△5年後
クロスが産まれてから5年の月日が経った……
「ふぁああ、ん?ここはどこだ?」
ズキッとクロスの頭に電流が流れたかのような痛みが走った。
「んぐっ!があああああ!」
「大丈夫ですかクロス様!?」
その叫びを聞いてか若いメイドがクロスの部屋に入り手を握り何度もクロスを呼びかけた。
メイドは他のメイドも呼ぼうとしたときクロスは落ち着きを取り戻した。
「はあっはあっ大丈夫だよメイドさん」
「クロス様大丈夫ですか?病院に行きますか?」
「いや、本当に大丈夫だよ。それより今のことは誰にも内緒にしておいてくれない?今日は僕の誕生日だし!」
「クロス様がそう仰るなら……ただし体調の方が悪いと思いましたら私に言ってくださいよ?」
「はーい」
「ではいつも通り朝食の準備が出来次第、呼びに参ります」
「うん、わかったよ」
メイドは部屋を出て行った。
「まさか産まれてから今までの記憶が一瞬でフラッシュバックするとは……あぁ頭痛いし気持ち悪い」
クロスは神に詐欺られたような気持ちになった。
◇◆◇◆◇
「クロス、今日は何の日かわかるな?」
「はい父さん。
今日は魔力検査の日です」
「そうだ、そして今日から魔法を叩き込むことになるだろうから覚悟するんだぞ?」
「はい」
一見すると仲の良い親子のように見えるが……
「あ、あの父さん」
「むっ?なんだ?」
「僕にも魔法を教えてください!」
「お前は駄目だ」
クロスの兄、レイトに対しては『お前』呼ばわりで明らかに差別しているのだ。
「なぜですか?」
「それはお前にはまだ過ぎた力だからだ」
「そんなぁ」とシュンとして呟くレイトを見てクロスは父のガイドが転生前の親と重なり嫌悪感を抱いた。
その後は交わす言葉もなく食事は終わった。
「1時間後に検査を行うギルドに向かうから着替えてきなさい」
「はい」
トテトテとクロスは自分の部屋へ向かった。
程なくしてガイドも自室へ向かった。
そしてレイトとメイドだけが残された。
「レイト様、気を落とさないでください。
旦那様は説明不足ですが、レイト様を気遣ってあのように申したのです」
「うん、大丈夫だよ!
僕が魔法の練習をしちゃいけない理由ぐらいわかってるよ。魔力が足りない子供が魔法を発動させようとしたら魔力が枯渇して死んじゃうんだよね?
父さんに駄々を捏ねただけだよー」
9歳の子とは思えない言葉の後に子供らしくニシシと笑ったレイトにメイド達は心を奪われた。
「坊っちゃま!今日は何をして遊びましょうか?」
「僕はもう9歳だよ!勉強しよ!」
この世界には小学校という概念がないが学園はある。
学園には14歳から18歳まで入学出来、4年で卒業するようになっている。
それまでの学問は基本的に家庭で行われるので、貴族とそうでない者とではどうしても学力に差が出来てしまうのが最近では問題に上がっている。
「はい、レイト様」
◇◆◇◆◇
「では行ってくる」
「はい、旦那様」
クロスとガイドは手を繋ぎながら家を出た。
「ねえ父さん?」
「なんだ?」
「なんで兄さんと僕とで違うの?」
「……それはクロスが特別だからだよ」
クロスがその言葉で納得出来るはずもなく内心嫌に思いながらも手を繋ぎ歩いている商店街に出た。
「久しぶりにこんな大勢の人を見たな」
と父に聞こえないよう呟いた。
商店街など人が大勢集まる場所に大貴族の息子であるクロスが連れて行かれることは今までなく初めてだった。
そこから2分ほど歩いて大きな建物の前に着いた。
「着いたな」
「うぅクチャいよ」
朝だというのに酒の匂いが凄いためクロスは鼻をつまんだ。
「我慢するしかない、じゃあ入るぞ」
「あれ?ガイドさんじゃないっすか?
あっその子の検査っすね?」
中に入って早々に金髪でチャラそうな男がガイドに話しかけた。
「ああ、話が早くて助かるよ」
「にしても内包する魔力量が半端ないっすね。
視線がめちゃくちゃ集まってるじゃないっすか」
その言葉を聞きクロスが周りを見てみると確かに沢山の人が見ていた。
「じゃあ立ち話はここまでにして検査室に行くっすか?」
「そうだな」
近くにあった階段を下り検査室と書かれた部屋に3人は入った。
「ガキンチョには紹介がまだだったすね?」
「おい、気安くガキンチョというな」
「だって名前知らないっすし」
「僕はクロス=ダークです」
「先に自己紹介されてしまったっすね。
おいらの名前はブラウト!
