」キタカッ


 ツキコの夢と勇気と希望が溢れる提案も――――。


「駄目よ」


 クウさんの即答によって否決された。


「……ぐっ……」


 俺が一人で絶望に打ちひしがれていると、ツキコは新たに提案した。


「えーっ、もうしょうがないなぁ。それじゃあねぇ、私今日はクウちゃんと一緒に入ろっとー」


「――えっ」Σ


 ツキコの提案に、クウが言葉を詰まらせる。


「まぁ、まとめて入ってくれた方が、俺は順番を待たなくていいから助かるがな」


「そ、そりゃそうだけど……」


 クウは何やら少し恥ずかしそうな態度を取りながら、ツキコの体に視線を移した。恐らくクウは同年代でありながらも、体形的二極化が進み行く現実を受け入れたくないのだろう。なんてこった、格差拡大とはこんな所にまで蔓延っているらしい。


「大人しく現実を受け入れてこい」


「……くっ……」


 俺が送ったエールに軽く歯軋りをすると、クウは観念したように、ツキコと一緒に風呂場へと向かった。


 二人が風呂から上がると俺も直ぐに交代で入ったのだが、すれ違う二人の様子はさっぱりした雰囲気のツキコに比べて、クウの方は随分とどんよりした空気を纏っていた。頑張れ、お前みたいなのにも需要はある……。


 そうしておしゃべりもそこそこに、俺達は布団を用意して消灯する。


「おやすみなさーい」


「お休みなさい」


 二人のおやすみなさいに、ほんの一瞬の間を置いて俺は返事をする。


「ああ、お休み……」


 今日一日色んな事があったので疲れていたのだろう、二人はそれほど時間をかけずに眠りに就いたようだった。皆がスヤスヤと寝息を立てている。



 そんな部屋の中で俺は一人、宇宙船の中で鳩野郎と交わした会話の事を思い出していた――――。

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