それを人はドラゴン退治と言うのですよ!

エバンスさんの運転するケルベロス二号に引かれた馬車で揺られること一時間ほど経った頃だろうか

前の方に大きな山が見えて来た、あれが目的のドラ山脈だろうか?


山に行くとは言っていたが、あの山を登るのだろうか?

エバンスさんに聞いてみる。


「目の前のあの山がドラ山脈で、あれに登るのですか?」


ケルベロス二号を運転し、風に揺られながら、エバンスさんが答えてくれる。

「そうですよ、幼一さん

大体2刻ほどで頂上まで行けるので、往復で約四刻ほどになるので今から行けば夜には

麓まで戻ってこれる予定です」


あんな山にピクニックか、何らかの儀式だろうかでの用事で行ってそこでユーディちゃんとペットは逸れてしまったのだろうか?

若干、何か勘違いをしているような気がしてきました… が今更引き返せませんし、まさかですよ、まさかですよ、山と場所的と名前がドラ山脈とか言う所なのでドラゴンが住んでいたとか言う伝説とか無いですよね?

ドラゴンなんか空想上の生き物ですよね?


かなりの不安を抱えていると、目的地に着いたようでエバンスさんがケルベロス二号の速度を落としていく。

「着きましたよ 幼一さん、ラピスさん

ここからは、徒歩で頂上まで目指す事になります」


「エバンスさん ここの頂上付近にユーディちゃんのペットが居るのですか?」

勘違いを正したく、エバンスさんに質問の方向を変えて出来るだけ失礼の無いように聞いてみる。


「いいえ? 居ませんよ?

頂上でスノーフラワーと呼ばれる雪の結晶の形をした花を少し採取してきて欲しいのです」


その時の俺の顔は凄い顔をしていたと思う、完全に依頼を勘違いしているようだ。

「そっ それで、その花をどうするのです…か?」

衝撃的な事実に頭はパニックになりつつ、言葉は平静を保つ。


「ユーディお嬢様がペットにしたいと言う、スノーラビットを捕獲する為に使う囮として

利用します

後はお嬢様の観賞用としても使いますが」

エバンスさんがそう告げる。


あれです、完全な私の勘違いです。

居なくなった”ペット探し”では無く、ペットが欲しいから探す、”ペット探し”であった事。

「了解です

山には皆で登るのですか?」


エバンスさんに一応聞いておく。

「いえ、私はこのケルベロス二号の番と、山から降りてこられる頃には暗くなっているでしょうから

晩御飯の支度などの為に残ります」


フラグになると嫌だが、ドラ山脈と少し気になって居る事をエバンスさんに聞いてみる。

「エバンスさん このドラ山脈の名前の由来はどういうものですか?」


エバンスさんが少し難しい顔をした。

「由来ですか… 私も少し聞き及んだ程度ですが、ドラゴンが住んでいたと呼ばれる

山なので、ドラ山脈と呼ばれ、神聖視されていたと話は聞いた事がありますが、今は普通の険しい山だと聞いております」


安心した、さすがにドラゴンが居る山に行けとか正気の沙汰では無いので話を聞けて良かった。

「それと、先ほどドラゴンって言いましたが、存在するのですか?」


首を横に振るエバンスさん。

「いえ、大昔のお話で居たとされるという曖昧な噂しか聞いた事がありませんよ?

子供にするおとぎ話と同じような話です」


「安心しました、それでドラ山の頂上に生えているスノーフラワーですか、それを採取すればいいのですよね?

雪の結晶の様な花びらをしているのですよね?」


エバンスさんが頷く。

「そうです

見れば分かると思います、こちらに籠があるのでこれに入れて下さい」

エバンスさんから小さめの籠を渡される。


山登りとの事なので子供には大変そうな気がするが、ラピスちゃんにどうするか一応聞いてみる。

多分手伝いたいとか言っていたので来ると思うが。


「お兄ちゃんと一緒に行くよ?

