第17話 新たな希望を求めて
その頃、フリーチェ達も今回の作戦について話し合っていた。
「凄いな・・・一日、力以外の方法でここまで支配を進めるなんて・・・しかし・・・」
そうヒリズが口火を切ると
「先輩がおっしゃりたいことはわかります。これはもし種を明かされれば一発でひっくり返りかねない危険性を孕んでいると言うことなのでしょう」
と一日は先回りする。
「それをわかっていると言う事は・・・」
「ええ、今回の作戦を実行するに辺り、それを知りました。奴等が使う能力は此方の能力を中和する物がある。それ故に各国首脳から奴等を引き離すため、子芝居をうつことになったのですから。ですが其は結果としてこちらにプラスに働きました」
フリーチェの問いかけにも余裕を崩さない一日、その様子は何処か達観しているようにも彼女自身が人知を超えているようにも見える。
「プラスに働いた?此方の能力と素性、そしてあの子達の事を知られたが、それを上回るプラスが得られたと言うのか?」
回帰がそう質問すると一日は
「ええ、それは・・・」
といい、そのプラスの内容を話す。その内容は
「何と・・・」
「確かに其は大きなプラスだな・・・」
と、回帰はおろか、フリーチェすらも驚きを隠し切れない物であった。
「所で、皆さんがこれ迄支配してきた世界は今現在一体どうなっているのですか?」
ここで一日は今度はあなた達の話を聞かせてほしいと言わんばかりに話題を変える。
「今まで支配してきた世界か・・・」
「どの世界も表面上は制圧しているが、まだまだ抵抗勢力が存在していて完全なる支配には至っていない。世界にもよるが支配率は凡そ65~80%と言ったところだろう」
一日から急な質問をされたフリーチェ達は困惑しつつも現状を説明する。
「それがどうかしたの?」
一日の質問の意図を探ろうとする神消。
「ええ、現状、日本以外の国は何処も自国の治安維持で精一杯、各国に送り込んだ工作員の工作も今暫くの時間を要します。そのため、直ぐにはこの世界が大きく動く事は無いでしょう。なので今の内に奴等の希望と退路を断ち切っておきたいのです」
その意図をこう説明する一日。
「退路と希望を断ち切ると言うのは具体的にはどういう事だ?」
「こう言うことですよ・・・」
フリーチェの更なる質問にも一日は動じる事無く答える。
「成る程な・・・しかし・・・」
「言いたい事は分かるが、其は俺達も黙っているわけにはいかないな。あの世界達はは俺達の担当世界なのだから」
一日の説明を聞いた神消は少々不機嫌な顔になる。だが一日はそれで意見を引っ込めたりはせず、
「別に先輩達を蔑ろにするつもりはありませんよ。寧ろ私より先輩達やフリーチェ様の方が其々の世界の事情はよくご存じでしょうし。ただ、私もその戦力に加えてほしいと言うだけです」
と更に意見を続ける。
「分かった。なら先ずは・・・」
「なら、先ずはどこからにします?」
フリーチェの言葉に場を和ませようとしているのか、軽い口調で話すヒリズ。
「焦りませんし、まだ余裕はあります。色々おしゃべりして申し訳御座いませんが私は一度席を外しますね。そろそろ彼らの相手もしてあげないと行けませんし」
そう言うと一日は部屋から出ようとする。
「そうか、ではまた此方から伝達する」
「ありがとうございます」
フリーチェの配慮に笑顔で返答する一日。だがその直後一日は
「これで・・・例の調査も一歩前進するといいんだけどね・・・」
と何か意味深な事を考えるのであった。
部屋を出た一日が階段から下に降りていくとそこには命達が待っていた。
「一日ちゃん、お話終わったの?」
「とりあえずはね。でも今後どうするかについてはまだ決まってないわ」
早く結果を聞かせてほしいと言わんばかりに質問する命に一日が返答すると
「そっか・・・次は僕達も活躍したいのに」
「シオン、これはヒーローごっこじゃないんだから」
シオンが不満げに呟くが、言葉はそんなシオンを諭す。
「ただ、おおよその今後についてなんだけど、この世界は暫く大きな動きは無さそうだから先に奴等の退路と希望を断つ為に他の世界に向かう事になるわ」
先程のフリーチェ達との会話を話し、今後の方針を一日が伝えると
「他の世界って、一日ちゃんの先輩達が居た世界の事?」
「ええ」
と当然の様に疑問が出る。
「どうして、その世界は・・・」
「それはね・・・」
その疑問に答える一日、彼女の狙いは命達も知る事となる。
同時刻、聖達も又、今後の行動について話し合っていた。
「・・・他の世界に協力を求める?」
「ええ、既にこの世界の状況は私達だけで打開出来るものではなくなっています。それに他の世界も制圧されている以上、それらの世界を開放する事で奴等の後ろ盾を崩す事も出来る筈です」
生花の問いかけにそう説明する聖。
「それは分かりましたが・・・私達はどうすれば・・・」
思いもよらない発言に困惑する望、だが聖は
「先日の各国首脳の一件も考えると皆さんがこの世界に残るのは奴等に利用されてしまう可能性の方が高いでしょう・・・そこで私達に同行し、各世界を回って下さい。それに、それぞれの世界であれば、皆さんが戦えるように、いえ、自衛出来る位の道具を揃える事は可能です」
と告げ、その内心で理解を求める聖。
「無論、強制はしませんが・・・どうしますか?」
「考えるまでもありませんよ。ここに居ても命や子供達は取り返せない、なら行きます!!」
ロザリーが念を押すが、生花の決意は固かった。そんな生花を見た希有は
「望・・・」
と暗い顔で望を見つめる。
「その世界であれば・・・未末を救う手段を見つける事も出来ますか・・・」
「それは・・・分かりません。ですが・・・」
「分かりました。私も行きます」
「望が行くのであれば、当然私も行きます」
微かな希望をまだ捨てきれない、そんな思いを顔に出し返答する望、その顔を見て希有も少しだけ安堵の表情を浮かべる。
「これで意見は纏まりましたね。さあ、行きましょう」
「しかし、行くといってもどの世界に向かうんだ?何しろ他の世界は全て違う。まずは目的を絞り込まないと・・・」
行動が先に出る聖に具体案を求めるテレサ、すると聖は
「まずはロザリーの世界に向かおう。ロザリーの世界は科学技術が発達している。魔術では奴等に分がある以上、こちらは科学で対抗するのが得策だろう」
と告げる。
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