第17話 事情聴取

 県知事の西根伝蔵が県警刑事・藤島周平の事情聴取を受けていた。


「ご存知かと思いますが、今日は午前中、山狩りがありましてね。こんな日にわざわざご足労願えてありがとうございます」

「山狩りだったとは知りませんでした」

「…そうでしたか」

「犯人の早急な逮捕を願っています」

「犯人と断定をしているわけではありません」

「今日お呼びになったご用件は何でしょうか?」


 弁護士の加賀谷が口を挿んだ。藤島がゆっくりと目をやると加賀谷の目は泳いだ。藤島は徐に西根伝蔵に向き直った。


「昨年末から何度か、鉱山跡を精力的に現地視察なさってますね」

「それが何か?」

「どういった目的があっての事か、お話頂けませんか」

「どういったもこういったも公務の一環ですよ」

「どういった公務でしょう?」

「ご質問の意図が分かりませんが…」


 加賀谷がまた口を挿んだが、藤島は言葉を被せた。


「核廃棄物の処理場に、阿仁六鉱山の廃坑跡の再利用を国に提供すると言う噂について、お聞きしたいのですがね」

「私には誰がどんな戯言を言っているのかさっぱり分かりません」

「戯言ですか…」

「確かに廃坑跡は歴史のあるものですので、何かに再利用できればという事で現地視察は致しておりました。阿仁地区は美しい自然環境が唯一の観光資源ですので、核廃棄処理の地などという事になれば、観光という観点からは全ての可能性が断たれてしまいます。私が知事の間は、住民の皆さんのお気持ちを裏切るような事は決してするわけがありません」

「では、もう一度お伺いしますが…ここに来て、廃鉱跡の度重なる現地視察の目的をお話頂けませんか?」

「ですから、阿仁六鉱山の観光資源としての再利用という観点からの現地視察ですよ。阿仁地区は、平成の市町村合併以前は財政破綻末期状態でしてね。火葬船で急ピッチの財政巻き返しが進んでいるものの、合併以前の負の遺産が重く圧し掛かっていることに代わりはないんですよ。ですから火葬船の後押しとして、その阿仁地区に点在する六箇所ある廃鉱跡を、セットで何とか観光資源に再利用できないものかという声がありましてね」

「ほう…声ですか。どこからの声でしょう。住民の方々からとか…」

「それは、まあ…様々な方面からの…」

「例えば政府とか?」

「政府がいちいち地方の小さな自治体に物言う程、暇ではないでしょう」

「そうとは限りませんでしょ。地方創生の実験特区として、かなり期待されてるんじゃないですか? そういえば、過去にもその財政破綻を穴埋めしようとした村長がおりましたね。一時は合併の対象でもあった隣村の事ですから御存じのはずだと思ったのですが…」

「・・・・・」

「ご存知ですよね、杉神村での一件…」


 杉神村はかつて阿仁鉱山の御用木(杭木)の産地であり、宿場として栄えた旧・阿仁町の西方に隣接する、細長い山間の村である。現在に至っても、広大な森林は先祖の残した豊かな遺産である。平成の町村合併に於いても、杉神村はその森林資源を理由に合併には応じなかった。しかし、予想だにしなかった木材価格の急落によって事態は一変し、村の財政は暗礁に乗り上げてしまったのだ。

 十年前の夏、杉神村の小学校体育館で、記者たちを招いて公開の記者会見が行われた。住民の殆どと村議全員が集まる一大事だった。たどたどしく村長の松橋誠一郎は話し始めた。


「予てより、村民の皆様にご心配をお掛けしておりました核廃棄物の処分場誘致の件に関しまして、杉神村としましては、政府への誘致の件は白紙にさせて頂きます。村民の皆様にご心痛をお掛けしました事を、心からお詫びを申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」

