お家はここですか?

目が覚めると、知らない部屋で寝かされていたようだ、体を見るとバスローブのような服を着せられている。

「すうぅ すぅ」

可愛らしい寝息が聞こえるので横を向くとラピスちゃんが隣のベッドで寝ており、アンバーも

私の頭の横で鎮座して、起きるのを待っていたようだ。

「きゅ きゅ」

アンバーを撫でていると頭が覚醒してきて意識を失う前の出来事を思い出す。


「確か、温泉でのぼせて!」

温泉でのぼせたのを思い出し、ラピスちゃんを再度確認すると、私と同じくバスローブぽい服を着せられている。

寝息は先ほど聞いたが安定しているようで問題はなさそうだ。


そんな時に部屋に誰かが入ってきた。

「これは、幼一さん

起きられたのですね」

エバンスさんとメイドさんが一緒に入ってきた。


「はい… 今起きたところですよ」


「大事に至らなくで良かったです

大声で助けを呼ぶ声が聞こえて、私と、メイドのマリと共に駆け付けると

幼一さんとラピスさんが廊下で倒れており、驚きましたよ」


「いろいろご迷惑をおかけしてすみません

それで、ラピスちゃんの様子は?」


「ラピスさんは少し幼一さんよりのぼせていたという状態で

したので水を飲ませ、安静にさせましたので今は大丈夫だと思いますよ」


「安心しました…

エバンスさん助かりました」


横を見るとラピスちゃんの介護はエバンスさんと共にやって来たメイドさんが担当らしい。


「それでエバンスさん 私はどのぐらい気を失っていたのですか?」


「1刻半ほどですよ」


「良かった

そんなに長い間気を失っていたわけでは無いのですね」

胸を撫で下ろす。

ベッドから降り、ラピスちゃんの傍へ移る。


ラピスちゃんの頭を撫でてあげると、心なしか顔が少し安らいだような気がする。

「ごめんね

ラピスちゃん もっと早く私が異常に気が付いていれば良かったのに」


あくまで予想だが、フラフラとしつつ私の元にやって来た時にはラピスちゃんはのぼせていたのだ。

のぼせて頭がフラフラするという不思議な現象に心細く、私の元に来たのだと思う。


また、お風呂だが、温泉と言うことで普通より湯の温度が高い事や、二人とも極度に緊張していたのが原因であんなに早くのぼせてしまったのだろう。

次に入る機会があれば注意しようと決心した。


「むにゅぅー すぅ すぅ」

目が覚めるまでラピスちゃんの傍に付いていて上げよう

先程よりメイドさんはラピスちゃんの額や首筋を濡れた布で拭いてくれている。


「ラピスちゃん 早く起きて元気な姿を見せてほしいな…」

そんな声掛けをしつつ、しばらく私はラピスちゃんの頭をなでなでしていた。


「ぅん… あ… れ?

お… お兄ちゃ…ん?」

ラピスちゃんが目覚めたようだ。

元気かどうか確かめようと声をかけようとしたその時、ラピスちゃんの顔が真っ赤になり、シーツを頭で

被ると

「おっ お兄ちゃんは、どっ どこかに… 行ってて!」


ラピスちゃんに何故か嫌われたのか”どこかに行って どこかに… お兄ちゃんはどこかに行って…”この先ほどのシーンばかりリピートされる。

先ほどのラピスちゃんのセリフの後、私は屋敷の外の庭にある椅子に座りながら、真っ白に燃え尽きた感じで頭や手をだらんとさせた状態でいる。


「ラピスちゃんに嫌われた… 嫌われちゃった… 嫌われちゃったよ…」

30にもなるおっさんが嗚咽しながら涙で顔を濡らす。

絵面が最悪で、汚いだとか考えている余裕が無い、このままラピスちゃんの前から消えようかそれか… そうやって悩んでいると、このままで良いのか今更ながらに思う、ラピスちゃんにはちゃんとした保護施設なりに引き渡すのが道理だと思得てきた。

こんなこの世界では怪しい東洋人、それも金も家も無いのだ。


胸元に抱えているアンバーが心配そうな目で見つめてくる。

「きゅぅ?」

「アンバー いずれは本当の親元に返してあげるからな…」


いろいろ考えが思いつくが、ラピスちゃんの為に何か残そう。

そう考えた私は”この依頼の報酬を全額ラピスちゃんに渡して欲しい”、それと”ラピスちゃんを何処か安全に暮らせる場所に”の二点を頼むために誰を探そうと考えた。


「だれか… 居ますか?」

ゆらゆらと抜け殻のようになりつつエバンスさんを探し屋敷を徘徊する。


「だれか… だれか…」

完全に不審人物のそれだが気にしている余裕は無い。


エバンスさんが誰かを見つけた様子でこちらへやってくる。

ちょうど良かったエバンスさんに伝言を頼もう、彼ならやってくれるに違いない。

「幼一さん

どこへ行かれていたのですか?

