第18話 ヒリズ出撃

「ところで・・・未末ちゃんはどうするのですか?御両親が・・・」


生花は心配そうな顔を見せる。


「彼女の様態についてですが・・・現状では手の施しようがない、そして死ぬ事も無いというのが正直な感想です」


先程まで様子を見ていたロザリーがその様態を告げる。


「死ぬことが無い?」


思いもよらない返答に困惑する生花。


「ええ、あの攻撃を受けてから、彼女の体は呼吸はしています、ですが代謝機能が停止し、意識も無い・・・いわば冷凍睡眠に近い状態となっています。生きてはいるが動かない・・・そんな状態です」


ロザリーは更に説明を続ける。


「あの攻撃がどんな状態にする者なのか、それは分かりません・・・ですが、現状で未末を救うには・・・」

「未知なるものにかけるしかない・・・と言う訳ですか」

「はい」


望と希有の決意に


「なら、未末ちゃんの為にも尚更引く訳には行きませんね」


と顏を上げる生花。


「さあ、行きましょう!!ディメンジョン・ゲート!!」


ロザリーはそう叫ぶと床に青い門を出現させ、その場にいたメンバーはそれを潜っていく。そして門をくぐり終えるとそこにはこれまで見た事の無い光景が広がっていた。


「ここが・・・別の世界?」


望が疑問を口にすると


「はい。私が生まれ育った世界です」


ロザリーはそういうと複雑な顔で周囲を見渡す。


「一見すると平穏な空気が流れていますが・・・」

「ええ、住民が弾圧され、抵抗の為の力を蓄えている状況なので不用意に奴等を煽る様な事はしていませんので」


希有の純粋な質問に対し、世界の現状を伝えるロザリー。


「現状はどうなっていると思う?」

「私達が別世界に移動した後の連絡によれば戦力はある程度整っているという事です」

「つまり、上手くいけば反抗も可能と言う訳か」

「ええ、早速ですが、この近くのレジスタンス拠点に向かいましょう」


聖とロザリーの会話の後、ロザリーの案内の元、近くのレジスタンス拠点へと移動する。


移動先の拠点に着くとそこにいた人物がいきなり


「ロザリーか!!」


と声をかけてくる。その人物に対し


「ええ、約束した通り、別世界の協力者の方々を連れてきたわ」


というロザリー、それに続き、他の面々は自己紹介を行う。


「成る程・・・その人達がか・・・申し遅れました。俺はソルジャ、この拠点、いや。レジスタンス全体の総指揮を受け持っている」


とその人物も自己紹介を済ませると早速ロザリー達を指令室に案内する。


指令室につくと


「で、今の状況はどうなっているの?」


と聞くロザリー。


「我々レジスタンスはかなり大きな戦力を整えています。まだ魔王軍に摂取されていない技術が数多くありますから。そこにロザリー達が加わってくれれば・・・」


ソルジャはこう答えるが


「それは分かったけど、具体的な勢力図は出せる?」


と具体的な説明を求めるロザリー。それにソルジャは


「失礼、図を出すべきでしたね」


と言ってこの世界の全体図を見せ、求めに答える。


「この赤い部分が魔王軍の支配下か・・・首都を中心として支配地域を広げているな・・・」

「ええ、ですがそれらの地域においても我々の抵抗は続けられています」


図を見た聖が冷静に述べるとソルジャは詳細な現状を説明する。


「これなら進行しつつ、それらの援助を得る事も出来ますね」

「問題は何時仕掛けるかか・・・」


望とロザリーは現実を見つつも希望を得た事を喜ぶ。だがその直後、拠点内の警報が鳴り始める。


「何なんですこれ!?」


生花が困惑した声を出すと


「魔王軍の反応を感知しました!!それもかなりの数です」


と指令室のオペレーターが告げる。


「ここが発見されたって音か・・・レジスタンスと言う立場上何時そうなってもおかしくはないと思ってはいたけど・・・」


いざ現実になると・・・という動揺を隠し切れないロザリー。


「とにかく迎撃しよう。今ここをせめ落とされる訳には行かない!!」

「そうね・・・」


聖がそういうとロザリーは頭の中に浮かんだ疑念を振り払うように頷き、近くのロッカーの扉を開け、そこにあった銃を望、希有、生花に渡す。


「これは・・・」

「レジスタンスの標準装備です。取り敢えず魔王軍の兵士を倒す事はそれを討てば出来ます。あくまで護身用ですが・・・」

「有難う。これで、私達も戦える・・・」


武器を渡してくれた事に感謝の言葉を告げる望と希有。だが直後に


「ええ、でも先走った行動はくれぐれも慎んで下さい。戦闘経験のあるレジスタンスなら、そう簡単にはやられませんから」


ロザリーはそう告げ、先走らないように釘を刺す。


そして拠点外部に出るとそこでは魔王軍の兵士らしき異形の生物が侵攻し、レジスタンスがそれを迎撃していた。


「やはり魔王軍の戦力は異形の生物か・・・あの世界の侵攻の仕方は一体・・・」「確かに気にはなるけど、今はそれを考えている時間は無いよ」

「ああ、そうだな」


別世界の侵攻を見て改めて違和感を覚えるテレサ、だがその様子を見て発破をかけるチュアリに同意する。


レジスタンスは魔王軍を追い込み、撤退させていくがそこに


「ここが次の狩場なわけね!!サンダー・ボルト!!」


と言う声と共に雷撃を放ち、レジスタンスを手にかける少年が現れる。


「何者だ!?」


そう言ったソルジャの元にロザリーが駆け寄ると


「あ、あんたは・・・ヒリズ!!」


と叫び、視線の先にいるヒリズを確認する。

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