第19話 追い詰められる反逆

「久し振りだね、ロザリー」

「あんたがこの部隊の指揮者なの!?」


ヒリズに対するロザリーの口調は明らかに強い敵意に満ちていた。


「あらあら、折角の自分の半身との再会なのにつれないね」

「五月蠅い!!あんたなんかが・・・!!」


挑発とも単なる軽口とも取れる口調のヒリズとは対照的にとこれまでにない困惑と怒りの表情を見せながら荒々しい声を挙げるロザリー、そこに他のメンバーも駆けつける。


「どうしたんです!?この少年は!?」


駆けつけた生花はヒリズの顔を見る。


「こいつはヒリズ、魔王軍幹部の一人よ!!」


ロザリーが言うと


「幹部!?と言う事はあの一日って少女の・・・」

「そうだよ。僕は一日の、あんたの元息子の先輩だよ」


一日の事を口にする希有に対し、ヒリズはやはり何処か挑発的とも単なる軽口とも取れる口調で返す。


「元息子って、どういう事だ?お前は世革の何を知っている!?」

「本人から聞いた筈だけど、それともあんたらはあの子と違って言葉の意味も理解出来ない位頭が悪いの?」


希有の更なる問いかけにも全く動じないヒリズ。


「こんな奴の言葉に耳を貸す必要はありませんよ!!バースト・シュート」


ロザリーはそう叫ぶと手から光を放って攻撃するがヒリズは難なくそれを躱す。


「酷いね、いきなり仕掛けてくるなんてじゃ、僕も・・・クロスシュート!!」


ヒリズも両手からビームを放って攻撃する。ロザリーはそれを避けるがヒリズはその隙をついて接近戦に持ち込み、殴りや蹴りをロザリーに入れていく。そしてロザリーは蹴りを受け、地面に倒れ込んでしまう。


その直後にヒリズに駆け寄った聖は


「ライト・キック!!」


と言って足を光らせながらヒリズの腹部を蹴って遠くに跳ね飛ばす。だがヒリズは受け身を取り、踏みとどまる。


「くっ、あんたも居たって事、忘れてたよ」


と言う。そこにレジスタンスのメンバーも駆けつけ、ヒリズに向かって手持ちの火器を乱射する。


「あんた…じゃなくてあんた達か。でもいいのかな?そんなに乱射して・・・」


乱射される火器を躱しながら不気味な笑みで告げるヒリズ。


「・・・どういう事なの!!」


立ち上がったロザリーがと言ったその瞬間、一行の元に通信が入る。それを聞いたロザリーは


「何ですって!?」


と驚嘆する。


「どうしたの!?」


チュアリが聞くと


「魔王軍の更なる増援がこっちに向かってきてるって!!それに、他のレジスタンスの拠点、特にこれまで魔王軍に制圧されていなかった地域の拠点がここと同じ様に襲撃を受けているという通信も入ってきたわ!!」