心配しましたよ?

ラ…」


エバンスさんが何か言おうとしていたが、構わず私は少し強い口調で口を挟む。

「エバンスさん!

頼みがあります

報酬の全額をラピスちゃんに

そしてラピスちゃんを安全に保護できる場所にお願いします

私はこのまま何処かへ行こうと思います」


「それは… 分かりました

幼一さん! 本当にそれでよろしいのですね?」


「はい… ラピスちゃんを安全に保護できる場所がない場合は

街のはずれにある協会の神父さんにお願いできますか?」


「… はい お願いされました

幼一さん!

今の亡霊のような悲しい表情で下した決断、それが本当の願いならば

私は幼一さんの願いを全うします」


「… はい」

そのままの位置で動かないエバンスさんを尻目に私は屋敷の外へ出ようと踵を返します。

重い足取りを引きずりながら、屋敷の出口である大きな扉に手を掛け、開こうとしたときエバンスさんに声を掛けられます。


「ですが、ラピスさんの遺志を尊重した上での考えであれるのなら

私は反対はしません」

私の扉に掛けた手が一瞬だけ止まるが、無言のまま、扉を開け放ち外へ踏み出す。






「そうでないですね、幼一さん?」



思い出したとばかりににやりと笑うエバンス。

「今日はユーディお嬢様に”休め”と命令されていたのを思い出しました

ですので、ただの老人である”エバンス”として動けます」


ドダンッと背後から凄い音がして振り返ると、屋敷の扉が開け放たれ、エバンスさんが仁王立ちしている。

何事かと呆然と見ていると、エバンスさんがこちらへズンズンと足を踏みしめながら近寄ってきます。

その気配に気圧されて私は数歩後ずさります。


エバンスさんが近くまで来くるとアンバーを私から奪い、地面に下したと思えば、私の視界が反転して、猛烈な痛みと視界が赤色と黒色の交互に点滅する。

そこで私は意識を手放した。




次に意識が戻ると、少し前に見た事のある天井だった。

「ここは… 私は確か…

エバンスさんが寄って来て… いたっ」

背中がなぜか、痛いがとにかくベッドより起き上がり、アンバーが横で寝ていたので優しく抱きかかえる。


この場所がユーディちゃんのお屋敷だと分かったが何故かラピスちゃんがベッドに寄りかかる形で寝息を立てている。

窓の外から外を見てみると月が空に出ようとしている時間のようで、慌てて時計を確認してみると七時半ぐらいを指していた。


「どういう状況だ?

とにかくこのまま、ラピスちゃんを起こさぬように出よう」

ゆっくりとベッドから降りるとタイミングよく、エバンスさんが入ってきた。


「起きられたのですね?

それは良かったです」


「では失礼します

エバンスさん、いろいろありがとうございました」

頭を下げ、アンバーと共にこの部屋を出ていこうとする。


「待ってください

なぜラピスさんがそこに居る、その意味気が付かないのです?」


「薄々わかっていると思いますが、私とラピスちゃんは

何の関係も無い旅の途中で出会っただけの仲です」


少し涙声になるが、エバンスさんはただ黙って聞いてくれる。

「のぼせた状態から回復した時に思ったのですよ

こんな怪しくどこの馬の骨とも知れない、それも行く当てのない、金のない、ましてや

嫌いだと思っている人間と一緒に居るより、教会などでちゃんと保護されたほうが

彼女のためになる、と思ったのです

ただ、それだけです」


「言いたいことはそれだけですか?

ラピスさんの気持ちと意思を全く考慮していませんね

気を失った貴方をラピスさんはずっと介護していたのですよ?」

そう言ってラピスちゃんを示すエバンスさん。


「旅の途中で出会っただけとは言いますが

それで十分ではないのですか?

