誤算 04

『パチッッッッ!』


 明らか今までとは違う音を出してツキコは矢を放つ。発射されたその矢は見事に敵を補足し、敵に直撃すると――。



『パッチィィィンッッッ!』



 雷が落ちたような音を立てて炸裂した。


「――見事な雷属性だ」


 鳩野郎がそれを見て呟く。



『グオォォォンッッッッ!』



 牛かアザラシのような野太い声を出すと、半漁人はその場にうずくまった。

 弱点属性が当たると、ここまで効果的にダメージを与えられるのか……。


「かなり効いているぞっ!」


 ツキコが更に次の矢に魔力を込めようとしていると、半漁人はツキコの方へ振り向いて立ち上がり、激しく睨みつけたと思えば猛然と走り出した。大きなダメージを受けた事から、半漁人の憎しみがツキコに集中しているらしい。


「行かせるかっ!」


 ヒナタはそう言って半漁人を止めようとするが。


「――くっ」


 右足の痛みが酷く、とても追いつく事が出来ない。


「まずいっ! ツキコ、レイピアを使え!」


 ツキコは魔力を込めようとしていた弓を手放し、レイピアを抜刀して構えた。半漁人の爪を懸命に回避しながらレイピアで反撃するが、攻撃はあまり効いていないようだ。


 ヒナタもツキコの方へ向かって走っているのだが、足を引きずっていてなかなか距離が縮まらない。近接戦闘が苦手なツキコが、長い間半漁人の攻撃に抗えるはずもなく、とうとう――。



『バシンッッッ!』



 裏拳を受けて吹き飛んでしまった。なぎ払われるような形で後方の松の木に、ツキコの背中が叩きつけられる。


「かはっっ!」


 その口から苦しそうな声が漏れた。防御力の低いツキコは敵の攻撃に耐え切れず、たった一撃で気を失ってしまった。


「ツキコちゃんっ!」


 ツキコの身を案じてヒナタがそう叫んだ直後――空気が噴出すような音と共に、透明な何かがツキコの周辺を覆った。


「あれは、防護フィールドかっ?」


「そうだ。どうやらツキコは戦闘不能になったらしい」


 半漁人は気を失っているツキコに向けて足を上げ、とどめを刺すために踏み潰そうとした。しかし、体重を乗せたその足は防護フィールドに弾かれてしまう。姿勢をグラつかせた半漁人は、ツキコの様子をしばらく眺めると、これ以上攻撃しても無駄だと理解したのか、後方から向かってくるヒナタの方へと向きを変えた。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る