と告げるロザリー。


「つまり、魔王軍はレジスタンスの一斉弾圧に出始めたって訳か!!」

「その通り!!さあ、どうする?もう逃げ場は残されていないぞ!!」


テレサが現状を明言するとヒリズはそれを肯定し高笑いを上げる。


「どうしましょう・・・」

「・・・くっ、仕方無い。皆、ここは放棄し、戦域より離脱するわよ!!」


動揺するソルジャにロザリーは苦虫を噛み潰した様な顔で酷な判断を告げる。


「りょ、了解・・・」


ソルジャだけでなく、他のレジスタンスメンバー同じ様に顔と一致しない頷きを行い、ロザリー達はその場を後にしていく。


「追わないのですか?ヒリズ様」

「ああ、ここで奴等を泳がせるのが一日の狙いだからな」


質問する兵士に笑顔で答えるヒリズ、だが兵士は


「そうですか・・・」


と不思議そうな声を挙げる。


「?どうかしたの?」


ヒリズが聞くと兵士は


「いえ、何か・・・ヒリズ様から感じる何かが以前と違うと・・・」

「何かって・・・」

「以前のヒリズ様であればあの女がいたときは命令違反をしてでも固執していたではありませんか。それが今回はあっさりと・・・」


と内心の疑問を打ち明ける。


「確かに、僕自身、それは不思議に思っている」

「兵士にも気付かれるほどに影響が出ている・・・何なんだろう?彼女と・・・一日と出会ってから感じっている変化は・・・」


兵士の発言に改めて何かを思うヒリズ。


その頃、各地のレジスタンス拠点も魔王軍の電撃作戦によって瞬く間に陥落していた。とある場所では


「あっけないなあ~別世界の戦力と言ってもこんなものなの?」


とシオンが余裕を浮かべ、又別の場所では


「こっちの制圧は完了しました。今からヒリズさんの部隊に・・・」


と言葉が連絡を入れ、又別の場所では


「これ程までにスムーズにいくとはね」


と回帰が呟いていた。


一方、辛うじて逃れることができたロザリー達はレジスタンスの最大拠点、リベリオン・フォートレスに逃れていた。


「せっかくロザリーさん達が帰還してこれから反抗作戦を始められると思ったのに・・・こんな事に・・・」


ソルジャが落胆の声を挙げるとそれに追い打ちをかける様に


「各地のレジスタンスも次々に制圧されています・・・特にこちらが戦力を集めていた場所ほど重点的に・・・通信回線も押さえられ、ここに逃れてきたメンバー以外のレジスタンスはほぼ全滅です・・・」

「そう・・・」


その短い言葉を辛うじてか細げに言うロザリー、他のメンバーも重く苦しい顔を見せる。


少しの沈黙の後、


「やっぱり・・・可笑しいです!!」


と唐突に言う希有。


「何が可笑しいの?」


と聞く望に希有は


「私達がこの世界を訪れ、更にレジスタンスの拠点に案内された直後にこれだけの大規模な襲撃が起きるなんて・・・」

「私も同意見です。更にロザリーと因縁があるヒリズがダイレクトにここを狙ってきたと言うのも疑問が残ります」

「つまり、奴等は少なくともロザリーがここにいるという事を分かった上で仕掛けてきた・・・そういう事ですか?」


希有の疑問に聖も同調し、チュアリが纏める。


「そういうことになるがそうなると問題は・・・」

「どこからその情報が漏れたのか・・・よね」


聖の意図を酌んだロザリーもその問題点を告げる。


その頃、帰還したヒリズはフリーチェに謁見し、他の幹部と共に作戦の報告を告げていた。


「フリーチェ様、ヒリズ、ただいま帰還し、制圧に成功しましたことをご報告いたします」

「そうか、よくやってくれた」


そうフリーチェが労うと


「いえ、これは作戦を立案してくれた一日のお陰です、僕は只・・・」


と言いかけるヒリズ。そこに当の本人が


「いえ、私は理論を働かせただけです。実際うまくいってくれたのは先輩達のお陰ですよ」


と先に告げる。


「しっかし、よく思い付くもんだよな。こちらの制圧が浅い地域の拠点にワープで殴り込みなんて」


感心したといった物言いで言う回帰に


「そこは心理という物ですよ。反抗のために戦力を集中させるのであれば制圧下の地域では目を盗まなければならない以上、リスクが大きすぎます。となるとそうでない地域に絞られる。でもどこにどの程度終結しているのかは分かりませんから」


とその理論を説明する一日。それに続ける形で


「だから一気に叩いたと言う訳ね」


というヒリズ。


「ええ、そしてその結果、大部分の構成員を捕らえ、さらに奴等の隠し玉もそのまま入手することが出来ました」


満足げな笑みを浮かべ、報告する一日。


そこに


「ところで一日よ、態々生け捕りにしたのだ。何か考えがあるのか?」


と水を差すとも確認するとも言える発言をするフリーチェ。それに対する一日の返答は


「ええ、彼等は先頭訓練を受けている存在、処分してしまうには惜しいですから。それに技術の方も解析や流用が進めばこちらで使用、及び発展にも使えるでしょう。ヒリズ先輩、お願い出来ますか?」


という物だった。


「何故僕に?」


困惑するヒリズに


「この技術は元々この世界にあった技術、この世界の出身であるヒリズ先輩であれば全く接点がない私たちがやるより早いのではないかと思って」

「分かった、やってみるよ」


と一日が告げるとヒリズは即答する。


「お願いします。急ぎはしませんから」


と返答を付け足す一日。


「でも、結局彼等には逃げられてしまいましたね・・・」

「ああ、彼処で決着をつけられればよかったんだけど・・・」


残念そうな回帰の発言にヒリズが続けると


「そんな気を落とすことじゃありませんよ。奴等の逃げた場所は分かっていますから」


と一日は告げる。


「どうやって?」


純粋な疑問として聞くヒリズに


「各地の状況を探る為に上空から網を張っておいたんですけど、その網で彼等を追えたんですよ」


と笑顔で答える一日。


「奴等はどこに逃げ込んだ?」


早口で神消が即刻聞くと


「ここですね。リベリオン・フォートレス」


一日そういって手元に広げたこの世界の地図を指差す。


「ここはレジスタンスの最大拠点・・・」


ヒリズが少し険しい顔になって言うと


「へえ、そうなんですか・・・道理でシオンがあの連絡を寄越してくるはずです」


と動じる事無く返す一日。

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