お金の価値は?

可哀想だが、アンバーをローブで作った抱っこヒモの中に入れ、ラピスちゃんと手を繋ぎながら街へ繰り出す。

以外にアンバーは抱っこヒモの中に入れると静かになる、たぶん周りが暗いと騒がない習性でもあるのだろうか?

そして今度こそは大通りしか歩かないぞ?

痛い出来事はコリゴリだからね。


「まずは、貰った金貨がどの位の価値があるのか分からないけど

服を買おうと思うけど、ラピスちゃんは何か欲しいの物がある?」


ラピスちゃんに顔を向ける。

「お兄ちゃんの言うように、服は出来れば何着か欲しいな…

後はその… し… 下着が…」


「あー… うん… 女の子なのに下着の替えが無いって嫌だからね…

店を見つけたら、お金を渡すから買っておいで」


「うん…」

顔が赤いラピスちゃん。


大通りを歩いていると服ぽいマークの付いた看板を見つけたので入ってみます。


「いらっしゃいー」

少し年配の女の人が店員をやっているようだ。

服を見てみると普段用の服が多いが、一部で革製のアーマーぽいものまで陳列されている。


「いろいろあるなー」


「これ可愛いな…」

やはり女の子なのかラピスちゃんは服を見るのが楽しいようで色々見回り触ったりしている。


普段用ぽい服の値段を見てみると3銅貨との値札が付けられている…。

果たして安いのだろうか?

疑問を感じたので思い出してみる、一番簡単そうな依頼のペット探しが銅貨9枚~13枚ぐらいの相場であった…。

あの時私は子供のお使いレベルの依頼だと勘違いして銅貨1枚100円前後の価値だと推測したが違う気がしてきた。


「なんだか大変な気がしてきたぞ?」

ユーディちゃんから貰った報酬が金貨一枚である点を踏まえると銅貨、銀貨、金貨と存在するのだろう、

依頼を見たときは金貨一枚が一万円ぐらいの価値であると推測して受けたのだ。


「ちょっと待てよ…」

だが一番安いと思う銅貨3枚で普通に服が買えるのだ。

元居た世界の価値で考えると… そんな事を考えていたが途中で邪魔が入る。


「お兄ちゃん この服はどう?」

ラピスちゃんが少し実用的であるが可愛らしいオシャレ着を持っている、値段は銅貨9枚。

男物の服に比べると流石に高いな…。


「いいと思うよ?」

ラピスちゃんならどんな服でも似合いそうなので素直に感想を述べた。


「むうっ…」

返事をしたのになぜか少しむくれた顔をするラピスちゃん、そんな顔もかわいいですが。


そういえば試着なんて出来るのだろうか、それが出来ないとサイズがわからないぞ?

店員さんぽい少し年配の女の人に声を掛ける。

「すみません、試しで服を着ることって出来ますか?」


「あるよ、そこの仕切りで着替えれる」

視線の先には簡単な仕切りが施されていた。

店員さんは少し怒っていたような気がするが気のせいだろう。


「ありがとうございます」


ラピスちゃんに一声掛けておく。

「そこの仕切りで服の大きさが合ってるか確かめれるけど

どうする?」


「いいの… ほかの服を探すから、お兄ちゃんが選んで?」

ラピスちゃんが私の服の裾を引っ張りながら言う。


服のセンス、それも女の子の服なんて私のようなおっさんでは難易度が高すぎて無理です。

「でも、自分で選んだほうが後悔が無くて良いと思うよ?」


「…  もう… お兄ちゃんは… じゃあ適当に見繕うね…」

すごく呆れた顔をするラピスちゃん、どういうことなのでしょう?

すると、ラピスちゃんは適当に服を掴み仕切りの奥へと消えていきました。


どんな感じか楽しみです、というか少しだけですが布の擦れる音が聞こえてロリスキーな私には大変よろしゅうございます。

なんだか店員さんがこっちを見てますが気にしてはダメなのでしょうか?