その他の事情は貴方が言っているだけでラピスさんはその事で

何か言ったのですか?」


「… それはっ」

正論過ぎて何も言い返せない


「おとう… さん…

おか…あさん… 爺…や…

お兄…ちゃん…

皆… 居なく…なっちゃ…

いやだ… よ…」

ラピスちゃんが寝言を漏らしながら涙が頬をツーと流れる。


しばしの沈黙が部屋を包む。

沈黙を破ったのは他でもないラピスちゃんだった。

「ぅぅん…っ あ…れ…

寝ち…ゃって…たの?

あれ? お兄ちゃんが…いない!」

寝ているはずの私が居ないのに気が付いたのか、焦りだすラピスちゃん。

ラピスちゃんが後ろを振り向き、私に気が付いた。


「お兄ちゃんっ! お兄ちゃん! お兄ちゃんっ」

ラピスちゃんが胸に飛び込んで抱き着いてくる。


「ごめんね ごめん」

何回も謝りながらラピスちゃんの頭を優しく撫でる。


「居なくなったら 嫌だよ… お兄ちゃん…」

私の胸に顔を埋めながらラピスちゃんが泣いている。


「もう、ラピスちゃんの前から勝手に居なくならないよ…」


「あの時は温泉での出来事が恥ずかしくて変な事言ってごめんね…

私が、お兄ちゃんに ”どっかに行って”って行ったから出ていこうとしたの?」


そのセリフで勘違いたしのも理由の一つだがフルフル首を振って一応否定しておく。

「ラピスちゃんは私のような怪しい人間の傍ではなく、ちゃんとした保護施設等に

居るべきであると思ったから…」


パシンッと乾いた音が部屋に響き、私のセリフは最後まで言えなかった、何故なら、

私の頬をラピスちゃんが叩いたからだ。

この時の頬の痛みは死ぬ時の痛みより痛かった。


「お兄ちゃんの バカッ!

私の気持ちや意思はどうなるのっ!

私は、自分の意志でお兄ちゃんに付いてきてるの!

それが邪魔ならはっきり言ってほしかったよ…

ぐすっ…」


私の胸をポンポンと叩きながら訴えかけてくるラピスちゃん。

「ごめん、ラピスちゃんの気持ちを考えてなかったよ」


「お兄ちゃんの事、私はぜったいに許さないもんっ

だから私は一生お兄ちゃんに勝手に付いていくっ

お兄ちゃんが嫌がってもっ」


私はラピスちゃんを離さないよう強く抱きしめる。

「ああっ わかったよ、ラピスちゃん」


いい雰囲気に包まれている最中この空気をぶち壊す出来事が起きた。

バンッと部屋の扉が開かれるとそこにはユーディちゃんが居た。


「うん? エバンス

幼一とラピスの何やら問題は解決したのか?」


「そのようですよ?」


私とラピスちゃんはユーディちゃんの乱入で気恥ずかしいのでそっと離れる。

「きゅー きゅー」

ラピスちゃんと私の間にアンバーが割り入ってくる。


ユーディちゃんが私とラピスちゃんの前に来ると、頭を突然下げた。

「幼一とラピス、此度の件、こちらの配慮が足りず申し訳ない

このローゼンタール家内で起きた全ての問題は当主である私に責任がある

温泉でのぼせるという事態を想定してなかった私の失態だ

改めて ローゼンタール家当主として謝る

配慮が足りず、すまなかった。」

会話中に二度も頭を下げるユーディちゃん、貴族って凄く偉いのではと思っていたので

頭を下げるなんて相当な事だったのだろうか?


「ユーディちゃん 頭を上げて!

私がラピスちゃんの様子に気がつかなかったのが原因だから

本来ならユーディちゃんやラピスちゃんから文句を言われる立場だよ?」


「私も気にしてない… 

むしろ感謝してる...

お兄ちゃんと温泉に入れたから...」

最後の方は声が小さく私は聞き取れなかったが、感謝してるようだ。

私とラピスちゃんがユーディちゃんの謝りに対してフォローを入れる。


エバンスさんが一歩出てきて、私に深々と頭を下げる。

「事情が事情とは言え、此度は幼一さんに暴力を振るった事、大変申し訳ありませんでした

それと、ローゼンタール家の使用人エバンスは今日はお休みなのでただの

エバンスがこの問題を起こしましたのでこの件に関してはローゼンタール家、ユーディお嬢様は関係ございません

私個人が起こした問題です」


「何を言ってるんですか?