あの山に登ってお花を集めるんでしょ、私もお手伝いしたいし、私もこのロリロリハンターズの一員だもん」

幼女が自分の口でロリロリ言ってるのは凄く萌えます、このままでは、色々抑えが効かなくなりそうです。

この調子でラピスちゃんに卑猥な言葉を言うようにこっそりと教えようとか考えてしまいます。


「行きますか、ラピスちゃん」

ラピスちゃんに手を伸ばす。


「うんっ お兄ちゃん頑張ってお花いっぱい集めようね」

ラピスちゃんと手を繋ぎながらドラ山頂上へ向かいます。


エバンスさんが軽くお辞儀をする。

「では幼一さん、ラピスさん お気を付けていってらっしいませ

帰りは暗くなるかもしれませんが、焚火をしておくのでそれを目印にして下さい」


「分かりました、エバンスさん ご期待に沿えるよう頑張ります」



草木のあまり生えていない、岩でごつごつした感じの山肌のドラ山頂上を目指し歩いて行く。

暗くなる前に帰らないとな。

ラピスちゃんは山登りが初めてらしく、俺より先に行ったり、走ったりしてはしゃいでいるので注意しておく

「危ないよ ラピスちゃん それに山登りは体力が必要だから一定のペースで登らないと後でヘトヘトになるよ?

それに下りの方が本当は疲れるから」


「ごめんさないっ お兄ちゃん こんな高いところに登ったのが初めてで、興奮してたの

景色も凄いもん」


確かに景色に関しては俺も期待するものが大きい、異世界での山頂で見る風景がどのような感じか楽しみなのだ。


「ふっー ふっー ふーっ」

別に産気付いてる訳ではない、30才を過ぎたおっさん、それも革靴装備でゴツゴツした山肌を歩くと体力的になかなか、辛い。

外回りの営業だったので、歩くこと、まあ少しは体力に自信が有ったのだが。


横を見てみると森で遊んでいたというラピスちゃんは想像通りに元気そうに鼻歌を歌いながら歩いている。

「ふん ふん ふん ふーん ふん♪」


多分俺の居た世界と、この世界の体力基準が違うだけだと思いたいが、前に見たステータスの値がオール1だったのを思い出したので、これが原因だと思いたい。

幼女に色々負けるおっさんは流石に辛いので。


おおよそ、一時間半ほど山を登っただろうか、そろそろ頂上が見えてきても

良いはずだと思っていると、お空の方より、ヒュルルルーッとか音が聞こえて来た。


ラピスちゃんが凄く驚いた顔をしています。

多分私も似たような顔をしていることでしょう。

「なっ! なにっ! 名にあれ! お兄ちゃん!

急ごう! 流れ星かな!?」


山頂付近に何か落ちて行くなーとか見ているとドスッと言う音が聞こえました。


大変興奮して飛んだり跳ねたりを繰り返すラピスちゃん、凄く可愛らしいのですが、そのように飛んだりするので、ピラピラとローブとゴスロリドレスのスカート部分が少し捲りあがり、幼女の生足がチラチラしていますよ?

自分はここでその生足の方が気になります。

正直悔しいです、ローブさえ、ローブさえなければ、膝丈までのスカートとは言えど神聖なるゾーンが拝めたと言うのに、何故! 神よ! 有瑠ちゃんよ! ローブをくれた神父さんよ! 私は神様系に嫌われているのでしょうか!?


血涙を流し固まる俺を引っ張るラピスちゃん、俺はラピスちゃんに引っ張られて山頂へ連れられる。

頂上へたどり着くとそこには、盆地のように少しだけ凹んでおり、一面に草原が広がっていた。

その草原の所々に、件の品である、スノーフラワーが咲いているようだ。


中央より少し離れた位置に空白地帯が出来ている、先ほどの空から落ちて来た何かが地面に衝突して地面を捲ったのだろう。


俺もラピスちゃんも先ほどの謎の物体落下を目撃しているので、何かと気になり、二人で駆けつけてみる。

ファンタジーな中世にエイリアンの宇宙船とかだと面白いなーとか考えつつ見てみる。


「大きな卵?」

俺とラピスちゃんの声が重なる。

柔らかい地面を抉り取ってそこに鎮座しているのはダチョウの卵より、二回りほど大きい卵ぽい何かだ、隕石だろうか?

