誤算 03
ヒナタが交戦を開始して間もなくの事。
「――ねぇツキコっ! 聞こえるっ?」
クウからツキコに向けたテレパシーが届いた。
「うんっ、聞こえるよっ!」
「小さいのを一匹逃がしちゃったみたい。だけど、逃げた奴には私のナイフが刺さっているはずよ。今からナイフを光らせてみるから、そこを目掛けて撃って頂戴っ」
「うんっ、分かったっ!」
返事をしたツキコはスッと真顔になり、しっかりと構えて弓を引く。暫くすると。
「――光らせたわっ! 見えるっ?」
というクウの声が聞こえた。ツキコは返事もせずに、大きく目を見開いて――――水中の薄青い光を捕捉する。
『シュンッッ!』
空気を鋭角に切り裂きながら撃ち放たれた矢は、殆ど水しぶきを上げることなく水中へと消えていく。集中しているツキコの視点をモニターで確認すると、水中で小さい半漁人に矢がヒットしている様子が確認できた。
少し間を置いてから、ツキコがテレパシーで伝達する。
「当たったよクウちゃんっ。ちゃんと倒したよー」
「了解。流石ツキコね」
「えへへー」
ツキコが嬉しそうに照れ笑いをした直後――突如、ヒナタの悲鳴が聞こえた。
「きゃあぁぁっっ!」
それを聞いて、俺は素早くヒナタの視覚映像を確認する。するとどういう訳か、ヒナタの視覚映像の左側が暗くなっているではないか。明るい右側の映像には、むき出しになっているヒナタの右足が映し出されていた。画面をピンチアウトして拡大すると、右足首は血で赤く染まっており、傷口からは薄っすらと煙のようなものが噴き出している。
「ヒナタっ! 怪我したのかっ?」
「――くっ! 隊長! こいつ強いです!」
「左目はどうした? 映像の左側が映ってないぞっ」
「大丈夫ですっ。まぶたの上を少し切って血が目に入ってきただけですっ」
自らの采配によってヒナタに大きな負担をかけている事に、そしてそれによってヒナタが血を流している事に、俺は激しく動揺してしまう。
「鳩野郎、聞こえるか! 傷口から煙が出ているのはどういう事だっ?」
俺の問いかけに直ぐ様鳩野郎が答えた。
「変身中の魔法少女は、半分地球人、半分上位次元の存在となっている。ダメージを受けた場合、霊体の構成要素が噴き出し、固体を保つために破損箇所の修復が行われるのさ」
「つまり、アレは霊体の血液みたいなものなのか?」
「回復の為に噴出しているが、放出され過ぎると死に至るという意味では同じだな」
鳩野郎は淡々とそう説明する。
「くっ――――ツキコ! ヒナタの援護を頼むっ!」
俺が要請するよりも先に、ツキコは半漁人に向けて光の矢を構え放っていた。
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