着替え終わったラピスちゃんが仕切りより出てきたので早速見てみます。

黒を基調とした落ち着いた雰囲気を持ったワンピース姿で登場です。


「かわいいよ…」

素直にこんな単純な感想しか出てきません。

私の中の女の子には白のワンピース一択という幻想をぶち壊してくれた瞬間でした。


「うん…」

素直に褒められてうれしいのか顔を赤くして下を向くラピスちゃん。

ラピスちゃんの髪が銀髪なのでわざと同系色でない黒色を選んだのでしょう。

値札を見ると銅貨5枚ですが、この服は買いでしょう。


ふとラピスちゃんの脇の方を向くとラピスちゃんのような大人しい子に着てほしい、通称 ”童貞を殺す服”がちらりと目に入りました。

少し装飾の付いた白いブラウスに黒色のハイウエストの少し短めのスカートの組み合わせで売っていました… この服であれば何時でも着れそうですが…。

価格は銀貨1枚と銅貨3枚なり、それなりに高そうですがとてもラピスちゃんに似合いそうです。


少ししかその服のセットを見ていなかったのですが、ラピスちゃんがその ”童貞を殺す服”を手に取ってくれました。


「この服 可愛いね」

そう言いつつ服と私の顔を行き来するラピスちゃん。


「お兄ちゃん 私この服にするよ」

大事そうに服を抱えるラピスちゃん、気に入ったのだろうか?

それならば、高くても絶対にこの服を買ってあげよう!


「その服の試着はいいの?」


「いいの 大丈夫だからっ」

意外にも試着しない様子のラピスちゃん。


そう言って再度仕切りの中に戻るラピスちゃん。

ふと視線が気になると店員さんがこちらを少し笑顔で向いている…。


なんだろう、高い? 服を選んだからだろうか?


先ほどの黒いワンピースと”童貞を殺す服”セットを持つラピスちゃん。


「ちょっと待っててね」

私はラピスちゃんにアンバーの入った抱っこヒモを渡すと、適当に上着とズボンがセットになっているのを2着ほど手に取り、仕切りの中へ入り、試着してみる。


サイズ的には大丈夫そうだ、これでどこから見ても平凡な一般人に見えるはずだ…。

少し考える、今後冒険のような事を行う可能性があるから頑丈そうな服を選んだ方がいいのだろうか?

チラリとレザーアーマーぽい服を見てみるが銀貨3枚とある…。


そうだ! そのレザーアーマーを付けてステータスを確認してみるとどうだろう?

変化するのだろうか?


元のスーツとローブ姿に戻ると店員さんに聞いてみる。

「すみません、レザーアーマーを試して付けてもいいですか?」


「うん? ただの旅人のようだが付けれるのか?」


あー 確かに着るのは難しそうだ、頼んだら付け方を教えてくれるのだろうか?

一応聞いてみるか。

「アーマーとか付けるの初めてなものでして…

すみません」


「だろうと思ったよ… んっ 待ってな」

店員さんがレザーアーマーを持って来る。


「まず、あんたはそこで立ってな

私が付けてやるから」

そう言ってレザーアーマー付けてくれる。

「ふんっ」


「ぎゃっ ちょっと痛いですよ!?」

紐でがっしりと止めるみたいなのですが偶にキツく締め上げられ、痛いです。


「男がそんな程度でぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃないよっ」

わざとしているのではと疑うほど痛いときがあります。


死ななければいいのですが…。

死因はアーマーを付ける際の紐の縛りつけによるダメージとか嫌ですよ!?


「付け終ったよ? 動いてみな

ある程度動きは制限されるがね…」


言われたように動きは出来るがかなり動きずらい、だがこれで防御力を得る事が出来るのだ、

つまり躓いてコケた時のダメージで死ぬ可能性が減ると思うのだ。


「確かに動きにくいですね…」


「お兄ちゃんが強そうに見えるよ」

ラピスちゃんに褒められうれしいのです。

「ありがとう、ラピスちゃん」

頭をなでなでしてあげます。


気になることがあるので久しぶりのステータスを見てみよう

ステータスよ出るんだ!


ステータス

名前:鈴木 幼一

種族:ヒューマン

職業:ネクロリマンサ!%

どこにでも居るような標準的な人間で、ロリコン、異世界人、ドラゴンの親。


LV:1


HP:1

MP:1

STR:1

VIT:1

DEX:1

INT:1

AGI:1

LUK:1


EXP:1/∞


「えっ…」

普通に驚いて声を出してしまいました…。


ステータスに一切の変化なし… ですか…。

と言いますか鎧なので防御力が上がったはずなのでこのステータスに項目が無いからでしょう、そうですよね?

そうに決まっています。


「あのー… すみません

変な質問ですが防具とか付けるとステータスって変動します?」


「うん? 変な事聞くね… 値は変動するよ?

VITの値が変わってないのかい?」


「はい… そうなのですが

変わってないのです」


「そんなバカな!?

