魔法少女に大変身! 02

 食事を終えた俺達は、ツキコの部屋で今日一日の計画を立てる。本日やるべき事は二つ。まず一つ目は、こいつ等に実際に魔法少女に変身してもらう事。そして二つ目は、俺達が倒すべき敵、つまりこの街を滅ぼしかねない宇宙生物について調べる事である。


「という訳で、これから人目につかない所へ移動するぞ」


「ここで変身しちゃ駄目なのー?」


 ツキコがベットに座ったまま、両足を小刻みにひょこひょこと開いたり閉じたりしながら質問している。健やかに成長したツキコの太ももは、白いニーハイソックスに包まれる事によって実に引き締まった脚線美を生み出していた。


「ああ。宇宙人の話じゃ、この端末の周辺には防護フィールドが張られるらしいからな。その防護フィールドで万が一にでもお前達が弾かれたりしたら、お前達も危ないし、この家にどんな被害が出るかも分からんだろ?」


「それじゃ、どこに行くのー?」


「うむ。そりゃ、やっぱり『秘密基地』じゃないか? 昨日は結局、基地に辿り着く前に誘拐されちまったからな」


「秘密基地ーっ! 確かに、あの辺なら滅多に人が来ないはずだね。昨日は行けなかったから、今日こそ行きたいねー」


「おう。あの山小屋が、まだ残っているといいんだけどな」



「「秘密基地っ! 秘密基地っ! 私達のっ、秘密基地っ!」」♪



 ベットに並んで座っているツキコとヒナタが、手と声を合わせて無邪気に盛り上がっている。


「それじゃあツキコ、悪いが掃除道具を貸してくれ。もしあそこが使えそうなら掃除しておきたい。これからまた集まる機会が増えるかもしれないからな」


「うん分かったー。ヒナタちゃん準備手伝ってー」


「はーいっ」


 楽しそうに部屋を出て行く二人の様子を、クウがやれやれといった表情で見送っている。


「なんだ……お前は嬉しくないのか? 秘密基地に行くの」


「そうね。嬉しいといえば嬉しいわ」


「なんだよ。随分と淡白な回答だな?」


 俺の質問にクウは少しの間、虚空を見つめてから答えた。


「……正直、少し戸惑っているのよ」


「戸惑う?」


「だって、小学生の頃、平日も休日も毎日のように秘密基地に通ってたけど、中学に入ってからは方向が違うせいか、みんな秘密基地に行こうなんて言わなくなっちゃったでしょ? 四人で集まる機会も少しずつ減っちゃって……。きっともう、これからずっと戻れない場所なんだって、このまま私達は大人になっちゃうんだって、そう思ってたから……」


 そんな事を心配していたのか。

 クウは相変わらず神経質というか、心配性らしい。


「ふぅん。だから花火大会の後、俺が秘密基地に行こうって言ったら、あの二人以上に驚いていた訳か」


「……うん。だって『姫結衣町探検隊』が、またあそこに集まる日が来るなんて思わなかったもん」


 懐かしい単語に、俺は口元を緩める。


「ははっ。そういやあったなそんなの。ここはもう姫結衣市になっちまったけどな」


「うふっ……。隊長命令は絶対だっけ?」


「おう。絶対だからなっ」


 尊大げな態度で俺がそういうと、クウは少し嬉しそうに笑った。


「うふふ。ほんとにもう、こんなんじゃ何時まで経っても大人になれないわ。その上、宇宙人に誘拐されてただなんて……。もしクラスの友達に言ったら大笑いされちゃうわよ」


「しかもお前、魔法少女になったんだぜ?」


「……もうっ、超痛い子だわ……」


「案外、お前が一番似合ってたりしてな。魔法少女の格好」


「うるさいっ」


 クウが少し照れくさそうに、しかしちょっぴり嬉しそうに怒った時、ヒナタが部屋に戻ってきて俺を呼んだ。


「隊長ー。ツキコちゃんが呼んでるよー」


「おう、今行くぜっ」


 こうして準備を終えた俺達は、魔法少女に変身するために思い出の秘密基地へ向けて出発したのだった。

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