魔法少女に大変身! 07
秘密基地の中へと移動した俺達は、基地の中に先程までは無かった、『ある物体』が置いてある事に気が付いた。
「あれれ? さっきこんなのあったっけー?」
ツキコが不思議そうに、長机の上に置かれている物体を見つめている。
「隊長、これってシルクハットですよね?」
「うむ。俺のじゃないぞ」
ヒナタも不思議そうに首を傾げている。こんな僅かな隙に、誰かが基地内に入ったとでもいうのだろうか? とりあえず俺は、シルクハットを手に取ってみた。
「ふむ……。普通のシルクハットみたいだな」
そして俺はシルクハットをひっくり返し、そーっとその中を覗き込んでみる。
すると――――。
『ボンッ!』
という音と共に煙が上がり。
『バサバサバサッ』
という羽ばたく音を出して、シルクハットの中から数匹の鳩が飛び出してきた。
「うおっ!」
俺は思わず声を上げるが、それを見ていた三人は小さく拍手して喜んでいる。
「わあーっ、隊長すごーい!」
「隊長マジック出来たんですね!」
「おお、凄い凄い」
三人は俺を褒めてくれているが、こんなネタを仕込んだ憶えは無い。
「な……なんだってんだ……?」
俺が呆気に取られていると、いつも俺が座る席の辺りでヒョコヒョコと動く鳩の姿があった。
「それでは作戦会議を始めよう」
鳩野郎こちらを向くと、何事も無かったかのようにそう言った。
「……この鳩野郎。普通に登場できねぇのか」
「ふむ。鳩はこうして登場するものではないのか?」
「お前、本当に人類の事知ってるのかよ?」
俺が呆れたようにして鳩野郎に文句を言っていると、クウが驚いたように言った。
「宇宙人って本当に鳩なんだ。テレパシーだけど、日本語喋ってる……」
「君達に合わせて鳩の格好をしているだけさ。本当の我々はもっと別の姿をしている」
「ふぅん」
クウは不思議そうに鳩の様子を観察している。
「さて、時間も限られている。早速だがタイト、端末画面を皆に見せてくれ」
「ああ、分かった」
「三人ともタイトの近くへ。ただし一定時間防護フィールドの内側に居ると、管理対象の魔法少女であっても強制的に弾かれてしまうから、適度に距離を保つように注意してくれ」
「弾かれるとどうなるのー?」
「数十メートル程遠くに吹き飛ばされるだけだ。変身した君達なら、例え建物の壁を突き破ってもダメージは殆ど無いだろう」
「へー」
ツキコは平然と返事をしているが、秘密基地が壊れるのは大問題だ。
「では説明しよう。画面に表示されているのは、君達が今から戦う宇宙生物のデータだ。敵の名前は『ウズルズ』。地球生物でいう所の、蜘蛛に似た容姿と特性を持っている」
「蜘蛛は……苦手だわ……」
宇宙生物と思われる画像を見て、クウが気持ち悪そうに言った。
「サイズは胴体が五メートル強。足を含めると幅は十四メートルくらいになる。弱点は火だが、君達はまだ魔法を使いこなせないと思うから、今回は武器を使って倒してくれ」
「俺は何をすればいいんだ?」
「基本的な事は私が教えるから、タイトはそれを参考にして三人に指示を出すんだ」
指示か。
戦いについてよく分かってない俺なんかに、ちゃんと務まるのだろうか。
「そうか……分かった。それじゃあ、敵の出現位置は?」
「画面に表示されている通り、ここから三キロ程離れた雑木林の中だ。地図上の表示から見て、恐らく既に君達が接触出来る状態にある」
「敵の特性とか、行動パターンとかは分かるか?」
「
俺は鳩野郎の言う通りに、
「ふむふむ。危険度は☆1で、森林や建物の間など複雑な地形を好む。自分の周囲に直径三メートル程度のネットを複数張り、獲物がかかったらこれに接近して捕食する。知性は低く、行動の多くは本能に根ざしている……なるほどなぁ」
「他に何か質問はあるかい?」
「はいっ。現地までの移動はどうするんですか?」
ヒナタが手を上げて質問した。
「なぁに、三キロなんて君達からすれば目と鼻の先だよ。ただし、タイトは生身の人間だ。君達がタイトを輸送した方がいいだろう」
「輸送?」
「そうだ。この中ではヒナタが一番体力に優れているから、ヒナタに背負ってもらえばいい」
「まじか……」
今まで何度も寝てしまったヒナタを負ぶって送り届けた事があるが、まさか俺が負ぶわれる日が来ようとは……。
「えへへ。今日は私が隊長をおんぶする番ですねっ!」
「丁重に運んでくれよ」
「はいっ!」
ヒナタはなんだか嬉しそうに返事をした。
「細かい事は移動中、タイトに伝えるよ。君達の能力なら、今回の戦いは丁度いいチュートリアルになるはずさ」
鳩野郎の言葉に、みんなが顔を合わせて頷く。
「おーけー。それじゃあみんな、敵を確認できる所まで移動するぞ」
「「「はーい」」」
俺の呼びかけに、三人が声を揃えて返事をした。
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