じゃあ、AGIの項目に変動は!?」


横に首を振る。

「いいえ…」


「もしかしたらアンタ呪いでも掛けられてるんじゃないだろうね?」


「… それに近いかもしれません」


「はあ… じゃあ、多分今のままじゃ、何を着ても意味は無いよ?」


「えっ…」


店員さんは付けてくれたレザーアーマーを外してくれた。

「まあ… 残念だったね…」

そう言って肩を叩いて慰めてくれる。


再度ステータスを心の中で念じてみる。


ステータス

名前:鈴木 幼一

種族:ヒューマン

職業:ネクロリマンサ!%

どこにでも居るような標準的な人間で、ロリコン、異世界人、ドラゴンの親。


LV:1


HP:1

MP:1

STR:1

VIT:1

DEX:1

INT:1

AGI:1

LUK:1


EXP:1/∞


レザーアーマーを外しても変化なしとは…。

よく見てみると、説明欄にドラゴンの親って項目が増えてる!?

値が変わるので文章が増えても不思議では無いのですが…。


これを見て、今頃思い出したのですが私、職業が未知の職業である ”ネクロリマンサー” なんですよね…。

魔法系なのでしょうから、形から入るのであれば魔法の杖ぽい奴とローブみたいなマントそれにとんがり帽子のような魔女帽が必要なのでは無いのでしょうか…。

ステータスに変化は無いということはある意味毒とかステータスを下げるデバフ効果を受け付けないという事なのだろう、つまりある意味強いのかもしれません。


ある意味これはネット小説で沢山あった ”俺TUEEEE”では無いですが、”俺YOEEEE” 過ぎて逆に強いパターンなのでは無いのでしょうか、多分…。

何を言ってるか意味不明な思考になってきました。


ステータスに変化が無いという衝撃的な事実に混乱していたようです。

流石は伊達にINT1では無いです… はい…。


何をしようとしていたか、思い出しましたよ、服を買いに来たのです。

魔法使いセットを探してみますが、無さそうなので店員さんに聞いてみます。


「すみませんが、魔法使いが使うような服とかはありますか?」


「ああ、それなら 魔法関係の店に行くことだな…」


「わざわざすみません…

それと、連続の質問になるのですが、下着関係はどこにありますか?」


「ああ、下着はうちでは取り扱ってないよ

それなら、斜め向かいの店がそうだよ」


「ありがとうございます」


ラピスちゃんの元へ戻り、持ってもらっていた抱っこヒモとラピスちゃんが着る服を会計の為に受け取る。


「これをお願いします」


「銅貨5枚の服と銀貨1枚と銅貨3枚の服に銅貨3枚の服が2着

以上しめて銀貨2枚と銅貨が4枚だ

あっ 銅貨24枚でも大丈夫だよ?」


どうやら貨幣の単位というか種類は10の桁で上がっていくシステムのようで、私にも理解しやすいが

すると、ユーディちゃんから貰えた金貨1枚その ”お金の価値は” 推測だけど銅貨100枚前後だと思う。


私の服の33枚分… ですね。

実はかなりの高額では無いのでしょうか?

食べ物が非常に高いなんて時代もありましたから服が安いだけという可能性も否定は出来ませんが。


大通りに出たら、ここの皆さんの主な主食だと思われるパンの値段を見て物価を計算してみましょう。


「ではこれでお願いします」

そう言ってユーディちゃんから頂いた金貨1枚を差し出す。


「おっ」

かなり驚いた顔をされますがどういう事でしょう、多すぎるのか少なすぎるのでしょうか…?


店員さんは不安そうな私の顔を見たのか

「十分足りるよ、金貨をそのまま出す奴が珍しくて驚いたのさ

はいっ 銀貨7枚と銅貨6枚のお釣りだよ」


「どうも」

お釣りを受け取り、スーツのポケットに入れる。


「荷物が多いから簡単だけど袋に入れておくね」


「どうも、すみません」


「ありがとうね、お兄ちゃん」


「いいよ、依頼は二人で頑張ったのだし」


「はいっ まいどありー」

店員さんから荷物を受け取り、まずは近い方の用件を終わらせようと、教えてもらったように斜め向かいのお店に向かいます。


この下着のお店では男女の店員が少し離れた会計カウンターで立っている。

「いらっしゃい(ませー)」

二人の店員の声がハモる。


じゃあラピスちゃんこれをと言ってラピスちゃんに銀貨を2枚渡す、多分2枚で大丈夫だと思うがどうなんだ

ろう?

服が銀貨1枚だったのでそれと同等ぐらいだと思うけども…。


「はいっ これを渡すよ

これでラピスちゃんは好きな物を買っておいで?

余った分とかはお小遣いにしてもいいよ?

