第8話 羽川④

 三笠さんとの交流はその後も続いていた。

 メールアドレスを交換し、たまにメールをした。その内容は、どんな本を読んだとか、何の映画が面白いとか、そんな他愛もない話だった。

 だが、三笠さんとメールしている事実だけで天にも昇る心地だった。

 そして、就職活動も、一社だが最終面接まで辿り着いた。小さな薬品会社の営業の仕事だった。今となってはなりふりなど構っていられない。どんな仕事でも構わない。必ずこの面接を成功しなければならない。

 ついに順風が吹き始めたのかもしれない。

 そう思い始めていた。

 僕が『夢世界』に思いを馳せる機会は減っていった。

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