第4話 動き出す世界

聖の話を聞いた各国首脳は聖達異世界人に協力、事態の収集に共に当たることを了承した。そして魔王達にこちらの動きを悟らせない為、この事実は一般公開はされない事も又、その場での合意として取り決められた。


だが、聖達が子の世界に来た事は既に魔王の知るところであった。


「奴等め、又しても追ってきたか」


そう言うフリーチェに続けて


「我々が制圧した世界においても尚抵抗を続ける者達がいるのは一重にあの者達が希望となっているが故、そう考えれば可笑しくはありませんね」


と配下らしき男性が言い


「確かにな。だがそれは同時に奴等を倒せば祖の希望が消えることも意味する」

と別の男性も続け、


「この世界で決着をつけてやるとしますか」


と女性が言う。


そこに


「成程、この者達がフリーチェ様を追いかけ回している鬼達ですか」


と言う声と共に何者かが入ってくる。


「そうか、君はまだ見たことがなかったな」


フリーチェがそう告げると何者かは


「ええ、なので一目見ておこうと思いまして。これからの敵を」


と告げる。


「奴等は俺たちと何度も戦ってる。油断はしない方がいいぜ」


最初の男性は何者かに警告する様に言う。


「承知していますよ、ヒリズ先輩、回帰先輩、神消先輩。どうやら現状ではこの世界の人間の極一部と接触しただけのようですから当面は当初の計画通りに事を進めます」

「そうか、では引き続き頼む」


フリーチェの言葉を聞き届けると何者かは


「では、戻ります」


と告げ、部屋から去っていく。


其を見た二番目の男性基ヒリズは


「あの子・・・本当に協力的だね」


と言うとどこか含みを持った顔を見せる。


最初の男性基神消も


「ああ、現地協力者はこれまでも用意してきたが、彼女は特に異質だ。」


と言い、女性基回帰も


「仮にも自分が生まれた世界だと言うのに躊躇いもなくフリーチェ様に差し出す事を決め、更により良い状態にしてから差し出すといって自ら行動を起こしている・・・しかも見事な策略で」


と言う。


「もしかすると今回は我々の想像以上にとんでもない者を引き入れてしまったのかもしれんな。当初より異質な反応を見せた彼女を引き入れたと言うことは」


そう警戒とも期待とも取れる発言をしたのは他ならぬフリーチェであった。


フリーチェ達の居た部屋から外に出た何者かは


「あれが噂の敵ですか・・・ですが、今のところは当初の予定通り、計画を次の段階に移行した方が却って動きやすいわね」


と呟く。そこに命がやって来て


「一日ちゃん、そろそろ皆が待ちくたびれてるよ」と声をかけると一日は


「分かった。すぐに行くわ」


と返答する。


一方、聖達は何処かに集まって話し合っていた。


「どうだロザリー、掴めたか?」


聖が聞くとロザリーと呼ばれた女性は


「いいえ、この世界から反応は感じられないわ」


と告げる。


「反応が感じられない?」


困惑する聖にロザリーは


「ええ、今この世界から私達の同志の反応は感じられない。いえ、存在していない可能性の方が高いわ」


と告げる。

その場にいた別の男性が


「そんな事があるのか?俺たちは・・・」


と言うとロザリーは


「ええ、あり得ないとは思う。けど今回の魔王サイドの動きは明らかにこれまでとは違う。だとするとこのケースでも何かイレギュラーが生じているのかも」


と警戒心を強め、


「いずれにしても今後の動きに警戒が必要だな。チュアリ、テレサ、ロザリー、君達は引き続き捜索に当たってほしい」


と言うとチュアリと呼ばれた少年は


「分かってるよ!!」


と告げる。

その後も二つの事件はこれまで通り、いや、これまで以上の頻度、凄惨さを出していくようになり、世界中で奇病に対する対策が出ない事に人々はイライラと不安、不満を募らせ、其は一致団結する事を誓った各国首脳の関係にすら深く暗い影を落とし始めていた。



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