楽観的使命感 03
ここは秘密基地の中。
一番最初に基地の中に入ったのはクウだったのだが、何故かクウは突如足を止め、怪訝そうな表情をしながら声を出した。
「ちょっと……これって……」
そう呟くクウの視線の先には――。
「……おいヒナタ、もう一度釘と金槌を出せっ」
「え? また出すんですか? ……はい、どうぞ」
なんと、またしても机の上に先日見たものと同じ『シルクハット』が置いてあるではないか。ヒナタから工具を受け取った俺は、それを手に持って素早くシルクハットに歩み寄る。そして――。
『ガンガンガンッ!』
大きな音を立てて、シルクハットのつばを一気に机に打ちつけた。
「ちょっとちょっと、何やってるの?」
唐突な行動に驚くクウを他所に、俺は机に張り付けられたシルクハットに向けてこう言い放つ。
「おいっ、鳩野郎! どうせ中に居るんだろっ? こっちは死ぬほど真面目に悩んでいるってのに、毎度ふざけた演出しやがって!」
しかし、シルクハットは沈黙している。
「中に居るのは分かっているんだ! もうこういう登場演出はしないと約束しろ! そしたらそこから出してやる!」
しかし、やはりシルクハットは沈黙している。俺は何だか自分が空回りしているような気がして、少々不安になってきた。
「お、おいっ……中に居るんだろ……?」
そう呟きながら、俺が手を伸ばすと――――。
『ポンッ!』
軽く弾けるような音と共にシルクハットの上部をパカリと開き、万国旗を加えた数匹の鳩が、煙と共にバサバサと飛び出して来た。
「ぐおっ!」
驚く俺は声を出すが、後ろで見ていた三人は感心しながら手を叩いている。
「「「おおーっ」」」パチパチパチ
まさかの二段構えとは……。唖然とする俺に、テレパシーで聞き覚えのある声が話しかけてきた。
「……まったく、机に張り付けにするなんて。帽子の上部を開閉式にしていなかったらどうするつもりだったんだ?」
いつの間にか俺の直ぐ横で、鳩野郎が首を傾げながらこちらを見ている。
「くっ……机に穴まで開けたというのに……」
「相手を閉じ込めて言う事を聞かせようなんて、人として最低じゃないのか?」
「お前、よく俺達にそんな事言えるな?」
普通なら愛嬌のある首を傾げる動作さえ、今の俺には憎たらしく感じられた。
「まぁ、落ち着くんだタイト。何にしても、今から私を呼ぶつもりだったんだろ?」
「……まぁな……」
「何を聞きたいのかは分かっている。早速会議を始めようじゃないか」
舌打ちをしつつ、俺は自分の席についた。
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