「今後、状況が許せば再び応募するという事はあるんでしょうか?」

「それはございません」

「断念に至った理由は何でしょうか?」

「理由はいろいろありますが…知事の拒否権の行使が最終的な結論です」

「知事が拒否権を発動しなければ、核廃棄物を受け入れたという事ですか?」

「住民の意見は重要ではなかったというふうにも受け取れますが…」

「そういう意味ではありません。どうか、これ以上、村民の不安を招くような質問はご勘弁下さい」


 村民に混じって会見を傍聴していた前村長の高橋恒雄が立ち上がった。


「村民の不安を招いたのは、報道ではなく村長のあなたでしょ! 村を独断で国に売ろうとした事に対して、どう責任を取るつもりなんだ! 即刻辞任すべぎだべ!」

「高橋さん、あんたは前の村長だ。私が高レベル放射性廃棄物の最終処分場の誘致を検討せざるを得ない原因がどこにあったがなんて、あんたが一番よくお分かりでしょ。皆様もご存じのとおり、村政の運営には20億円規模の予算が必要です。今までに村の借金はもう倍以上の50億円にも膨れ上がっているんだ。それは誰の責任ですか? 私だけの責任ですか? 私が辞任すれば解決する問題ですか? 50億の赤字はこれまでの村政の箱モノとばら撒きのツケが膨らんだものです。誘致断念がどういうことか…明日からまた村民の皆様に返済の苦しみを強いる事になるんです。苦渋の選択だったんです。しかし断念に至った以上は、今後、村民の皆様には多大のご理解を頂かねばなりません。日本国民である以上、放射性廃棄物の処分場誘致には誰かが手を挙げねばなりませんでしたが、我が杉神村としては、断念致したという事です。財政再建にはこの上ない有効手段と考えておりましたが、改めて子孫の将来を考えると、実に愚かな選択であったと反省も致しております。その事に気付かせてくれた村民の皆様には、何とお礼申し上げていいか分かりません。私は辞任より先に、まだ成すべき事があると考えております」


 村民の冷たい視線に気付いた前村長の高橋は、力なく椅子に掛けた。そのまま公開記者会見は閉じられた。


「先生は松橋村長のご親戚筋にあたられるとか…」

「それが、何か?」


 藤島の目が一瞬光った。


「最終処分場の誘致に関して、松橋村長の意志を受け継ごうとしてもおかしくはない」

「何を仰りたいのかよく分かりませんが、政治の世界では親戚筋も先祖も孫もありませんよ。国の為に己は如何にあるべきか、自らが信じた道を進むのみです。私は、拒否権を発動した前知事と同じ考えです。市の財政は処分場の誘致などに頼らなくても、忍耐強く時間を掛ければ、火葬船で十分に建て直しが可能であると考えています」

「それも一過性のものではありませんか…早い時期に次の財源をと考えておられるとしても不思議な事ではないと思いますが…」

「ほう…何かいいアイデアでもありましたら、刑事さんのお知恵をお貸し願えませんかね」


 ほんの少しの沈黙の後、藤島は本題を切り出した。


「昨年の事件の日…どちらにおられました?」

「事件の日?」

「何の事件の日でしょう?」


 弁護士の加賀谷が西根の言葉を遮った。藤島は加賀谷の目の動きを注視した。


「お約束の時間も大分過ぎております。公務がありますので、任意でのこれ以上の時間提供はできません」

「承知しました。この件では改めてご足労願う事になりそうですね。ご協力ありがとうございました。今日はお引取り頂いて結構です。昨今、この辺りは熊なども出没しております。お帰りの途、くれぐれもお気を付けになってください」


 藤島はそれ以上食い下がらなかった。村役場に用意された “俄か取調室 ”での大物の任意の事情聴取は終わった。加賀谷が西根を促して部屋を出ると、廊下ではこれから聴取を受ける佐藤県議が待っていた。すれ違いざま西根は、佐藤県議に何か話し掛けようとして、加賀谷に止められた。藤島の視線が刺さっていた。西根は憮然として車に向かった。