少し衝撃でだろうかヒビ割れが入ってる… これ、やはり卵だ ファンタジーの世界の卵だ

隕石では無く、卵と判別したので興味が薄れ、俺は周りにあるスノーフラワーを幾つか摘み取り、丁寧に渡された籠の中に幾つか入れていく。


ラピスちゃんが卵に気を取らて、つんつん突いた居たためか急に暗くなったのに気が付かないようだ。

俺が上を見ると、バッサッバッサッとその大きな翼と巨体が空を飛んでいるというか、こちらへ落下している… ドラゴンだ…。

赤色のドラゴン、大きさは10メートルに届きそうで、大きな翼を合わせると、20メートルに届きそうです。


なんという事でしょう、私達ロリロリハンターズは難易度最低のペット探しに来て、魔王退治並みの難易度と思わしき、依頼に代わっていました。


それを人はドラゴン退治と言うのです。


現実逃避してもダメです、見た目に反して非常に弱いとか考えれますが、ラピスちゃんの身の安全を守る事が何よりもの最優先事項です。

ラピスちゃんも上空の異常に気が付いたのか、固まっています。

何かあってはまずいと動けないでいるラピスちゃんを背中に庇う動作をします。


ドラゴンさんは私達人間を矮小な存在と捉えてくれているのか、見向きも警戒もせず、地面にドスンッと着地します。

そのドラゴンさんは何かを探す仕草をし始め、私の足元辺りで視線を止めます。


ゆっくりと私もその足元を見てみると、先ほどの卵があるではないですか、これはドラゴンさんの卵だったのでしょうか?

そのままゆっくりと立ち去って何事も起きなければ良いのですがそうは問屋が卸してくれないようです。


「矮小なる人の子よ その場を立ち去れっい!」

ドラゴンさんが吠えるように喋りました、ええ、実際吠えています。

喋る事の出来る賢いドラゴンさんのようです。


「ひっ」

驚きで俺は固まり、動かなくなり、ラピスちゃんに至っては恐怖が振り切れたのか、可愛らしい声を出して気絶したようです。

「うにゅうっ」

ラピスちゃんが倒れた場所が柔らかい地面で良かったです。


ドラゴンさんがこちらへドスンッと足を踏み鳴らし歩いてきます。

動かない俺たちを排除しようとしているのでしょう、実際は恐怖とかで動けないだけなのですが。

ドラゴンさんの剛腕が降り上げられ、今まさに最後の審判が下されようとしています。


「くっ」

このような最後になるとは最後の一言がこれになるとは。


「うっ… 頭が痛い… これは… 何事だっ」

後ろでラピスちゃんが復活した?

違う、この言葉使いはラピスちゃんじゃない、ルビーか、ルビーよこの状況を何とかしてくれ頼む。

ルビーを見ると金髪ストレートだ、初回に見たツインテールじゃないので新鮮だ。


いきなり、ドラゴンさんが剛腕を下し、ルビーを見据えます。

「ノスフェラトゥよ なぜここに居る?」


ルビーちゃんが俺の陰から出てきます。

「レッドドラゴンか、久しいな」


えっ? まさかの知合いですか?

これは助かるフラグでしょうか?


ようやく、危機的状況から一時的に解放されたようなのですが、新たな火種を生む問題がそれこそ、生まれました。

バリッ バリッ バリリッ とか足元辺りから聞こえて来たのでそれは自然と目線を下に向けますと、驚きです、ドラゴン様の雛が孵ったようで、割れた隙間から私とお目目が合いましたよ。


「おおぅっ?」

突然の出来事で奇妙な声が出てしまいました。

数回このドラゴン様の雛さんは俺と向かい合ったまま、目を数回パチクリ パチクリさせてから、きゅーっ きゅーと鳴きました。


お母さんか、お父さんでしょうか、子供さんが今孵化して、元気に産声を上げていますよ?

当初私達を殺そうとした剛腕はこの可愛らしい子を抱き上げるのにだけ使っていただけるとありがたいのですが。


「ううぅんじゃ…」

なんとも言えない微妙な声を発しながら、頭を抱えるルビー、正直女の子が出す声では無い気がするがこの際は気にしない。


「おおおっ おおっ…」

ドラゴンさんもすすり泣く様な声を喉の奥より出しています。


卵を完全に破り、殻から、這い出て来たドラゴン様の雛さんはヨロヨロとした歩きですが俺の方へゆっくりとですが

近寄ってきます。

逆ですよ、向かう先は反対です、分かりませんか?


「きゅーっ!」

心の中の問いに返事をしてくれたのでしょうか?