足りないようなら言ってくれれば渡すから」

私の分は銀貨1枚以内の予算で収めるとして、銀貨4枚と銅貨6枚か、今後の生活資金としてはまあまあな所かな?


「あっ ありがとう、お兄ちゃん…

ちょっと…」

お金を手に取りつつ、小声で何かラピスちゃんが言ってるが聞こえない。

その上、何故か女の人向けの下着がある売り場へ引っ張られる。


「ちょっと、ちょっと ラピスちゃん!

そっちはダメだよ!?

私、男だよ!?」


もしかして一人で買うのが恥ずかしいとか言う理由なのでしょうか?

そうであれば理解は出来ますが、私にはこの任務H級の難易度なのですが!?


「恥ずかしいから そばでいてほしいの…

それにーー…」

ええ! そんな涙ぐんだ顔で見つめられながらそんな事を言われると私は引くに引けませんよ。


ラピスちゃんに引っ張られて女物の下着コーナーへ… そっ それ…も子供用の売り場です。

ロリコンさんには刺激が強すぎて立ちくらみがしてきましたよ?


軽く、本当に軽く、チラッと見ただけでですが、カボチャパンツ、これドロワーズというのでしたっけ?

そんな物からいろいろと種類があるようで、意外といいますか、私の元居た世界に近い形状のパンツまで存在してます…。

これ、オーパンツ? オーパーツですね 間違えました てへっ。


出来るだけ周りを見ないようにします。

「ラピスちゃん… 決まりそうかな?」


ラピスちゃんの下着が決まる前には私が恥ずかしさでダウンしそうです。


「これと、これ… でもどっちがかわいいかな…?」

なんだか幾つか下着を取って悩んでる様子のラピスちゃん…。


「お兄ちゃんはどっちが…」

悩み過ぎてテンパっていたのだろうか、ラピスちゃんが可愛い下着を持ったままクルリと私のほうへ回転してきました…。

ええっ… すぐさま、顔が赤く沸騰するラピスちゃん、私も似たようなものですよ。


どちらが良いか聞こうと思っていた手前後に引けず、ギギギと音がしそうな動きで私に下着を見せてくるラピスちゃん、この子の将来が心配ですよ。

「どちらも… 良いですよ…」


私もあまり見ず言ってしまいます。

「お兄ちゃんが… そういうなら… 両方買うよ…」

二人ともあまり前を見ず、会計カウンターまで行きます。


「うん… お願いします…」

そう言うとラピスちゃんは下着をカウンターの店員さんに渡す。


「ありがとうね

銅貨5枚が2点で銅貨10枚か銀貨1枚だよ お嬢ちゃん」


「はい… これを…」

ラピスちゃんが店員さんに銀貨1枚を渡す。


「じゃあ これ」

店員さんが袋に荷物を入れてくれる。


ラピスちゃんの初めてのお買い物が無事に終了したので次なる目標として、私の分もさっさと買ってしまいましょう。


「すぐ買い物終わらすから、出入り口の方で待っててくれるかな?」

そう言ってラピスちゃんと一旦別れる。


男物の下着コーナーも腰に巻く布みたいなタイプからカボチャパンツ、トランクスのような形状の物まで沢山ありますが、ここは普通にトランクスぽい形状の奴を3枚ほど手に取り、会計へと向かいます。


「すみません これをおねがいします」


「はいっ えー 銅貨3枚が3枚で銅貨9枚だよ」


銅貨が足りないので銀貨1枚を渡します。

「じゃあ 銅貨1枚の返しだ

袋に入れるから待ってな」

簡単な袋に荷物を入れてくれる。


「どうぞ」


「どうもー」

ラピスちゃんが待つ入口へ急ぐ。


「凄くお兄ちゃん 早かったね」


「まあ、男の買い物は早いよ

機能させ合ってればいいから」


「そんなものなんだ…」

何やら感心した様子のラピスちゃん。


「ラピスちゃん… 幾つか寄りたい場所があるのだけどいいかな?」


何を言ってるのお兄ちゃんという顔をするラピスちゃん。

「いいよ いろいろ必要だもんね…」


「うん 個人的だけど魔法使い装備が欲しいなと感じてあったら覗いてみようと思って

それとこの街での物価を知りたいから屋台とか少し覗こうと思う」


「屋台っ!」

なんだがラピスちゃんがキラキラしだす。

この子こんなに食いしん坊なキャラだったかな? 少々の疑問を抱きながら街を散策する。


パンを売っている屋台というか出張所を見つけたので寄って値段を確認してみると、黒いパンが屑銭2枚と書かれており、白いパンは屑銭4枚と記されている。

どうやらこの世界での硬貨は屑銭、銅貨、銀貨、金貨の種類のようだ。


「おいしそうな匂いだね…」

ラピスちゃんが屋台に噛り付いている。


「うん 焼きたてだね」


「おうっ 焼きたてだよ!

