△誕生日
「冗談だ冗談」
玉座に座っている初老の男性は笑いながら2人に言う。
ガイドとブラウトはホッとするが。
「次期国王はワシの
ちょうど孫娘と同い年のようだしの」
「それも冗談ですよね?」
ガイドが恐る恐る聞いた。
「いや大真面目だが?
「そんな!本人達の意思は無いんすか!?」
「本人達の意思といっても、まだ子供でそういった選択は出来んだろう。それにこの国では珍しいことでは無いだろう?現にガイド、お主と今は亡きレリカ嬢もそうじゃないか」
「うっ、お言葉ですがクロスは何れこの国だけでは収まらない程の大物になるはずです!今から王という地位で満z「満足させないよう教育すればいいだけだ」っ!」
「それにこの国では収まらないと言ったな?
たしかにこの世界を統べるだけの力を得るかもしれん。
ただし力だけあってもダメだというのは主らも知っておろう。
強大すぎる力は精神を
この子は人類の希望と絶望、どちらにもなり得るのだ。今からでも厳しく
◇◆◇◆◇
「よかったんすか?」
「何がだ?」
「5歳児を厳しく教育することっすよ。
子供のうちはのびのびと過ごした方が絶対に良いっす」
「なあ俺達は何故、王様に報告しにいった?」
「えっ?」
突然の問いかけに固まるブラウト。
しばらく考えて口を開いた。
「それはクロス君が特異性を報告するためじゃないっすか?あの力は異常っす。王様の言った通り人類の希望にも絶望にもなる得るっすから」
「本当にそうか?
俺達は『厳しく
確かにクロスの力を報告する義務はあったが、それだけだ。俺達は自分でクロスを厳しい道へ進ませることが怖かったんだ。
王様はそれを見抜いていたからこそ、次期国王にするという茶化しから入り教育の話にもっていったのだろう」
「……そうっすね」
ブラウトは自らの頬をビンタした。
「じゃあクロス君の格闘系の修行はおいらに任せるっす!」
「ああ頼む。魔法の方は俺が直々に叩き込む」
ガイドも自分の頬をビンタし気合を入れた。
「おおっ闇帝が本気モードっすか?
おいらも負けてられないっすね!
泊まり込みで特訓の手伝いするっすよ!」
◇◆◇◆◇
時は少し遡りレイトは今ケーキ作りをしていた。
理由は言わずもがな今日がクロスの誕生日だからだ。
「後は先程作られたクリームを生地に塗ってから苺などで飾り付けをするのです」
「うん!わかったよ!」
「それにしてもレイト様は本当に心優しいですね」
「えぇ、勉強が終わったと思ったらケーキの作り方を教えてくれなんてとても立派になられました」
「や、やめてよぉ」
メイド達の言葉に照れながらも手を止めないレイト。
仕上げの部分だけあって直ぐにケーキは完成した。
「よし!出来た!」
少し不恰好なケーキだがレイトは満足気だ。
「じゃあ今日の夜ご飯の時に出してね!」
「かしこまりました」
◇◆◇◆◇
「レイト君は最近どうっすか?」
もうすぐ家に着くという時にブラウトが尋ねた。
「あいつは普通の子供と同じだ。
まだ魔法の修行も出来ない魔力量だから、今は知識を蓄えさせ運動をよくさせるようメイド達に言っている」
「そうっすか……あっ家が見えて来たっすね」
「早速修行部屋に連れて行くか」
ドアをガイドが開けると連絡もしてなかったのにメイド達が既に佇んでいた。
「うわあ流石七大貴族っすね!
うちも一応名のある名家っすけど、こんなにもメイドの教育は行き届いてないっすよ!」
「今からクロスの修行を始める、晩飯の時間になったら修行部屋に放送をかけろ」
「かしこまりました」
「当主モード全開っすね」
「うるさいぞ」
そして魔法で眠らされてるクロスをガイドが抱え3人は東京ドームぐらいの広さはありそうな部屋についた。
「んー広いっすねぇ」
「さて、クロス起きろ!」
「むにゃむにゃぬへへ」
「「(かわいい)」」
ペチペチと顔を叩いて起こそうとしたが予想外にかわいい反応だったので2人は固まった。
「っ!今からこんなんではダメだ!
