○☆暗闇生活

魔国に来てから3日たった。

あれからずっとカイオスと魔法抜きで戦っている。

ごはんや寝る場所も普通で何だか安心した。


「ふっ!はっ!ほっ!」


「……」


「おらあっ!なっ!」


刀を取られた。


「……やめだ」


カイオスは刀を僕に返してそう言った。


「えっ?」


「最初に会った時に俺はお前の中に何かを感じた。戦っていれば、それが引き出されると思ったが全然ダメだ」


「……そんなこと言われても」


「お前、何か悩みでもあるのか?

急に魔国に連れてきた戸惑いとかよ」


「いや、特に何もないけど」


魔国には近いうちに来ようと思ってたしね。


「心ここに在らずって感じだ。

悩みとか自分でわかっていないなら丁度良い場所がある。転移するから手を出せ」


僕が手を出し転移すると真っ暗で何も見えない空間に来た。


「ここは?」


「ここは昔使われていた精神修行のための空間だ。1週間分の水はどこかにある。

俺がいなくなった瞬間から魔力、つまり魔法が使えなくするけどパニックになるなよ?

じゃあ1週間経ったら迎えに来るから死ぬなよ」


「えっ?」


先ほどまで声がしたところを探るがカイオスはいない。


「やばいな、水を見つけなきゃ……」


水を探すために『ライトサークルサーチ』を使おうとしたけど、カイオスが言った通り発動しなかった。


僕は水を得るために歩き出した。


◇◆◇◆◇


……お腹空いたな。

一体、何時間経ったんだろう。

そうか戦ってる途中で来たから、昼ごはんとか食べてないからこんなにお腹が空いてるんだ。

喉も渇いてきたな。


水を探さなきゃ。


◇◆◇◆◇


……知らない天井だ。

いや、真っ暗だから天井なんて見えてない。


どうやら僕は寝ていたらしい。


さて水を探して歩き始めないと。


◇◆◇◆◇


既に喉はカラカラ、足もフラついてきた。


アレから僕は気絶という名の睡眠を何回したため、時間感覚は完全に狂った。


「……ははっ」


「誰だ!?」


何者かの笑い声が聞こえた。

僕はその声のした方向、真っ直ぐ前方へと歩む足を早めた。

しかし何もない。


◇◆◇◆◇


「そんなふうに水を探しても無駄だぜ。

もう気づいてるんだろ?ここに水なんかないって、お前は騙されてるんだって」


笑い声を聞いてから段々と声が大きくハッキリ喋りかけてきた。

声のする方に歩くがやはり何もない。

きっと。この声は僕が作り出した幻影なんだ。


「おいおい無視するなよ」


水、水はどこにある?


「はぁっ。お前も薄々気づいてるだろうけど既に1週間は経ってるぞ」


……


「おっようやくちゃんと俺の言葉が届いたな?」


「だ……ぉま……ぇ」


「誰なんだお前」と言ってるつもりだが喉が渇きすぎて声が出ない。


「ははっ無様だな!もっと早く俺の声を聞き入れていれば楽になったのに!

さて、じゃあ俺も姿を見せてやるか」


目の前に同じぐらいの背丈の男が現れた。

なぜか全身が薄っすら光っていて顔は黒いもやがかかったかのように見えない。

男と判断したのは声からだ。


「さて、お前は生きたいか?」


何を言ってるんだ、この男は。

当然、生きたいに決まってるだろ。

口に出そうとしたが男の声で遮られた。


「それは嘘だ。

お前は別に死んでもいいと思ってる。

転生してから、いやトラックで轢かれてから自分が死んでも誰にも悲しまれないし、今この時も長い夢か何かだと思って本気で生きていない。


だから魔物を簡単に殺せたり、人にかなり近い魔族を躊躇なく殺そうとし、魔族にノコノコついて行きこんな状況に陥っている」


僕はドキッとした。

それは僕が考えることを放棄してたことの核心に迫ることをズバズバ言われているからだ。


「口に出さなくてもわかるよ。

だって俺はお前だから」


◇◆◇◆◇


クロスが居なくなってから3日が経った。

先生達に無理言ってクロスの部屋に入れて貰ったけど誰も居らず。

紙だけが残されていた。

その紙は何かの計算に使ったらしく居場所のヒントにはならなかった……



「……私のせいだ。私が転移魔方陣を落とさなければ」


「サラちゃんのせいじゃないよ!

だって門番さんもクロスが帰って来たのは確かだって言ってたじゃん!」


依頼をやった次の日、学園に来てないクロスを心配して門番に聞きに行ったから、これは間違いない!

けど、そのときは疲れてて寝坊から学園を休んだと思ったんだけど……


「……うん」


ねぇクロス、どこに行っちゃったの?

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