○△死後、神に出会えば転生フラグ?
ん?ここはどこだ?
というか何も見えないし、聞こえない、話すことすら出来ず、匂いも、熱も何もかも感じない。
「それは君が死んでるからさ」
男か女か判別つかない声が響いた。
「んーそのままじゃ何かと不便そうだから肉体を再生してあげる」
言うが早いか僕は、僕に戻ったという不思議な感覚に陥った。 何も見えなかった目には灰色の壁と黒髪赤目のイケメンが見えた。
「やあ、俺の名前はゼール。
唯一神、死神、邪神、怪人、善神、神王、悪神、廃人、粉塵、疫病神、風神、雷神、魔神、悪魔とか色々な呼ばれ方をしている神だ」
「はあっ……」
いくつかボケが混じってる気がするが無視だ。
「反応薄いね君」
「あっ!」
「ん?どうしたの?」
これはもしかしてWeb小説とかでよくある転生フラグというものか?
「うん、その通りだよ」
「心を読んだ……だと!?」
「まあ神だしね」
プライバシーはないのか……
「ははは!神の前でプライバシーも何もあるわけないでしょ。君が産まれてから、これまでの黒歴史とかもその気になれば簡単に知ることが出来るよ。
あれ?信じてないな?じゃあ黒歴史を1つ君が13才の頃だ。君は犬の糞を踏んで泣いて、その後」
「疑ってすみませんでした!貴方様は神様です!」
僕は何の迷いもなく土下座をした。
「いやあ最初は反応が薄くてツマラナそうな人間だから転生の話も無しにして地獄に落としてやろうと思ってたけど大丈夫そうだね」
職権乱用すぎでしょ!
「俺が君の心が読めてることを忘れた?」
「すみませんでしたあ!」
僕は頭を地に擦り付けた。
「あはは!大丈夫だよ、もう充分君が面白いってことはわかったから頭をあげなよ」
「はい…… で、僕はどうしてこうなってるんでしょうか?」
転生フラグが本当だということはチートとか貰えるのかな?
「チートとかはタダでは上げられないよ」
「条件付きですか」
そういえば邪神とか呼ばれてるんだよな。
「今、俺の力が封印というか制限が付いていてさ地球とは違う魔法のある世界に自力で干渉できないんだよ。
んで、条件の方なんだけど。
その世界に行って俺の力を封印から解く……っていうのは無理だろうから頼まないけど。
俺の仕事の1つ有害な主人公体質の持ち主の殺害を頼まれてくれるかい?」
主人公体質の殺害って完全に悪役じゃないか。
「ノンノン、『有害な』って言ってるだろ?
その世界は、軽く地球の10倍はある大きさでさ世界中で戦争してたりするんだ。
それでたまに主人公体質のやつが粋がって戦争を悪化させたりして人間の観察っていう神本来の仕事が、それにともなった人間の減少で邪魔されてるんだよね」
人間の観察が仕事なんだ。
「それで神の王直々に全世界のそういうやつらを殺害しろって仕事を受けたんだ」
「全世界?」
「うん、普通は神1人につき1つの世界に対する仕事を言い渡されるんだけど、俺は優秀だからさ!
神の王からの信頼も厚くて全ての世界に干渉して仕事をするよう言われてるの」
「力は神1倍あるのに他の神や部下の天使の盗撮とか変態なことばかりしてるから、そんなことさせないようにやらされてるんでしょ。
見栄を張るのはやめて下さい」
神様の醜態を言い切った女の子の声が後ろから聞こえてきた。
「なっルック!」
神様の慌てた声に僕が振り返ると僕が投げ飛ばした少女がいた。
「どうも私は神様……ゼール様の使い、所謂天使です」
「あ、腕とか大丈夫だった?」
「はい。 天使ですから人間より頑丈なので」
そうドヤ顔をしながらボディビルダーのようなポージングをとる少女は凄く可愛くて本当に天使だと思った。
「オッホン! じゃ、話を少し戻すよ?