エバンスさん!

先ほど言ったように私がすべて悪いんです

ユーディちゃん、エバンスさんは全然悪くないよ!」

慌ててエバンスさんを擁護する。


エバンスさんはユーディちゃんに向き直ると続きを話した。

「ユーディお嬢様、私は客人に対し暴行を働きました

何卒厳しい罰を私にお与え下さい」


ユーディちゃんが考える仕草をする。

「ふむ…っ

エバンス、確か”今日は休め”という命令だったなっ

では罰は働け、幼一とラピスの世話をするんだっ」


「ですがっ お…」


手でエバンスさんを制しながらユーディちゃんは告げる。

「くどいぞっ? エバンスっ

先ほども言ったようにローゼンタール家の使用人のエバンスは今日は休みだ

だから、どこぞのエバンスが事を起こしたそれだけだろう?

罰を与えてほしいと願うから、然るべき罰は与えたのだっ

これ以上は私の顔に泥を塗ることになると思えっ」


「はい… ユーディお嬢様」

エバンスさんが渋々といった感じで引き下がる。


「幼一にラピスよ 今日はもう夜になろうとしておるっ

この屋敷で泊まっていくといいっ

夕食ももう少しで出来るはずだから食べれるのであれば来るがいいっ」


「ありがとう ユーディちゃん」


「うむっ では待っているぞ?」

そういうとユーディちゃんは姿を消す。

その後に続いてエバンスさんも何かあればお呼びくださいと言い残して夕食の準備の為か部屋を後にした。


「エバンさんが呼びに来るまで待っていようか ラピスちゃん」


「うん…」

そういってベッドにちょこんと座るラピスちゃん。


「きゅぅ きゅぅ」

たぶんお腹が空いたのだろうか、アンバーが鳴いているので、夕食を呼びに来た時にエバンスさんにミルクがないか確かめてみよう。


「お兄ちゃん… その子触っていい?」

私の胸に抱えているアンバーを指すラピスちゃん。


「大丈夫だと思うよ?」


ラピスちゃんの元へアンバーを持っていく。

「きゅっ きゅっ」

アンバーが首を横に振りながら拒否のような反応を見せる。


子供だからだろうかあまり人に触れられるのは嫌なのだろうか?


「嫌がってるの?」

ラピスちゃんが残念そうな顔をする。


「ごめんね ラピスちゃん

この子 アンバーっていう名前を付けたんだけど

嫌がるのを強制するのは気が引けるから…」


「大丈夫、ユーディ…ちゃんに頼んでウサギをなでなでさせてもらうから」


エバンスさんが呼びに来るまで取り留めない話をラピスちゃんと話していた。

食堂に付くとさすがはエバンスさんだ、アンバー用の温めたミルクが入った皿が用意されていた。


ユーディちゃんがすでに席に付いていた。

「幼一にラピス来たな

適当に座ってくれっ

私は特に食事のマナーなど気にしないから気兼ねなく食べてほしいっ

食事とは楽しく食すものだと思うからなっ」


「ありがとう ユーディちゃん」


「ありがと…う… ユーディちゃん」

少し恥ずかし気に感謝を述べるラピスちゃん。


適当な席に座らせてもらう前にアンバーを用意された皿の前に置く。

「きゅー きゅー」

ミルクをおいしそうに飲むアンバー。


「では食べようか、約一名というか一匹はもう食べ始めてるからなっ」

そういうとユーディちゃんはお祈りを始める。


私もいつものようにする。

「いただきます」


「食べながらで悪いが今回の依頼ありがとうだっ

私個人の依頼だが非常に満足の行く結果だ」


食べるのを少し止める。

「ユーディちゃんが喜んでくれるならそれでいいよ」


「予想外にモフモフで可愛くて良かったぞっ」

年相応の笑顔をするユーディちゃん、とてもかわいいです。


「そうだ、気になっているのだがそこのチビは何なのだ?

