第3話 奇病の発生

世革が消息不明になってから一週間後、彼の実家である秋月家ではその事が話題になっていた。


「世革とは未だ連絡がつかないの?」


そう話すのは彼の母、望。


「うん・・・毎日電話してるんだけどもう一週間だよ・・・」


と不安げな声で返答するのは妹、未末。


「警察に捜索願いは出したが、今はどこの警察も例の事件で手一杯だそうだ」


こう語るのは父 希有。

「例の事件・・・あの全国、いえ、世界各地で起こっている暴力事件の事?」


望が聞くと


「ああ、一説では新手の奇病が原因ともいわれているからな」


希有はこう返答し


「お兄ちゃん・・・もしかしてその奇病のせいで・・・」


未末は不安を隠せない。


そんな未末を希有は


「未末、縁起でもないことを言うものじゃない。今は無事を信じるしかないんだ」


と諭し、未末は


「・・・うん」


と頷く。


同じ頃、二つ目の事件の最初の発生現場となった小学校では一人の男子児童が先生に


「良く出来ました」


と誉められていた。


「命君、最近本当によく頑張ってるわね。成績も運動神経も少し前とは大違いだわ」


そう先生が言うと命と呼ばれた男子児童は照れながら


「はい、先生。有り難うございます」と返答する。


その微笑ましい光景を近くで見つめる一人の女子児童が居た。

学校終了後、その女子児童は命と共に下校する。すると命は


「一日ちゃん、有り難う」


と唐突に告げる。


一日と呼ばれた女子児童が


「何?いきなり?」


と少し困惑した返答をすると命じゃ


「だって一日ちゃんと会ったからだよ、学校がこんなに楽しいと思えるようになったのは」


と言い、それに対して


「そんな・・・私、大したことはしてないわよ」


と一日は返答するが命は


「それでもだよ」


という。


その会話の内容は微笑ましくも何処か年齢不相応な不自然さを感じさせていた。


そして二人は同じ家に入っていき、命は「じゃ、僕は皆のところにいってくるから」と言って玄関で別れて別々の行動を開始する。


その後命は一軒家に似つかわしくない大広間に行き、そこに居た大勢の子供達と会話を始める。その中の一人が


「命君、遅かったね」と待ちくたびれた様子で言う。


「ゴメン、今日は学校が長い日で」


命は軽く頭を下げる。


「ま、仕方ないよ。それより早く」


と言い、近くの玩具で遊び始める。


その部屋のTVには例の二つの事件に着いて各国のトップが階段を開いているこの状況には似つかわしくないニュースが映し出されていた。


だがその会談会場では正にその時、天井から突如として人が現れると言う前代未聞の事態となっていた。

当然の様に困惑する出席者達に現れた一人に中国国家首席が


「一体何者だ、その魔王フリーチェと言うのは?」


と聞くとその中の一人は


「私達の敵です。これまで様々な世界を支配下に置いてきた存在。私たちはその支配された世界の存在なのです。魔王を倒し、世界を救う為にこの場所へとやって来ました。ですが今回の魔王の行動は明らかに不自然な点が多い」


と返答する。


「不自然な点とは?あなた方が先程名乗った聖、チュアリ、テレサ、ロザリーと言う名前と同様に私たちの名前に合わせて要るようにこの世界の状況に合わせているのでは?」


そう質問する日本首相に対し聖と呼ばれた男性は


「いえ、これまで魔王は最初に現地の生命に自身の力を与えて洗脳していましたが、その後は数押しで制圧していくケースが圧倒的多数でした。その段階で阻止した世界も在しています」


と告げ、更にアメリカ大統領が


「成程、最初だけ入り口を作りその後は・・・と言う訳か」


と言うと聖は


「この世界に魔王が来ているのは確実です。ですがこのやり方は魔王のやり方ではない」


と断言する。

「もし仮に今この世界で起きているあの事件が魔王の仕業だったとして、このやり方の違いは・・・」


日本首相の新たな質問に対し、聖は

「主導しているのは魔王以外の何者か・・・と言うことなのかもしれません。前例はありませんが、その可能性も考慮して行動してみます」


と告げ、アメリカ大統領が


「つまり、あなた方は私たちの味方だと?」


と聞くと

「少なくとも今は」

と聖が返答する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る