魔法少女に大変身! 03

 ここはツキコの家から二十分程歩いた山の中。もう直ぐ謎の発行物体を見た場所、鳩野郎こと宇宙人に誘拐された場所に差し掛かる。


「確か昨日は、この辺で誘拐されたんだっけな……」


「隊長、誘拐されたってあの光の事ですよね?」


「ああ。あの光がUFOだったのか、宇宙人そのものだったのかはよく分からんけどな……。ところでヒナタはどこまで話を聞いたんだ?」


「えっと、宇宙人に誘拐されて、魔法少女になったとクウちゃんから聞きました」


 こいつらが魔法少女になる事を、最終的に判断し、宇宙人と契約したのは俺だ。だから俺は、こいつらに対して負い目のようなものを感じている。俺はヒナタの表情をそっと伺いながら尋ねた。


「その……結構驚いただろ?」


 しかし、意外にも俺の問いに対してヒナタは。


「いいえっ! やはり我々と隊長は、一緒に戦う運命にあったのだと確信しました!」


 キリッとした表情で目を輝かせながら、意気軒昂にそう言った。


「ふむ……そうか」


 どうやら、この中で一番ショックを受けているのは俺らしい。少しホッとしたような、少し情け無いような思いを抱いていると、横からクウが話しかけてくる。


「確かその辺だったわよね? この前光ってたの」


「うむ、そのはずだが……何らミステリーサークル的なものも見当たらないな」


 周囲を注意深く見渡しながら誘拐された地点を通り過ぎると、前方を歩くヒナタが大声を出した。


「――あっ! 我、前方に基地を発見せり!」


 徐々に昔を思い出しているのか、ヒナタが久しぶりに軍人口調になっている。昔からヒナタは男子が好みそうなごっこ遊びが大好きだったのだ。


「本当だー。隊長ーっ、小屋まだあったよーっ! 草が一杯生えてるけどー」


 前方からそう伝えてくるツキコの言葉に、俺は返事をする。


「ああ。俺達の秘密基地だな」


 俺がそう言うと、ツキコとヒナタが顔を見合わせた後で、一斉に。



「「いやっほーいっ!」」



 と叫びながら駆け出した。


「結構時間経ったのに、意外と綺麗にしてるみたい。……本当に、また四人でこの場所に戻ってこれたのね」


 懐旧の念を滲ませるように目を細めて、クウがそう呟く。


「……ああ、そうだな」


 クウの横顔を斜め上から見下ろしながら、俺も相槌を打つ。愛おしそうに、大事そうに二人の後姿を見送っているクウを見ていると、俺も小学生の頃の感覚を少しずつ思い出してきた。そして俺は、ニヤリと口角を歪める。


「なーにしんみりしてるんだよっ。夏休みだぞ? 今が青春ど真ん中だぜっ!」


 そう言った後で俺は、ポンッとクウの頭上に手を置き、悪戯するように髪の毛をくしゃくしゃに撫でてから勢いよく走り出した。


「クウっ、早く行くぞっ!」


 一瞬だけ驚いたように肩をすくめ、キョトンとした表情を見せたクウだったが、直ぐに幼い頃のような、いや、年齢相応な純粋な笑顔を見せて、俺の後に続いて走り出した。


「もうっ、隊長待ってよっ!」

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