初めての宇宙生物退治 03
敵との距離を取ったクウに向けて、俺はテレパシーを送る。
「クウっ。聞こえるか?」
「うん。隊長、私どうすればいい?」
「まずは斬撃が通る場所を探すんだ。距離を保って投げナイフを使えっ」
「了解!」
次にヒナタだ。
「ヒナタっ。お前は出来るだけ敵の注意を集めろ。継続的にダメージを与えて行けば、敵もお前を無視できないはずだ」
「了解ですっ」
そしてツキコに指示を出す。
「ツキコ。クウの準備が出来たら、敵の動きを一瞬止めてくれ」
「動きを止めればいいのねー。了解ー」
冷静になった三人は俺の指示通り、それぞれの行動を開始している。そんな三人の様子を遠目に眺めながら、俺は鳩野郎に質問した。
「……おい鳩野郎、念の為にだが質問がある」
「なんだい?」
「もし、あいつ等が敵から致命的な攻撃を貰ったらどうなるんだ?」
クウが敵から攻撃を受けたり、前衛二人が混乱している様子を見て、俺は急に不安になってしまったのだった。
「前衛の二人が、ウズルズ程度の攻撃で致命傷を受けることは多分ないよ。特にヒナタはかなり頑丈なタイプのようだ」
「しかし、万が一という事もあるだろう?」
「ふむ、ならば一応説明しておこう。魔法少女達が戦闘不能になった時点で、少女の周囲に防護フィールドが展開されるんだ。ただし、その防護フィールドは三十分位の間は解除されない。内側から出ることも、外側から破壊する事も出来なくなる」
「その間は、治療さえも出来ないのか?」
「防護フィールドが、最適な治療や生命維持を施してくれる」
どうやら即死さえしなければ、至れり尽くせりで保護してくれるらしい。
「なるほどな。つまり即死級の攻撃を受けない限り、三人が死ぬ事は無いんだな?」
「ああ。今はそう思っていい」
鳩野郎が説明を終える頃、ナイフを投げ続けていたクウが漸く手応えを感じたようだった。
「――通ったっ! 間接の内側、そして頭部っ! 隊長! 敵の弱点を見つけたわ!」
クウの報告を聞いた俺は、直ぐ様ツキコに指示を出す。
「よし、ツキコ! 敵の動きを止めてくれっ!」
俺の合図を聞いて、ツキコは素早く弓を引き絞った。空気を割くような音と共に、黄金色に輝く光の矢が一直線に解き放たれる。飛び行く光の矢が敵に直撃する直前、ツキコはテレパシーで前衛二人にこう伝えた。
「クウちゃんヒナタちゃん! 目を瞑って!」
打ち合わせも無い唐突なツキコの言葉にも、クウとヒナタは迅速に従い、咄嗟に目を瞑り顔を伏せた。するとその直後――――。
『パッシュゥンッッッ!』
細い炸裂音を放ち、矢はウズルズの目の前で眩い光を放って飛散した。まるで強力な
『ギィィィッ!』
「今だよっ!」
ツキコの声を合図に走り出したクウは、頭部をガードするウズルズの前足を関節の内側から切り落として掻い潜り、頭部に向けて一気に間合いを詰め行った。
堪らずウズルズは反対側の前足でガードを固めようとするが――。
「させるかぁっ!」
ヒナタがその前足を押さえ込んだ。
そうしてノーガードになった蜘蛛の頭部に向けてクウは――。
「はあああぁぁっっ!」
雄叫びを上げ、空中で捻りと回転を加えながら深く切り込んで行った。
クウの姿がウズルズの頭の辺りへ、吸い込まれるように消えていく。
その後訪れた一瞬の静寂の後――。
『フシュウゥゥゥゥゥゥ……』
突如として、ウズルズの全身が激しく白い煙を噴き出し始めた。その煙は水蒸気のように空中に向けて拡散していく。その様子を見た鳩野郎が、テレパシーで全員にこう伝えてきた。
「おめでとう。君達の勝利だ」
その鳩野郎の言葉に安心して、俺は。
「はぁっ」
と大きく息を吐く。
ツキコが振り返り、緊張から解放された俺の様子を優しげな笑顔で見つめていた。
暫く経つと煙の殆どは消えてしまい、ウズルズの姿もすっかりと消滅していた。風が微かに残った煙を吹き飛ばす中、こちらに向けて手を振るクウとヒナタの姿が目に入る。
俺とツキコは、二人に向けて高台から手を振り返した。
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