第6話 邪なる純粋

秋月家との面会を終えた聖たちは今現在の状況を整理する。


「敵の意図は読めてきたわね」


ロザリーがそう口火を切ると


「ああ、敵の狙いはこの世界に生きる生命の孤立化。そう考えてまず間違いない」


とテレサが続ける。


「生命の孤立化ですと?」


そう発言した中国国家主席を始め、彼ら以外はその意図を掴みあぐねる。その状況を察知したのか、聖は

「ええ、先程の秋月家の皆さんとの会話の最中の発言で確信しました。今回の魔王軍の動きはこの世界に生きる生命を孤立化させ、お互いに力を合わせられない状況にする事です。ですが狙いがわかっても有効な手が打てないとなると・・・」


と説明する、だがその顔に笑みは無い。有効な手が打てないからである。


同時刻、自室にこもっていた一日は何かの映像を見つめていた。


「ふふ、全ては順調、例のイレギュラーも中々動いてこないし退屈ね」


と呟いていた。そこに命が入ってきて入ってくるなり


「一日ちゃん、学校の空気も町の空気も確実に変わってきてるよ。やっぱり直に感じると違うね」


と満面の笑みを浮かべる。それを見た一日も釣られるように笑顔を見せる。


「そうね。でも余り目立ちすぎちゃダメよ。小学一年生が一人で町中をうろうろしてるなんて目立ちすぎるんだから」


と笑顔を僅かに険しくして言う一日、そんな一日に命は

「分かってるよ。だからシオンや言葉、木の葉にも付き合ってもらった」


と言い、そこに別の子供が三人入ってくる。


「シオン、言葉、木の葉、今ちょうどお話ししてたところだよ」


命がそういうとシオンと呼ばれた銀髪男児は


「そう、嬉しいな。一日ちゃんとのお話の話題になってるなんて」と


言葉と言われた女児は


「うん、一日ちゃんは私たちを救ってくれた存在だもの」と


木の葉と呼ばれた男児は


「行く宛のない僕たちに居場所を作ってくれた」


と口々に言い、笑みを浮かべる。そんな彼等を見た一日も笑顔を浮かべ


「そんな大層な事はしてないわよ。ただ私は私の心の命ずるままに行動しているだけ」


と語りかける。


「それでも助けてくれてるのは事実だから」


そう言うと命は一日の蕎麦に近づき、その手をぎゅっと握りしめる。


「有り難う、なら此れからも協力してくれる?」


一日の口から思わず漏れたその言葉を聞き逃さなかったシオン


「勿論だよ、僕たちのような存在をこれ以上出さないためにもね」


とすかさず返答し、他の子供たちも頷く。


その翌日から三つの事件は更に頻度を増し、その中身も凄惨なものになっていく。誰も信じることが出来ない環境、無情にも居なくなる子供、日々沈む気持ち・・・そしてそれらは確実な歪みとなり、何一つ対処出来ない政治への苛立ち、怒りへと変貌していった。


そんな中でも聖たちは必死で手がかりを追うが一向にその影すら見つけることが出来ない。


「皆、状況はどう?」


確認を取ろうとするロザリーだがその返答は


「最悪に近いレベルで悪いよ。手懸かりもなく、事件だけがおき続けてる。そして各国政府は国民の不満の捌け口にされ、いつ暴動に発展してもおかしくない。其を止めているのが又、事件による不信感と言うのも嫌だね」


という最も悪い物であった。


「ああ、一方で行方不明になる子供たちは増え続けている。例の事件の加害者だけでなく、そうでない子まで・・・」


聖の声にも焦りが混じる。だがその時


「そう・・・あれ?待て、そう言えばその子供たちは、直前に親と喧嘩したり、路頭に迷ったりしてる子が大半じゃなかったか?」


とテレサが気付いた様な声で言う。


「そういわれれば・・・もしそうした子供たちを狙って連れ去っているのだとしたら、その狙いは・・・そして最初にこの一件が報告された子は葵命君。確か最初の事件でも一番最初の加害者だったわ。そして彼が通っていた小学校は例の秋月さんが行方不明になった地域にある。これは偶然なのかしら・・・」


テレサの発言から糸口になりえる可能性を結んだロザリー。それを聞くと


「もし偶然じゃなかったとしたら・・・どのみち他に手がかりはないんだ。調べてみる価値はあるね」


と言う聖、。一行は僅かな手掛かりの可能性を求め、密かに外に出て命たちが通学している小学校の近くに向かう。




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