 藤島が部屋に戻ると、奥から村の長老・貞八が出て来た。


「貞八さんの睨んだとおりでしたね。“村長のご親戚筋 ”を否定しなかった」

「村長の松橋は、県知事の親戚でも何でもねんだ。騙るに落ぢだなカマス野郎…整形までしやがって」

「奥方はどうなんでしょうね?」

「バゲモノ女がいるようだな」

「貞八さん…県知事夫妻は、本物の県知事夫妻は…」

「カマスの国の族と親しぐすれば、ケッチの毛まで抜がえでしまうもんだ」

「では県知事夫妻は!」

「さあな、それはオレだぢの仕事でだばねんてな。ただな、元々この世に居ないバゲモノだば、居なぐなったって、何の問題もねべ」

「我々には…何の手掛かりもありません」

「なんもさねごどだ、なんもな」

「・・・・・」

「最近、物忘れひどくて、今しゃべったごども覚えでねでば。んだば、またなんし」


 貞八は笑ってその場を去った。藤島は次に佐藤県議を呼んだが、急用とかで消えた後だった。


 鬼ノ子村の住民の間では、県知事の妻にも様々な噂があった。彼女がカマスの国の血筋ではないかという事である。カマス連中と合っているのを何人もの住民が目撃している。その一人が地元新聞記者の田中毅夫だ。田中がカマスの毒牙にかからないのは何故か…要するに田中はカマスの国の工作員であり、県知事の妻と同じ穴のムジナだからと見られていた。実権は県知事の妻が握り、秋田の過疎高齢化の集落を次から次とカマスの国に浸食させていると信じられていた。カマスの国から多くの密航者を「家」の戸籍に “背乗り ”で入れ替わらせ、カマスの傀儡権勢の土台が築かれつつある。彼らにとって邪魔な人間が誰であろうと、スキャンダル記事をでっち上げるなど、あらゆる手を使って潰してきた。

 1980年代に入り、鬼ノ子村がマタギの風習を題材とした映画のロケ地となった。永く疲弊していた集落ばかりでなく、県民全体の心に光が射した。この映画をきっかけに地元おこしに火が付き、県政に勢いが付くかもしれないと誰もが期待した。地元民宿「シカリの宿」の主・松橋良三が、撮影隊に熊狩りの指南役を依頼された。撮影は順調に進み、1982年に一般公開され、主演俳優は「男優演技賞」を取った。この映画制作に目くじらを立てていたのが、地元文化に光が当たるのを極力嫌っていた県知事の妻であろうと、実しやかに囁かれてた。田中を使い、良三にスキャンダルを仕掛けた。取材と称して田中に良三の鉄砲を持たせてほしいと懇願させた。良三は仕方なく銃弾の入っていない村田銃を記者の田中に持たせてやった。これがテレビでオンエアされて、良三が銃刀法の保管義務違反等に抵触するのではないか…と騒ぎ立てられ、結局、悪意の連鎖で刑務所送りにまでなってしまった経緯がある。

 娘が成人すると県知事の妻は動いたとされる。自治体の長を丸め込んだり、圧力をかけて血税予算を捻出させ、カマスの国から映画制作会社を招いた。娘を主演に映画を作らせようとしたのだ。県知事の妻がカマス国人だとすると、県民による地域おこしが成功することはあってはならないことだ。あくまでもカマスの国の息のかかったものが中心でなければならない。ところが、折からの東日本大震災による福島原発事故の放射線騒ぎで、カマスの国の映画会社は予算だけを持ち逃げして帰国してしまった。結局、娘の主演話はそのまま立ち消えとなった。そんなことがあって鬼ノ子村の住民は、益々県知事の妻がカマスの国の工作員であることを疑わない者がいなくなって久しい。


 西根県知事一向を名乗る車が国道105号の根子トンネル前を通過した。トンネルで待機していた桜庭の車がソロソロと出て来た。知事を付けている車がない事を確認し、後を追った。加賀屋の携帯が鳴った。