俺の仕事は有害な主人公体質つまり『主人公補正』がかかってるやつを殺害すること、アレはある程度名誉ある死じゃないと殺せないんだ。
例えば狂ったやつが致死量の毒を盛っても、未知の抗生物質が出来て無傷とかね?全く厄介な体質だよ。
そこで考えたのがピンチの少女を助けた際に死ぬっていうやつ」
「今回もいつも通り私に触れた瞬間、身体を動けなくする魔法をかけていたので事故死させる予定でした。
ちなみに運転手は死刑にされてもおかしくない悪人なので御心配なさらずに」
今回も?俺は主人公補正なんて持ち合わせてないし、なるほどアノ疫病神を殺すためか。
あと死刑にされてもおかしくない悪人って……
「うん、その通りだよ。でも今回はちょっと彼の主人公補正を見誤っちゃってさ。 まさか彼は勇者召喚に助けられて君が犠牲になるなんてね」
「そこで普通は禁止されてる死者の復活を『神の王の仕事を手伝う』という建前で神の使徒として転生させることにしたんです」
「まあ君が死んだという記録が刻まれてしまった地球には頑張らないと戻れないけどね」
戻れることは一応は可能なんだ。
「まあそういうわけで有害な主人公体質……君が疫病神と呼んでいる彼の殺害を頼まれてくれれば君は復活してチートもプレゼントできるんだけど」
「断ったらどうなるの?」
「ZI・GO・KU・Iぐは!」
神様は少女がいつの間にか持っていた木刀で殴られた。
主従関係的に大丈夫なのか?
「ゼール様おふざけはやめてください」
「ご、ごめんよルック。ちゃんと説明するよ。
断った場合、記憶は全て消え失せて転生し第二の人生が始まるよ。 そのときはこの俺が主人公並みに幸運な人生にすることを約束する。
まあ神様からの命令ということで大義名分を掲げ今まで恨んで来た彼を殺せてチートのおかげで金銭面や肉欲も簡単に満たせるし断る理由はないと思うけど……
君はどうする?」
僕は……
「うん、どんなことになるかわからないけど……
僕やってみるよ!」
◇◆◇◆◇
さてここで少し時を戻して視点も変えてみよう。
誰にだって?
そんなの疫病神扱いされてる彼に決まってるじゃないか。
「黒周が死んだ……黒周が死んだ?嘘だ!
黒周は生きている!」
黒周がいたのと全く同じような空間でうつ伏せに倒れていた疫病神はブツブツ呟いた後、突如大声を上げてガバッと起きた。
疫病神の目の前に美女が顔を赤らめ立っていた。
そんな彼女の存在よりも今は黒周だと思い立った疫病神は周りをキョロキョロ見だした。
「黒周?どこにいるんだい?」
美女は突然のことだし戸惑うのは仕方のないことだと彼を見つめていた。
「あの!」
美女は疫病神の肩を叩き無理矢理意識を自分に向かわせた。
「ん?なに?」
多少イラついたように疫病神は美女の話に耳を傾けた。
「落ち着いて私の話を聞いてください」
美女の必死な表情に疫病神は落ち着きを取り戻した。
「うん、わかったよ。
その前に君の名前を教えてくれる?
俺の名前は
「リースです」
「うん、リースいい名前だね。
よろしく」
「は、はい。
では説明させていただきます!
私は貴方の住んでいる世界とは別の世界の神です。
ここは貴方の住んでる世界と私の世界の間の空間です。
現在私の担当する世界を魔王の脅威から守っていただくべく異世界から召喚させていただきました!召喚される前に魔方陣が下にあったはずです」
「うん、確かにあったね」
こんな話を既に全て信じ真面目に話を聞いている疫病神。
「貴方の側にいた黒周という方はトラックに轢かれる寸前で貴方の召喚に巻き込まれ無事です」
「それって本当!?」
当然嘘だ。この神は少しでも疫病神のモチベーションを上げるために言ったのだ。
「えぇ、しかし魔方陣から離れていたため私の世界のどこかへ先に行ってしまいました。私の力では残念ながらどこに彼がいるのかはわかりません。
最悪の場合、もう死んでいる可能性もあります」
「大丈夫だよ。黒周は簡単に死ぬはずないし、俺がこれから行く世界に黒周がいるなら、すぐに見つけ出して助けてやれる」
根拠のない自信でそう言い張る疫病神。
「あまり私の世界のことなど話をしていないのに助けてくれるということですか?」
「うん、どんなことになるかわからないけど……
俺やってみるよ!」
その決意表明は黒周と重なった。
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