12
香介は眉間を抑えていた。視線を上げると、怯えきった島田がそこにいた。「なあ」と香介が口を開いただけで頭を抑えしゃがみこんでしまう始末である。
香介と島田は神社にいた。
大量の黒服もいた。
香介と島田は黒服に囲まれていた。
黒服は鬼の形相である。
香介は怯える島田と囲む黒服らに訳がわからなくなっていた。事情を聞こうとしても話にならない。ゆえに思考を放棄することに決めた。
島田は頭を抱え震えていた。神社に到着するまで香介とともに歩いていたが、香介の言動一つ一つに怯えが見られたものの大きな問題はなかった。そこにはきっと少なからず目的のために我慢しなければいけないという義務感があったと推測する。そんな島田の義務感を放棄させる何かが黒服らにはあった。それが何かは香介は知らない。ゆえに考察しない。推理、考察は全ての情報が出揃ってからすることしていた。それが問題の最適化するのに一番早いことを香介は知っていた。
次に黒服らに目を遣る。黒服は二人の姿を認めるまで何やら和やかな雰囲気だった。まるで何かを祝うような、そんな雰囲気であった。それが香介と島田の姿を認めるやいなや笑みが消えたのである。黒服らは瞬く間に二人を囲む。黒服らの服装は礼服であった。
囲まれたあとの島田は恐怖に震え、話しどころではなくなった。ゆえに情報を得るには黒服らの口から出させる必要があった。しかし、黒服は話なんて聞く気はないとばかりの形相をし、どうやって沈めるかという算段を堂々と沈める対象を目の前にして行っていた。
一般人ならば萎縮してしまうような状況下において香介は一際睨みを効かせている老人の前へ歩き出す。数人の黒服らは老人を庇うように立ち塞がる。それでも香介は止まらない。立ち塞がる黒服らと目の鼻の先まで詰め寄る。
その行動で周囲に緊張が走る。
黒服らが老人の前へ立ち塞がることは老人を守るという目的の他にもう一つの目的もある。それは威圧だ。守る行動を取るということは、何かしてきたらそれ相応の対応を取るという意思表示になる。明確な意思表示はそれだけで強い拘束力を発する。その中で自由な行動を取るということはできなくなる。――そのはずだった。
黒服らの目の前にいる青年は縛られていなかった。
同時に黒服らはこの青年は敵対組織の刺客ではないのかと考えた。
ゆえに何が起こっても対応できるよう身構えた。
しかし、香介が口にした言葉に黒服らの毒気は抜かれる。
「あなたが神様ですか?」
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