一応エバンスに報告は貰ったが」

ユーディちゃんがアンバーを指さす。


「アンバーって名前で、ドラゴンの子だよ

ユーディちゃん」


驚いた顔をするユーディちゃん。

「ドラゴンの子か…

書物で読んだ姿と似ているな…」


「ドラゴンが実在するとは思っていなくて驚いたよ

ははっ」

そう笑いながら話す。


「それは大変な思いをさせたなっ

私個人の願いにっ

すまぬっ」


「こうして元気だし、ユーディちゃんが謝る事じゃないよ?」


「ありがとう、幼一よ」


ユーディちゃんと話しながら夕食を食べ終えた。

「ごちそうさま」


「おいしかった… ユーディちゃん

ありがとう…」

ラピスちゃんがユーディちゃんにお礼を言う。


「私も、ごちそうさまです」


「礼なら作ったエバンスに言えっ

私は機会を提供しただけにすぎぬっ」


脇で控えているエバンスさんに礼を言う。

「ありがとうございます」


「いえいえ」


「幼一、ラピス

少しローゼンタール家当主として話があるがいいか?

別にそこまで緊張しなくていいぞっ」

ユーディちゃんが少し硬い顔をする。


「なに? ユーディちゃん?」


「うん」

ラピスちゃんもうなずく。


「まず、報酬の件だが明日の朝に渡そう

朝は朝食を食べていけっ

確認だが、一応エバンスから話は聞いたがそのドラゴンの子、アンバーだが

幼一を親だと思っているとの事だな?」


「報酬… 忘れてたよ うん了解

アンバーが私の事を親だと認識してるのは本当の事だよ?」


「そうか…」

少し考え込むユーディちゃん。


「依頼の書類に記載されていたが一応の確認だが、

二人とも家を持たぬ旅人なのか?」


「そうだよ?」


「ふむ…

なら少し相談だがこの街に住まぬか?」


「えっ?

それはいずれはお金を貯めて、家を買ってそこで暮らそうと考えていたけども…」


「ならばちょうど良いっ

この屋敷に住めっ」


「えええっ!?」


「まず理由を話そうっ」

そう言ってユーディちゃんから詳しい話が始まる。


「幼一がドラゴンの子の親であるからだっ

簡潔に言うとなっ」


「アンバーの親であるから?」


「そうなのだっ

嫌な話だが、街の特徴にドラゴンの子、つまりアンバーを使える点

ドラゴンが居る街だから盗賊団等に狙われにくくなる防衛観点から見た点

最後に次に政治的な意味合いも大きい、私の家の持つ力が大きく増強される点

大きく分けてこの三点だっ」


ユーディちゃんの言う事は分かるが…。


「無理にとは言わんっ

旅を続けるだとか

ただこの街に住むだけと言うのであれば諦めるっ」


「うん…

街の特徴にドラゴンが住む街か…」

確かに客寄せには持って来いだが、あまり歓迎はしたくないな

特にアンバーを見世物にするのは嫌だ。


「街の特徴とは言っても、檻に入れて見世物にするわけではないぞっ

ドラゴンが住み、ドラゴンから認められた人間が住む街等と宣伝するだけだ

幼一とアンバーは普通に生活してればいいぞっ

たまに人と会うぐらいで良いと思うがなっ」


「確かにそれぐらいなら…

次に防衛観点は良くわかるかな」


「防衛観点は大きい、ドラゴンという幻想に近い生き物から認められた

人間が居ると言う事で味方の士気は上がる、敵は逆に怖気づくという感じだっ」


「最後の点の意味があまり分からないけど…」


「この点だけで私、ローゼンタール家当主としては十分なのだがな

これは、幼一には分かりにくいかと思うが、他の領主、まあ貴族による政略や妨害の抑止力になると言う事だ」


「つまり、私というかアンバーがユーディちゃん陣営に居ることで政略的とか政治的な力が増すって事だよね?」


「そうだっ 理解が早くて助かるぞっ

幼一」


「でも外に街を守る兵士が居るけど」


「街の兵は違うぞ?

あれは半分傭兵のような感じだっ

私に仕えてるのでは無く、街というか議会に仕えているのだっ」

首を振りつつ話してくれるユーディちゃん。


「純粋な私の兵力というか家臣はこの家に居る者だけだっ

両親が存命の際は多くいたが、私のような小娘に仕えるのは嫌だったのだろうがなっ」

少し目を瞑るユーディちゃん。


「いいよ ユーディちゃんの力になるよ

こちらとして、住む場所の確保は急務だったから…」


「本当かっ!?」


「でも、アンバーを見世物とかは勘弁してほしいな

一応ラピスちゃんに聞かないとダメだけど」

そう言ってラピスちゃんを見る。


「お兄ちゃんと居れるならそれでいい…」

そういう事らしい。


今日からユーディちゃんのお屋敷が住む場所となるようだ。

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