「桜庭さんからですが…」


 憮然としている西根の様子を見て、加賀谷は自分でその電話を受けた。


「とんだ無駄足になりましたよ。この貸しは大きく付きますね」

「申し訳ありません」

「この話はほとぼりが冷めるまでは…」

「承知しております」

「観光開発の名目で道路だけはね…鉄道の廃線問題は打って付けのカモフラージュだ。精々住民の目をそこに引き付けて、存続運動を盛り上げてくれたまえ」

「大丈夫です。それより六ヶ所の廃坑跡の基地建設計画のほうは何卒宜しく…」


 新庄と荒木が、マタギ神社の板梯子を上がって来た。黒川夫妻は御堂の隅に身を縮めるしかなかった。御堂の扉が開いた。月のあかりが黒川夫妻の顔を青白く照らす。


「あんたら…東京から来た夫婦だな…」

「・・・・・」

「ここで何してんだ?」

「あなた達こそ、ここで何をしてらっしゃるんですか?」

「山狩りだよ…あんたらの息子を殺した犯人のな」


 はる子が二人の目の前に、いきなり智弘の写真をかざした。一層煌々となった月の光に、写真の智弘が生霊の如く浮き出されると、荒木は思わず「おおーっ!」と後退った。


「そいつは!」

「黙ってろ!」


 新庄が荒木を黙らせるが、時既に遅かった。


「知ってるのね…この子の顔に見覚えがあるのね!」


 新庄は苦々しく荒木を睨み付けた。次の瞬間、荒木は腰の鉈を振り上げて、黒川夫妻に襲い掛かった。同時に鈍い発砲音が響いて、鉈を振り上げたままの荒木が動かなくなった。新庄が恐る恐る後ろを振り返ると、殺気が漲った良三の鋭い目が光っていた。背中に崩れてくる荒木の体に押されて、脱兎の如く遁走する新庄を、はる子は気丈にも追い掛けた。


「はる子!」

「黒川さん! あんたは奥さんを追いかげで! オレも後がら行ぐがら!」

「はい!」


 俊介は良三に一礼し、はる子の後を追った。良三は急いで撃ち取った荒木の死体を参道から引き摺り出し、すぐ傍の小川に向かった。


「手伝うべ」


 金治が小川に架かった橋の下から出て来た。


「金治だが…早がったな」

「みんなヨチヨチ歩ぎで遅えったでば…一軒ばり行った岸さ、穴掘ってあるんて」

「分がった」

「こごはオレに任ひで、早ぐ黒川さんば追っかげれ。反吐でも吐いで跡形消しておぐべ。酒勿体ねんどもな」

「したら頼んだ!」


 良三は黒川夫妻の後を追った。それを見送った金治は、川の流れに沿って男の死体を引き摺って消えた。


 偽県知事の黒塗り車と、少し離れて桜庭の車が、国道沿いに寄せてある通行止め用のバリケードの前を通過した。携帯電話を片手の老人が看板の陰から現れた。根子の長老であり、弘の父親・朝継である。二台の車の後方を走る生コン車を運転する園子が、朝継に軽く合図を送って通過した。

 先を走る黒塗り車の前に突然、ホームレスの成田が運転する耕運機が飛び出した。急ブレーキで慌てて反対車線に避ける黒塗り車が、対向車の大型ダンプカーに激突して横向きになったところに、後続の桜庭の車が激突。園子は二台の乗用車の側面を擦って生コン車を横付けにした。事故車を挟んで、県道の南北が地元青年団の手によって手際よくバリケード封鎖された。青年団らが二台の車のフロントガラスを破壊し、生コンのパイプを突っ込んで流し始めた。車内の西根、秘書の加賀谷、桜庭、そして運転する桜庭の秘書は、必死に外に飛び出そうとするが、生コンの勢いで車内に押し戻されて、もがきながら埋まっていった。事態を認識できない程に驚いた4人は、声も出せぬまま身動きが取れなくなっていった。弘が対向する生コン車の運転席に目をやると、ハンドルを握っている園子の艶っぽい笑顔が返ってきた。


 めったに人が利用しない松森の丘に通じるクマザサだらけの裏道がある。火葬船桟橋の見える急斜面側だ。巌は垂れ下がったロープの前に立っていた。鬼ノ子村の西の空には、薄い赤みが差して村が一望できる。暑苦しい蝉の鳴き声が一瞬静寂となった。


 105号線の事故現場では地獄絵図が繰り広げられていた。車内に流された生コンの中から、加賀谷の頭が飛び出した。その頭を台にして偽県知事の西根が浮び上がるが、底で蠢く瀕死の族によってすぐに引き摺り込まれて沈んだ。桜庭の車も同様に、生コンだらけの車内が、生存を賭けた修羅場と化していた。徐々に族どもが動かなくなる。そこに一気に最後の生コンが流された。弘はその惨状を無表情で見つめる艶っぽい園子に目を移し、にんまりとしてタバコに火を点けた。


「もうすぐ陽が暮れるか…」


 静寂の中でヘドロのような鈍い泡が断末魔を告げた。


 月が雲間に揺れながら、安の滝の流れを青白く照らしていた。熊蔵と俊晴は微かに残った焚き火の前で、良三からの連絡を待っていた。滝の流れにじっと横になっている大仏を見つめながら、俊晴は智弘の死を見殺しにした自分に問いかけていた。自分が殺したのとどこが違うんだろう? 彼だけじゃない。千恵子を不幸にしてしまった。あの時、出て行けば良かった。殺されたほうがまだ良かった。苦しい…大仏様に助けてもらいたい…あの澄んだ滝の水で、自分の腐った性根を洗いたい…洗いたい…洗いたい。俊晴は立ち上がり、大仏に向かって歩き出した。


「帰ろ、俊晴…」


 声に振り向くと、千恵子が立っていた。俊晴はそのまま動けなかった。


「帰ろ、俊晴」


 熊蔵は湿った砂利で素早く残り火を片付けた。


「千恵子、来てけだ。お父さんは?」

「掃除終わったって」

「んだが、よし急いで下りるべ」


 千恵子はもう一度、俊晴を促した。俊晴は黙って二人に続いた。


 暗がりの中、青年団の手で生コンまみれの4つの遺体が、鬼ノ子川の清流で清められていた。4つの遺体は火葬船の甲板に並べられ、和尚の読経に導かれて桟橋を出て行った。


 松森神社の境内の中央には、いつものように太い2本の蝋燭が立ち、護摩供の準備がなされていた。神社に向かう坂道には、列をなした燭台が連なり、ゆっくり登っていくのが見える。一同は神社に集まると、いつものように無言で数珠繰りの円陣を組み、そこに山伏装束の貞八が現れた。貞八は、四本の蝋燭に火を灯し、呪文を唱えながらゆっくりとナガサを抜き、大きな気合と共にその蝋燭を断った。本堂に上がり、護摩壇に火を放った。周囲を囲む住民によるご詠歌とともに数珠繰りが始まった。


 鬼ノ子川の暗闇にも船のシルエットがボーっと浮かび、長い弔笛が響いた。火葬船の炉に点火された風景は、いつ見ても幻想的だ。船のデッキからは決まって夜想曲が小さく流れ、火葬操作室の平川茂が火を操りながら無表情に聞き入っていた。


 暫くして、松森の丘から夜空に四発の空砲が轟いた。その光が、松森の裏道で首を吊って息絶えている巌の顔を照らした。その微かに揺れる足先に、父親の喜久治が跪いていた。


「巌…なんも死なねても…」


 喜久治は巌の遺書を握りしめた。


〈第18話「黒い煙」につづく〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る