第二話 ぐだぐだ(樅山由香里)
「由香里っ!」
いきなり部屋に入ってきたママが、机の上に乗せてたあたしの足を力いっぱい叩いた。
ばしっ!
「ってー、なにすっだ」
ノートの上に書かれてるのは、あたしがてきとーに書いた落書きだけ。他には、なーんもない。ママはそれをじろっと睨んで、今度は頭にげんこを落とした。
がいん!
「由香里っ! あんた、大丈夫なのっ!?」
ちぇ。ったりぃよなー。大学なんてどーでもいー。どこ行ったって、何もいいことなんかないでしょ。男はみんなパターン化してるしぃ、付き合うだけ時間のムダ。講義は今の授業よりかったるいんでしょ。なんかあ、キャンパスライフを楽しんでる自分の姿って、想像出来ないんだよなー。ほんとにたりぃ。ニートいいよなー。ずっとぐだぐだしてたいー。
でもさー、そしたらきっとママに言われるよね。さっさと出てけって。そしたら稼がないとさー、おしゃれも出来ないしぃ、かふぇのハシゴも出来ないしぃ。それよか、一緒に行ってくれるトモダチいなくなるかー。めんどくせー。たりー。
あたしのあまりのやる気のなさにあきれたみたいで。ママがぶすっとした顔で、部屋を出てった。もう来なくていいよ。うっとーしいから。
◇ ◇ ◇
ぼやっとカレンダー見てて気が付いた。
「そういや、クリスマスじゃん」
去年は楽しかったなー。男の子にいっぱい呼ばれて、片っ端からデートはしごして、プレゼント巻き上げてさー。でも、それから干されちゃった。あたしは、誰にもプレゼント欲しいなんて言ってないよ。男どもが勝手に貢いだんじゃん。要らないもんも多かったしぃ。
デートだってそうだよ。つまんない。みんなハンコで押したような反応しかしないもん。なんか攻略本でも読んだの、あんたって感じで。それであたしが楽しいんだと思って、勝手に盛り上がってる。
ばっかじゃないの? しらけるわー。あたしは、そう思って、そう言っただけ。あんた、つまんない。ばい。そしたらさー、ぼろっくそに言われるわけよ。やりまのくせに、態度でけえって。はん。態度でかいのはどっちよ。あたしは道具じゃないよ。そんなにやりたきゃ、ふーぞく行けや。
◇ ◇ ◇
受験なんか、どーでもいい。大学に興味なんかない。でも、今そう言ったら親に放り出される。ふざけんなって。だから、あたしは我慢してる。
がまん。大っ嫌いだ。したいようにするのが、あたしだもん。これからも、そやって生きてきたい。でも、今放り出されたらハメツすんのは分かってる。バイトだって三日と保たないのにさー。気に食わねーやつにぺこぺこ頭下げて、働いてお金もらうのって、絶対に無理ぃ。親のすねをかじり続けるんだったら、最低限の親のオーダーはこなさないとなんない。同じ頭を下げるんなら、その方がまだましだしぃ。でも。やっぱり、かったるい。やる気が出ないー。
「んとに、かったりぃ」
あたしは、また机の上に足を放り出した。
「模試かあ。へのへのもへじがいくつ書けっかなー」
ぎゃははははっ!
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