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「神様相手にそんなことできるの?」

 尋ねたのは梨香子だった。

「できるよ。その外法とやらを使えばね。それに神様の力を無力化する方法もある」

 梨香子の疑問に香介は答える。相手は人間であると疑いの余地がないと思っているようなレスポンスの良さだった。仁と花子は、相変わらず恵里の英才教育は凄いなと月並みな感想を持った。関はこの騒動後、弟子に、来るように誘おうと心に決めた。

「どうするの?」

「ヤクザの娘さんが持ってたまじないが仕掛けられているネックレスがあるみたいだからな。それを首に掛ければ無効化できるらしい」

 花子は「そんな便利なものがこの世にあるもんか」と疑問を呈す。

「うん、あるよ」

 さも当たり前の如く仁も応じた。

 その言動に花子は世のものとは思えない顔をした。

「おい、馬鹿神、そんなものがあるなんて聞いていないぞ」

「言いそびれちゃった」

 満面の愛想笑いで乗り切ろうとした仁であるが、花子に思いっきり頭をはたかれた。空っぽの缶を叩いたような音が響く。

「どうしてそんなものがあるんだ」

「青葉が生まれた時にお祝いで神生みで作ったんだ」

 再度中身を丸々虫に食われたスイカのような音が響き渡った。

「お前というやつは何を考えてそんなものを作っているんだ! ただでさえ残り少ない力をそんなくだらないことに!」

 襟を掴まえられ、持ち上げられる仁。

「でもでも、青葉が頼み事してきたんだよ。そんなこと珍しいじゃないか」

「頼み事を受けた見返りはなんだ? 何もないのだろう? それでなぜか今は子狐が持っているだと。笑わせるな」

「……黙っててごめんなさい」

 夫婦漫才が一段落ついたところで香介が切り出す。

「話を進めるぞ」

 花子はその手を離した。

「渡良瀬組から恵里の力を阻止するのを手伝ってほしい」

 仁は服を整え応じる。

「僕らも渡良瀬組には用があるからね。それについてはやぶさかでないよ。ただ――」

 仁は香介に耳打ちする。

「全てが終わったあと花ちゃんをなだめてもらえないかな?」

 そんなことかと香介は一安心した。

「任せて下さい」

 その応答に花子はまた何か仁がよからぬことをやったのではないかと口を尖らせた。

 香介は立ち上がる。体中の節々から悲鳴があがった。思わず顔を歪めてしまう。

 佐野も苦しいはずだが、涼しい顔で立ち上がる。

「坊主、大丈夫か?」

 佐野の配慮に香介は頷く。

「恵里のためですから」

 当たり前のことを述べた香介に佐野の顔を綻ぶ。

「お前、いい男だな。気に入った」

 こうして香介と佐野を加えた神の一行は渡良瀬組へと向かう。

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