第5話 更なる事件
そして数日後、更なる事件が起こる。それは学校内逆襲事件を起こした児童生徒が世界中で相次いで行方不明になっていくと言うものだった。奇病、事件を問わず唯一の手がかりと言えた存在が消えた事に世界は動揺を隠しきれず、同時に暴力が解き放たれたと恐れ、畏怖するようになる。だが其を知った聖は各国首脳を極秘裏に召集するのであった。
「聖さん、こうして極秘に集めたのは一体何の為なのです?」
そう質問する日本首相、だが返答したのは聖では無くロザリーだった。
「皆さんも知っての通り、この世界で新たに行方不明者が多発すると言う事件が起きています。ですが此で一つの可能性が出てきました」
そう告げるロザリー
「その可能性とは?」
と当然の様に聞くアメリカ大統領に
「魔王は世界に侵攻する際、必ずその世界で協力者を作り出すのです。そして魔王にこれまでと違う作戦を入れ知恵している者がいるのであれば今回の事件が起きるようになった前後に行方不明となった人間の中に魔王の協力者として選ばれた人物が入っている可能性があります」
と言うテレサ。
「それは・・・そうかもしれませんが、それでもそんな人物なんて・・・」
そう動揺する韓国大統領に対し
「いや、かなり絞り込めてはいる。あなた方に提供していただいたデータとこの世界に魔王がゲートを開いた時刻を照合した結果、世界中でもかなり人数は絞れた」
と自信を持った声を出すテレサ。
「絞れているとは・・・何人程度だ?」
中国国家主席の言及に
「10人程ですね。そしてその中で最も可能性が高い人物の名前は・・・秋月世革」
と告げる聖。
「名前からすると日本人の様だが・・・」
「はい、時間、時刻共に彼が一番可能性が高いと言えるでしょう」
「直ぐに確認します!!」
アメリカ大統領の発言にその裏を説明する聖、そしてすぐさま確認を取る日本首相。世革の捜索願が漸く届いた瞬間であった。
「行方不明になっていたんですね」
そう質問するロザリーに対し
「はい。ですがその頃は既に問題の事件の対応に追われ、其どころではなかったと言うことです」
情けないとしか言い様のない声で返答する日本首相。
「もし可能であれば、その方のご家族の方と面会をしたいのですが」
「それは・・・」
チュアリの提案に言葉を渋る日本首相、チュアリ達の存在が表に出る事を配慮しているのだろうか?
「僕達の事については心配いりません。それよりも今は少しでも手掛かりが必要です。それに、民間人の協力者も居てくれた方がより情報も集めやすいですから」
そう告げられた日本首相は秋月家と連絡を取り、その結果早くも翌日にその面会が行われる事となる。
各国首脳、大統領も立ち会う中で聖たちと秋月家の面会が行われ、聖たちはこれまでのいきさつを説明する。
「にわかには信じられません・・・」
困惑を隠しきれない希有
「そうでしょうね・・・私もあの幾何学的な出会い方をしていなければ恐らくは信じられませんでしたから」
日本首相もその心情を汲む。
「それで、世革は無事なのですか?」
震える声で望が聞くと
「魔王の初手行動がこれまでと同様のパターンであれば少なくとも現時点では無事だと思います。ですがこれ迄と違う行動をとってきている以上、可能な限り迅速に彼の捜索を行う必要が有ります。今日皆さんをお呼びしたのは世革さんの身体的、精神的な特徴を教えていただきたいからです。捜索するにしても情報がなければ始まらないので」
チュアリが用件を伝え
「身体的特徴は此方に写真があります」
と言って持参した写真を見せる未末、そこに希有が「性格は今で言うさとり世代を地でいくような子です」と続ける。
「さとり世代とは?」
そう聞くテレサに希有は言葉の意味を説明し、其を聞き終えた聖は
「成る程・・・この世界ではそうした性格の人が多いと?」
と言う。
直後に韓国大統領は
「世界ではありませんよ。全く、最初の人間が日本人であったから・・・」
とどこか侮蔑的な歯言い方をし、それを聞いた日本首相も
「何!?これは・・・」
と食って掛かる。
「今は口喧嘩している場合じゃないでしょう」
と言って両者を制するチュアリ。
「これも例の事件の影響か・・・」
そう告げるのはアメリカ大統領であった。
「事件の影響?」
テレサが質問すると
「ええ・・・実は最初の二つの事件が起こってから社会秩序がどんどん変化しているんです・・・これまで身近だった人が突然襲ってきて、弱者が強者に逆襲を仕掛けて・・・そのせいで今ではどんな人間関係もお互いの顔色を伺い合い、合わせ合い、一緒にいながら信用していない息が詰まりそうな関係になってしまっているんです」
そう語るのは首脳では無く、民間人の未末であった。と言う。
「それは・・・何とも言えない状態ですね・・・」
聖が深刻な顔を見せる。
「私たちはまだましな方かもしれません。世革の一件で問題を共有できていますから。ですが社会の空気は確実に悪くなっています。会話も少なく、一人で生きざるを得ない状況がどんどん量産されている・・・此では今まで社会全てが否定されているようです」
そう話す希有、だがその顔は辛うじて繋がっている綱の要にに頼りない。
「これは早く見つけ出し、今回の一手の真意を探らねえと不味いぞ!!」
「ああ、皆さん、ご協力ありがとうございます。」
テレサと聖のこの一言で面会は終了する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます