第19話 文化祭
「…おい、おい。早乙女起きろ、朝だ」
「…」
「おい早乙女! 起きろっつってんだろ!!」
「…うるせえ…」
「は!? おま、いつものオネエ口調どうした!? おい!?」
「…」
いやあ、ご迷惑をお掛けしたわ。
私、寝起き悪いのよね。忘れてたわ。
「まじ怖かった…」
「うふ、いつもは目覚まし十個くらいセットするんだけど、忘れちゃったわ」
「それはそれで迷惑だったけどな…」
食堂で、二階堂が組んだ手に額を乗せ、項垂れる。ごめんなさいって言ってるじゃない。
「おはよう。早乙女くん、二階堂」
「…はよ…う…」
「東条寝てんな?」
今にも閉じそうな目。寝ぼけてても美人ね、羨ましいわ。
「二人とも、放課後は私たちの教室に来てくれ」
「ああ。ま、いつも通りだけどな」
「ごめんね、ありがとう」
「気にすることじゃない。私たちが好きで手を貸しているんだ」
丁寧に掌を合わせたひなちゃんは、朝食のトーストを齧る。
隣で東条さんが、半分寝ながらスープを啜った。
「…楽しいわぁ…」
私も、寮生活したいわ。
だって、このメンバーなら絶対に毎日楽しいもの。
「おい早乙女、早く食え。お前布団片付けなきゃなんだから」
「あ、そうだったわ! いけないいけない」
☆ ☆ ☆
「さて、出陣しようか」
放課後。ひなちゃんの教室に集まった私たちはまとまって校門を出る。
利根小までは、バスで十分。
「…さすが、私立よね…利根中も系列だけれど」
「小学校で文化祭なんてないもんな。行くぞ」
二階堂情報によると、謙也のクラスはお化け屋敷をやっているらしい。
そこに行けば、謙也に会える。
「…ほ、本格的ね…?」
「なんだ早乙女、怖いのか」
「怖くないわけないでしょう!? お化けよ!?」
「怖くないだろ」
「東条さんは物理で倒せるからね!?」
入り口で騒いでいると、入り口の受付から男の子が顔を覗かせた。
「お客さんですかー?」
「あ、あの」
「そうです」
「ひなちゃん!?」
ひなちゃんは片目をすがめて私を見上げた。
「中にいるかもしれないだろう」
「いや聞けばいいわよね!?」
「…お化け屋敷って行ったことなくてな」
「行きたかったのね!?」
さあさあと急かされ、教室の中に入れられる。黒いカーテンで、完全に陽の光が遮られている。流れる音楽もおどろおどろしい。
「…で、さっきから黙ってる二階堂」
「…な、なんだよ怖くねぇぞ!?」
「何も言ってないじゃない」
東条さんがため息をつく。そうよね怖いわよね。
「違う、俺はお化けが怖いんじゃない! 知らない暗い所が嫌なんだ…!」
「よくわからんな。進むぞ」
ひなちゃんが冷たくあしらい、先に進む。
「あああああ…ひ、ひなちゃん速いわ」
「ふむ、面白いな。制限された視界、行き先のわからない一本道、さて…行き着くのは本当に現世か…?」
「いやあああやめて!!」
怖いナレーションいらないわよ!!
私とひなちゃんの後ろをついて来る、東条さんと二階堂。
「と、東条そこにいるよな!?」
「いるわよ。いい加減目慣らしなさいよ」
「夜目が効かねえんだよ!」
本当に暗い所嫌いなのね…そして東条さんが二階堂のお世話してる。いいわね、その調子よ。
「…兄ちゃん…?」
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