第8話魔王との会談

会場を現状で事件が最も多いアメリカで且つ、外部からの侵入者が容易に出入り出来ないホワイトハウスにする事で合意した一行はフリーチェがどの様な形でそれを知るのかを考えつつ、合意した日を待つのであった。


そして会談の前日、再びフリーチェが空に姿を現す。


「会談の会場と日時が決定した事、大変嬉しく思います。そしてその結果ですが、是非世界中の皆さんに同時に知ってもらいたいので会場に皆さんの世界の報道機関を立ち入らせて下さい。本来であればこの様なお願いは不遜なのですが、どうか御健闘頂けますと幸いです」


それだけを告げて消滅するフリーチェの幻影。


「報道機関の立入を認めるって・・・どういう事なの?世界中に生中継する・・・その目的は・・・」


フリーチェの発言を聞いたロザリーは言い知れぬ不安を抱える、そしてそんなロザリーを見た聖も

「読めないな・・・今回の奴等の動きは兎に角読めない。何を目論んでいる・・・だが現状では敢えて敵の手に乗るしかない」


と不安を隠せない口調でロザリーと、そして何より自分自身に言い聞かせる様に発言する。


会談当日、全世界に向けて発信される会談時間になると会場の扉を開けてフリーチェが中に入って来る。


「おや・・・空の映像と随分雰囲気が違うようですが・・・」

「あれはあくまで映像に過ぎません。それに姿形が近い方が色々と話しやすいでしょう」

「それは・・・そうですね・・・」


韓国大統領の質問に余裕で返すフリーチェ、その返答にどこかまどろんだ返答をするアメリカ大統領、それは世界の今後を占う会談とは思えないどこか和んだ異質な空気を出していた。

会談が始まると


「まず、この世界の世情がどうなっているのか、それをお聞きしたいのですが・・・」


と質問するフリーチェ、その様子はどこか白々しげである。


「そうですね、まず現状は・・・」


そう言った中国国家主席は問題の事件が起きるまでの世界について説明する。一方、聖達はこの会談の様子を別室でモニターしていた。


「今の所例の事件に関わる話は出て居ないね。奴等を牽制する為に隠してあるけど、それが何時まで持つか・・・」


チュアリがこう口にすると


「ああ、だからその前に連中の目論見を暴く必要があるんだ」


と聖が言う。


「そうですか、問題が山積みなんですね。ですがそんな世界だからこそ、より交流をしていきたいと思います」

「有難う御座います」


どこか白々しい返答をするフリーチェとそれに一応の例を述べる日本首相。


「会話を引き延ばす種もそろそろ尽きてきている・・・仕方無い、危険だが例の事件の話を持ちかけてもらうしかない」


そう判断した聖はアメリカ大統領に密かに連絡を入れ、例の事件の話題を出してほしいと伝える。そしてアメリカ大統領が口火を切り、議題は例の三つの事件になる。


「この様な事件も起こっています・・・」

「そうなのですか・・・その発生源に心当たりは?」


アメリカ大統領が事件について話すとフリーチェはそれについて質問するが、

「それが分かれば苦労はしませんよ。全く、そんな時期なのに・・・それに他の国でも起こっているのですからどこかの国の諜報機関の陰謀何て話も・・・」


と韓国大統領が話す。だがその直後他の出席者や聖達の顔色が変わる。


「どういう事!?そこまで言う予定は・・・」


そうロザリーが口にすると聖は

「ロザリー!!今直ぐにここから奴等の魔力を感知出来ないか?」

「やってみる!!」


と言い、それを受けたロザリーは何かをするが全く変化がない。一方、会場は韓国大統領の発言が切っ掛けとなって論争を始め、日本首相を除く全ての出席者が口論状態になり、更に殴り合いにまで発展してしまう。


「み、皆さん、落ち着いて・・・!!」


何とか場を収めようとする日本首相の言葉も空しく


「五月蠅い!!彼等と交流する資格は私達だけにある!!」


中国国家主席がそういうと他の出席者も激しい口論の中で自分達の利益を口に出し始める。

「まさか・・・このタイミングで例の事件が起きるとは・・・否、起こされるとは・・・」

「不味いよ聖!!この会談は全世界に同時に中継されてる!!これを見たら・・・!!」


会場で起こった非常事態に戸惑いを隠せない聖達。


「ああ、おまけに会場のカメラマンも同じようになってやがる。このままじゃ止められねえぞ!!」


テレサがそういうと聖は


「止むを得ない・・・私達が直接・・・」


と言って会場に乗り込もうとするがその時、


「これが例の事件の現象ですか・・・分かりました。私達も事件解決に協力しましょう。ですがこの状態では全面的な交流は不可能ですね。まずは貴方の国と交流し、完治の糸口を探らせて頂きましょう」


とフリーチェが日本首相の目を見つめながら伝える。


「何!?」


聖が驚愕すると同時に会場にいた日本首相は


「・・分かりました。我が国は元時刻を持ってあなた方の世界との交流を締結します」


とフリーチェの提案に合意し、それを見て


「くっ、これでは・・」


と無念の表情を浮かべるロザリー。


「・・完全に嵌められたね・・・各国の報道機関は今の混乱でフリーチェの発言直前に全ての中継カメラが壊れている・・・つまり今の会見は放送されていない」

「つまり、今の一部始終は・・・」「ああ、各国の首脳と報道機関の人が暴れだしたところで終わっている。此が例の奇病によるものだと仮に認識してもらえたとしても現状は・・」

「各国首脳が大事な会談で突然暴れだした。来客にはそう捉えられてしまったと考えるでしょうね。一部を除いては。」


聖達もフリーチェの狙いを察したのか、状況の分析を行う、だがロザリーの言葉に違和感を覚えた聖は


「一部を除く?」


と聞く。するとロザリーは


「ええ、此を見て。ついさっき日本の秋月家の人たちが送ってきてくれた映像よ」


と言い、ある動画を見せる。そこには日本が交流を締結した旨の発言をする首相とそれを了承したフリーチェの姿が空に写し出されていた。


「これは・・・この前の予告の時と同じ魔法か・・・」

「ええ、日本だけはこの映像が空に写し出されたの。これで日本だけはこの事実を知る事となった。それも希望を抱くという尤も厄介な形で」

「奇病を治すと言う希望か・・・」


これにより、日本だけに今回の一部始終が伝わった事が明らかとなる。そこに日本首相が入ってくる。


「フリーチェとの会談はどうなったんだ・・・」

「すまない・・・既に締結されてしまった以上、どうすることもできない。近々向こうの住人が此方に視察に来ることも決定されてしまった」


テレサの問いかけにこの上なく申し訳ないという口調で答える日本首相。


「他の出席者の皆さんは?」

「皆気を失っている。それにフリーチェも自分の世界に戻っていった」

「分かりました。では皆さんは僕たちが守ります。日本首相は自分の国にお戻りください。こうなってしまった以上、此方も作戦を変える必要が有ります」


聖達はこう告げ、会場へと向かう。其を見届けた日本首相は


「わかった・・・皆さんの健闘を祈らせてもらいます。」


と呟き、聖に続いて部屋を後にする。


「此でこの世界の国一つが奴等の手に落ちてしまったわね・・・」

「うん、恐らく奴等はそこを足場にして次なる一手を討ってくる筈・・・」

「どうすりゃいいんだ!!」

「兎に角、会場に向かいましょう」


会場へと急ぐ聖達、だがその胸中は今回の一件に対する無念の気持ちで溢れていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る