第五話 模試前日

「三村ー」

「んー?」

「おまい、余裕あんなー」

「どして?」

「昨日、四条でティッシュ配ってただろ?」

「ああ。バイト」

「明日模試だぜ?」

「しゃあないだろ。生活かかってんだからよ」

「それにしてもよー。大丈夫かあ?」

「言うなー」


◇ ◇ ◇


「モミー」

「うっさいな」

「なによ、その言い方。名前呼んだだけじゃん」

「うざ」

「あ、そ」


◇ ◇ ◇


音沼おとぬま、おまえ、目の下に隈できてっぞ?」

「うあ……」

「明日の模試、寝るなよ」

「うう……」

「頼むから、日本語で話してくれ。うなり声じゃ分からん」

「あう……」

「だめだこりゃ。すでに退化してるぜ、こいつ」


◇ ◇ ◇


「すずー?」

「ええとー、これがこうなってぇ」

「すずってばー」

「これが、こっちきて、ああなるからあ」

「ちょっと、聞いてんの!?」

「え?」

「いつもぼけ倒してるけど、今日は一段とひどいね」

「あ、あの」

「で、何やってんの?」

「靴紐の結び方……」

「それって、模試に関係あんの?」


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