『ミニサンダー』発動!」
ガイドから発せられた小さな雷がクロスを襲った。
「ムギャっ!?」
クロスはその痛みで飛び起きた。
「起きたかクロス」
「あ、父さんとブラウトさん。
あれ?僕なんで寝てたんだ?」
「そんなことは置いといて今から魔法の修行を始めるぞ?」
クロスは元は日本人、魔法など現実にはない存在なので心が弾んだ。
「じゃあ魔法について簡単なおさらいだ。
魔法にはランク付けがあるのは知ってるな?」
「はい!初級、中級、上級、最上級です」
「その通りだ。では次に魔法の発動方法だが大抵の場合は魔力を
「最初のころは魔法のランクを言ってから魔法名を言ったり、魔法のイメージを言葉にするといいっすね」
例えば、とブラウトは続けた。
「全てを切り裂くカマイタチよ敵を切り刻め初級魔法『カマイタチ』発動っす!」
すると緑色の三日月のような刃がブラウトからガイドに向けて飛び出した。
「貴様!」
だがソレがガイドを切り裂くことはなく、ガイドから出た黒紫色の球体と相殺した。
「おぉー!」
「今のガイドさんみたく頑張れば
ちなみに今のはダークボールっていう闇属性の初級魔法っすね」
「クロスには何れこんな魔法も覚えてもらう。
我が敵を滅ぼせ『ダークホール』発動」
ブラウトの足元に巨大な黒紫色の楕円が現れた。ブラウトは吸い込まれるかのように沈んでいく。
「ちょっ!?」
それを数百ものカマイタチなどの魔法で破壊をし、何とか助かったブラウト。
「何するんか!靴底が完全に消滅したじゃないっすか!」
「さっき突然魔法を放ってきたやつが何を言う」
「あの程度ならガイドさんなら対処は余裕っしょ!
それに万が一当たったとしてもそこまでの怪我はしないように弱めで発動したんすよ!ダークホールなんて最上級魔法を!しかも魔力をあんなにこめて殺す気っすか!?」
「あの程度なら風帝なら余裕で対処出来るだろ?それとこんな不毛な言い争いは止めてクロスの修行に入るぞ」
「アンタは昔っからそうっす!
おいらの可愛いイタズラを数十倍にして返し「学習能力のない、お前が悪い」ぐぬぬ!」
「さあ、あのバカはホッといて先ずは体内の魔力を感じる修行を始めるぞ。今から俺が魔力を流す、その感覚を覚えるんだぞ」
「はい」
「いい返事だ。いくぞ?」
ガイドはクロスの頭に手を乗せた、そこから黒紫色の薄い光がクロスを包みこむ。
「この薄い光は魔力だ。
魔法に変えなければ人体には無害で人によって魔力の色は違う。魔力のコントロールが上手くなれば純粋な魔力の塊を飛ばし、そこから魔法に変えたりすることが出来るっと、そろそろいいかな?」
クロスの纏っていた薄い光が消えた。
「じゃあ、さっきの感覚を思い出して同じようにしようとするんだ」
「ぐぬぬ……」
力んで魔力を出そうとクロスは頑張るが全く出る気配がない。
「これは出来るようになるまで1ヶ月かかる人もいるから焦ることはないっす」
「数分毎に魔力を流すから感覚を研ぎ澄ませるんだぞ」
◇◆◇◆◇
「旦那様お食事の準備が出来ました」
修行部屋にメイド長の声が響いた。
「クロス今日の修行はお終いだ」
「はい」
結局魔力を流すことが出来ず残念そうな顔をしたがクロスは了承した。
◇◆◇◆◇
「久しぶりっすねレイト君。
会ったのは4年ぶりっすね」
「あっブラウトさん!」
「覚えててくれて嬉しいっす」
その日はブラウトのおかげで賑やかな食事だった。
「じゃあクロスは風呂に入ったら早く寝るんだぞ?」
「はい」
「じゃあみんなおやすみっす。
レイト君も早く寝るっすよ?」
「あっちょっと待って」
「「「ん?」」」
全員の食事が終わって3人が部屋に行こうとするのをレイトが止めた。そしてメイドが不恰好なケーキを持ってきた。
「クロスは今日誕生日だよね!
クロスのためにケーキを作ったんだ!
ちょっと形が悪いけどメイドさん達に教えて貰って全部自分でつくったんだよ!」
「わあ!おいしそ「ダメだ」……えっ?」
クロスがケーキに伸ばした手をガイドが止めた。
「これからクロスは身体が出来るまで必要な栄養以外は取ってはいけない。ケーキも当然ダメだ」
「そ、そんな。せっかく兄さんが作ってくれたのに」
クロスは自分はまだ精神年齢から耐えられないこともない。しかしレイトは子供、耐えられないと思った。
「クロス!いいな?」
「は、はい」
ガイドの威圧感で何も言えなくなったクロス。
そしてガイドはレイトの方を向いた。
「俺は甘い物が好きじゃないし、お前が自分で処理しろ」
「はい……」
2人は自室に向かっていった。
「んっ見た目は少し悪いっすけど美味しいっすね!
ガイドさんはあんなんだけど気にしちゃダメっすよ!
あっメイドさん達も一緒にどうぞっす!レイト君、自分の分を取らないと全部おいら達が食べちゃうっすよ?」
「あっダメだよお!」
こうしてブラウトの機転により何とかレイトの心の傷は軽くすることが出来た。
そうあくまで『軽く』……
こうして2人の運命もまた少しずつ狂い出す。
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