第17話 輪の中に

「はっ、はっ、はっ…」


東条足速っ!? こんだけ走ってるのに一向に縮まらねえ!


「おい…っ、おい止まれ東条!!」


ダメ元で叫ぶと、速度が緩まった。そして、立ち止まる。


「…ひながいれば、いいの」

「ああ」

「…だって、本当にそう思った。あんな辛い思い、したくない」

「ああ」

「…でも、ひなが早乙女とあんたと毎日楽しそうに話してるの見て、いいなって」


…楽しそう? 誰と誰と誰がだ?

東条の声は震えていなかった。ただ、確認するように、呟いている。


「…怖いんだ」


また、友達が離れていくのが。

みんなに無視されるのが。


「…大丈夫だ。俺…と、早乙女なら」


俺たちはそんなガキじゃねえし、入りたいなら入ってくればいい。

どうせあいつだって拒まない。深谷なんか絶対拒まねえし、俺だって。


「…なあ東条。お前から見て、俺たちは仲よさそうに見えたのか?」

「うん。…とっても」

「それってさあ、お前もその輪の中にいたからだろ」


違うクラスで、最近まで一つも接点がなかった俺たち。会うのは放課後くらい。

朝だって、早乙女は寮生じゃないし。

昼だって、俺は他の面子と食べてる。

東条と深谷はいつも一緒だったとしても、俺たちが合流するのは放課後だ。

知ってるやつの方が少ないだろ。


「お前も既に輪の中にいるんだよ、東条」



ピロンとタイミング悪く携帯が鳴った。

変な汗かきながら画面を見ると、そこには。


「謙也くんじゃない」

「うっおわあああ!?」

「何よ」

「いや、何でも…」


ビビった、顔近かった…。

ロックを解除し、メッセージを開く。そして、東条と顔を見合わせた。


「「これだ!」」

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