意味は理解していなさそうです。


俺が一歩引くと雛さんは一歩ヨロヨロとしながらですが、近寄る。


予想が外れて欲しいのですが確実に大きな問題が発生したようです。

ドラゴン様の雛さんは最初に目が合った俺を親と勘違いしてしまったようで、姿、それも種族さえ違うというのに、刷り込みとは恐ろしいものです。


雛さんが俺の足元まで来ると、体を登ろうとしてきますが、ドラゴン様の手前何も出来ず棒立ち状態です。


「きゅー きゅきゅーっ」

ドラゴン様の雛さんにバリバリと足を掻かれながらも呆然と立ち尽くすしか出来ない俺。


そんな俺に対してルビーが親切に解説してくれる。

「予想はしていると思うが、生まれて初めて、目にした魔力のある者を親と

思い込むようで、この足元に居るドラゴンの雛は幼一を親と思っているようじゃ。


いい加減諦めてこの子を認知してやれ」

ルビーが若干茶化しながら、改めて残念なお知らせを俺に突き付けて来る。


俺の背中をルビーがポンポンと優しく叩いてくれる。

「これからは二児のパパだな… いや、私を含めると三児になるのか…

幼一、頑張れ 応援だけはしてるぞ?」



一番可愛そうなのが、ドラゴンさんである。

ようやく、現実逃避から帰って来たドラゴンさんは手を伸ばして雛を呼ぶが肝心の雛は逃げようとする。

「おおっ 私がお前の親だよぅ~ こっちだよぅ~

ほうぅ~らぁ~」

なんだか最後の方は凄く情けない声になってる。


雛さんはドラゴンさんの呼ぶ声と仕草と対照的に俺の足の後ろへ周り込むとプルプル震え出した。

生みの親に対して完全に怯えてるよこの子。


「きゅうぅぅ~っ」

凄い可愛そうなぐらい小声で無くドラゴン様の雛さん。


対照的に凄く残念そうに泣きながら鳴くドラゴンさん。

「ひぐっ なぜだ…っ ううっ ぅぅうぅっ…」

非常に情けない顔になってます。


状況を何とかしたいのですが、俺がドラゴンさんに何か言おうものなら、殺されそうで、

逆にドラゴンさんが動いても俺に対して何か恨み言を言いつつ殺そうとしてくると思いますので、

現状どうにも動けません。



忘れていましたが、ルビーさん、彼女が居ます、一応中立に近い立場で両者とも話が通じる唯一の存在です。

ルビーさん彼女なら何とかしてくれるはず、そう願います。


「あーっ

そのなんだ、レッドドラゴンよ」

そう言いつつ泣いて臥せっているドラゴンさんに近寄るルビー。


「お前の運が悪かったんだぞ

不慮の出来事だ、まあこれからどうするか考えようなっ?」

ドラゴンの頭を軽く叩きながら、言い聞かせる。


「うぅぅっ 確かに… ノスフェラトゥの言う通りか

我の子が人などに… くっ…」

ドラゴンさんが立ち上がる。


「質問がだが、この雛がお主を親と思うように、再度の刷り込みのような事は

出来ないのか?」

ルビーがドラゴンさんと交渉してくれている。


「無理だ 再度の刷り込みなど聞いた事が無い

試すのはいいが、雛の事を思うと、どうにも気は進まぬがな


それと、ノスフェラトゥよ 少し疑問に感じたのだが、そ奴はお前の眷属なのか?」

ドラゴンさんが改めて俺を睨んでくる。


正直怖くて、怖くて漏らしそうです。

「そうだ

ついでに恩人に当たる」


恩人がついでらしい、突っ込みを入れたかったがそんな雰囲気では無いのを百も承知なので

何も言わないでおく。


「一応分かっていると思うが、幼一を殺したり、傷付けるなどの攻撃をすると

お前の子が悲しむぞ?