どうするんだ?」

多分だけど一番安そうな黒いパンが屑銭2枚とみるに日本円換算で数百円なのだろうと考えれるので

物価を考えやすいようにこれからは屑銭1枚 100円と考えよう。

黒いパンが200円か…。

銅貨を出して幾ら却ってくるかで屑銭の価値を調べよう。

「すみません、この白いパンを2つとこちらの黒いパンを下さい」


「あいよー

じゃあ 屑銭6枚だよ」


「では銅貨1枚でお願いします」


「じゃあ じゃあ丁度だな

まいどありー」


一応数字の桁上がりは10単位らしいこれでほぼ完全に物価を計算できるようになったぞ?

「はい おおっ…」


パンをそのまま売り子のおじさんから渡される。

この時代に紙袋とかナイロン袋なんて洒落たものがないのは分かっていたが少々驚いてしまう。


「はいっ ラピスちゃん」

買った白い方のパンを渡す。


「うんっ もぐもぐ」

早速パンを千切って食べるラピスちゃん。

そのリスみたいにもこもことほっぺを膨らます姿がかわいいのでじっと観察していたのを

パンを食べたいと勘違いしたのでしょうか?


「あっ はいっ お兄ちゃん」

横を見るとパンを小さく千切って私にどうぞと言わないばかりに差し出してくれるのですが

現在パンを二つ抱えているので両手が塞がっているので手を使えません。


「んーっ」

心なしか少し顔が赤いラピスちゃん。

精一杯背伸びをしています。


たぶんこれは! 両手が塞がってるお兄ちゃんに”あーん”してあげるよというシュチュエーションなのではないのでしょうか!?


この状態では仕方ありません! キリッ

ラピスちゃんの持っているパンを咥え様としたら指まで咥えちゃったというのはただの事故になると思いますよね!?

ええっ パンを落としたら大変ですし、ね! キリッ


「あっ ありがとう」

そう言ってラピスちゃんの持つパンを咥えようと顔を近づけたその時です。


「きゅっ」

今まで大人しくしていたアンバーがパンの匂いでしょうかに釣られ顔を出したと思えば、ラピスちゃんが差し出してくれたパンをパクッとパクっていきましたよ!? こんな所でおやじギャグを言っている場合ではないですが…。

確かにアンバーに悪いですね、ずっと袋の中に入ったままなのですから…。


「むうっ…」

今さらになって恥ずかしくなったのだろうラピスちゃんがそっぽを向いてしまったので残念ですが、多分、何かしらの機会がない限り、ラピスちゃんからこのような事はしてくれなさそうです…。


これで果たしたい用事の幾つかが消化できたと思います。

服を手に入れることは出来ましたし、貨幣の価値の調査も終了、神父さんへの手土産である、パンも購入済みで残っている要件は一応サブ的な事ですが私の魔法使い装備(着てみるのが夢でした)を出来れば購入するそれにギルドへの達成報告、最後に神父さんへのご挨拶でしょうか。


道順的にはギルドが近いのでそれを優先せていただきましょう。


もぐもぐとパンを千切って食べるラピスちゃんと共にギルドへ向かいます。

「次はギルドへ依頼の達成報告しに行くからね?」


「ごぐっ」

パンを頬張っている為に返事が出来ないので頷きだけで返答してくれた。


今度は道がわかっているのでとてもスムーズにギルドの建物へ入れた。

ギルドに入り前に見たことのある受付のお姉さんに軽く挨拶を交わして、依頼達成を報告したいと申し出ると

以前作ったギルドガード、それに達成報告書の両方を渡す。


いろいろと作業があるらしく、前回登録作業をした半透明の水晶、魔障石に手を当ててくれと言われたので手をかざします。

この作業は聞くと、どうやら前に作ったギルドカードに登録された魔力の波形と比較して本人かどうか確認するシステムらしく、一定の魔力が吸われるようだ。

この時に吸われた魔力は街の灯りなどの公共設備に使用されるらしい。


「ぐおおおっ おおっ」

以前と同じく体のエネルギーが吸われる感覚がします。


あっ これ以前にやった気絶する奴だ、確かMPが1しか無いのが原因のはず…。

今頃思い出しても後の祭りですが、予想通り意識が暗転し、ぶっ倒れます。


また、ラピスちゃんが膝枕してくれてるといいなー

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