風帝兼このギルドの長っす」
「えっ風帝って戦時中なら王様と同等の権力をもってるあの帝様ってこと?」
「その通りっす」
「クロス、こいつには様付けなんてしなくていいぞ」
「そりゃないっすよガイドさん!」
「ほう?では貴様が逃した犯罪者の処理や不祥事を揉み消してやったのは誰だったか忘れたか?」
「うっその節は本当にすみませんでしたっす」
土下座しながらガイドに謝罪をするブラウトを見てクロスはやっぱり大人は汚いと思った。
「さて早く検査をしないか?」
「了解っす」
そういって部屋に置いてあった水晶玉を2つ持ってクロスの前に出た。
「右の水晶は血を垂らせば、魔力の質と量が一気に測れる優れものっす!左の水晶は属性がわかるっす!
魔力の質は魔力のコントロールしやすさとかに関わる先天性のもので努力でどうにかなるものじゃないっす!まあコントロールは努力次第でどうにかなるから安心するっす!
魔力の量と属性はそのまんまっす!」
そう言い終わるとブラウトは懐からナイフを取り出しクロスの足元に置いた。普通の子供は注射器で血を抜き注射器から血を水晶に垂らすのだが貴族は肝っ玉も大きくないといけないということで小さいころから度胸を試されるのだ。
「ここからは度胸試しっすよ」
しかしクロスの精神年齢は17歳ナイフを拾い親指を切り血を少し垂らした。少し顔を歪めたがこれから自分がしようとすることにはこれ以上の痛みが伴うだろうから声も出さずに耐えた。
「おおっさすがっすね」
驚いた風に言うブラウト、それもそのはず5歳児の子供ということでナイフで度胸を見せても切った直後に泣いてしまうからだ。
そのままクロスはそのまま2つの水晶に血を垂らした。
「あっ測定中は光るから気をつけるっすよ」
いうが早いか水晶から光が溢れてきた。
「この馬鹿者!」
「すみませんっす!」
「目がぁ目がぁ」
「大丈夫かクロス!?」
ガイドはしゃがんでクロスの肩を掴み安否を確認した。
「う、うん大丈夫だよ。
一瞬だけだったから」
クロスは素で言ってみたかったセリフの1つを言えて少し満足気だ。
「あ、光が収まったっすね」
「……ブラウト後でお仕置きな」
「さ、さあてクロス君の魔力量と属性は何かなー?」
クロスはドキドキしながら水晶を見た。
魔力量と質がわかる水晶には測定不能と白色で書かれており、属性がわかる水晶には『闇』『光』『重力』と書かれていた。
「こ、これは」
絶句。あのチャラオーラ全開のブラウトが絶句した。ついでにガイドも固まった。
それなりの猛者となれば相対する相手の魔力量を術を持つが、それでも感覚的で魔力の相性により過大評価したり過小評価してしまうものだ。
ブラウトとガイドは当初10万ぐらいだろうと思っていたが実際は測定不能という底知れない魔力量。
いくら相性が悪かったとしてもそこまで過小評価してしまうことは通常ありえない。
そして質はまさかの最低ランク。
「あの父さん?ブラウトさん?」
「あ、ああ、すまなかったっすね!
【風の癒し】発動っす。これで傷は治ったっす」
ブラウトの言う通りクロスの傷は無くなっていた。
「ありがと」
「ちょっとクロス君はここで待っててっす!」
「……そうだなクロス少し待っててくれ」
「はい」
クロスはやっちまったと一瞬思ったが、検査前にわかっていてもどうすることも出来ないことだからと開き直った。
◇◆◇◆◇
「『防音結界』発動っす」
「ああ、すまない」
「ところであの子は何者っすか?
本当に人g「当たり前だ!あの子はレリカが腹を痛め命を賭して産んだ正真正銘私の子だ!」ごめんなさいっす」
ブラウトのクロスに対する評価は本当に人間なのかどうなのか、それはいっそ化物だと言われたら納得出来るデタラメさだからだ。
「しかしアレは異常っす。圧倒的な魔力量とそして失われたはずの属性が顕現するなんて……
めんどくさいっすけど、王様に報告しにいくっすか?」
「まあ仕方ないな。
クロスは少し荒っぽいが俺の魔法で眠らせて連れて行く」
「クロス君を次期国王にするとか言い出しそうっすね」
「ははっ冗談は止めてくれ」
◇◆◇◆◇
「では、この子を次期国王にする」
「「……」」
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