それに、親を攻撃したものとして認識されてしまうだろうからな」

ルビーがフォローをしてくれる。


「ぐぅっ 確かに親と思っているだろう、その人間を

攻撃すれば、我が子は我を敵だと思うのは確かだが…っ だがっ」

物凄く睨まれ、さらにドラゴンさんの生暖かく、荒い鼻息が掛かりますが、ここはなんとしても耐えます。


「仕方がないか、現状を整理するぞ?」

ルビーが無い胸の前で腕を組みながら現状の再確認を行ってくれる。


肯くドラゴンさん。

「レッドドラゴンの子は誤って人間である、幼一を親と間違えた、

これは両者とも理解していると思う

次に、レッドドラゴンは実の子に親と認識されたいが再刷り込みは難しく、子も可愛そうなので

容易には出来ない点

幼一を親と認識している為がゆえにレッドドラゴンの子と離れ離れに出来ない点

上記の点が原因でまあ、レッドドラゴンが幼一を攻撃、または殺せない理由だな」

物騒な事を言いつつ、一旦一区切りを置くルビー。


「レッドドラゴン側で最大の理想は子に親と認識されて一緒に、空にある大陸に帰る事、これで間違いないな?」

レッドドラゴンに確認を取るルビー、レッドドラゴンもそうだと首を縦に振る。


少し考える素振りを見せるルビー。

「現状ではレッドドラゴン側の理想を鑑みると、理想の約半分は幼一がここに居れば叶えられるな」


両者の反応を見るルビー、その主張にレッドドラゴンさんは静かに肯く。

「確かにそこの人間がここに居れば我が子はここに居るだろうな

そうすれば我としては子と少しは関わりが持てるな

まあ、空のクラウドガーデンには人を生きたまま連れて行くのは難しいからな」


こちらをチラリと見てからルビーがこちら側の主張を話してくれる。

信用してるぞ? ルビー。

「次にこちら側と言うか一応、人間側の主張として…

レッドドラゴンの子が幼一を親として認識したのは偶然の産物な点

この場所で人間は暮らせない点だ、水や食料も無い岩山だからな

その他にも理由はあるが、妥協点としてはこの場所に定期的に両者が集うという案は駄目だろか?」


俺はこの場では何も言えないのでルビーに全て任せて静かに肯く。

ドラゴンさんの反応が気になりますね。

「そちら側の意見を汲むとそうなるな…

うーむっ 我が人に対して配慮せねばならぬとは…

だが、その人間が死ねば我が子が悲しむ、うぐぐっ…」


ルビーはドラゴンさんを見ながら説明を続ける。

「定期的にこの場所に集うとする、レッドドラゴンの主張だと一日ごとにここに

来いと言いそうだが、それは無理だと言っておく」


レッドドラゴンさんがルビーに詰め寄るというか顔を向ける。

「なぜだ! ノスフェラトゥ 理由を言え!」


少し首を振りながら答えるルビー。

「まず、この人間は私の眷属であるがゆえに私もくる必要性がある点

がある

それに、レッドドラゴンが何度も毎日のようにこの山に現れては人間達が騒ぎを

起こす点だ」


レッドドラゴンさんがルビーの言った問題点に言及する。

「人間如きが騒ぎ立てても、蹴散らせばよかろう?

お主らノスフェラトゥも人間如きに相手にはならぬだろう?」


ルビーが頭を横に振る。

「人間の進歩は早い、吾らノスフェラトゥも新しい武器と銀と言う弱点により

その数を大きく減らしたのじゃ

それとも、人間と戦いながら子と遊ぶのかレッドドラゴンは?」


俺と、ドラゴンさんの雛を見てから付け加えるルビー。

「それに、私と幼一、お主の子も危険にさらされるのじゃぞ?

目的が人間に懐いているドラゴンの子だと分かれば、それをその子の命を盾にされれば

レッドドラゴンとは言え何も手出しは出来ぬであろう?」


ぐぬぬと言った顔をするレッドドラゴンさん。

「どうすればよい良いのだ? ノスフェラトゥよ」


「基本は一週間に一度だ、人間の動きを見て様子を伺う

時間的には4~5刻が限度だな それ以上だと山に来た人間等に見つかる可能性が

高まるからな」


「ぐうっ それが限度か…」

悔しそうな顔をしながら話すドラゴンさん。


「レッドドラゴンがここに来るタイミングは日が沈み、夕闇が広がる頃が良いだろう

そうでないと朝昼は太陽の明かりで見つかり、夜は月明かりで見つかるだろうからな

先ほど時間的に4~5刻と言ったが、実際には太陽が沈み、月が登り切るまでの約1刻が

夕闇となり薄暗いからそれが現実的な時間になるのう」


かなりレッドドラゴンさんが不憫に思えてきましたよ、我が子に会えるのは一時間だけとか

まあこの空にあるのか分かりませんが、織姫と彦星の年に一度しか会えない伝説よりマシと言えますが。


「我は子に一週間に一度、それも1刻だけしか会えぬのか…」

凄く落胆しているドラゴンさん。

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