突然の訪問者(前)
家に着くと、扉は開きっぱなしだった。
けれど前を通る人々はまるで気づいていないかのように扉の前を素通りで歩いていく。
わたしはまた、この扉を通った。けれど、本当に最後になるなんて思ってもいなかった。
中に入るといつも通りの風景だった。何も変わっていなかった。
家の中に入って畳の上に寝転がると、神様のシーシャとの会話やさっきまで遊んでいたアリスとの思い出が夢ではないかと考えてしまう自分がいた。
そしてシーシャの言っていた使者を待っていようと思っていたのだけど、さっき動きすぎたせいで眠気が襲ってきていた。なので、目を閉じ少しだけ横になろうとしたときザワザワと、草木の揺れる音がわたしの耳に響いてきた。
疲れて感じていた眠気が一瞬消え去り、わたしの体は立ち上がった。そして、音のした方向に急ぎ足で駆け出した。
そこに向かうと草むらの奥の茂みから草木をかき分ける音が聞こえてきた。
わたしはまっすぐ、奥の方をじっと見ると奥の方にいる動いている何かを発見した。けれど、わたしはそれを感知すると体が一歩すくんだ。
こっちに向かってきていたのは黒いフードを被った人だったからだ。
わたしはその場でとっさにしゃがみこみ草木の茂みに隠れた。
この屋敷の中で初めて見た、不審者。どうしようと考えていると頭がパンクしそうだった。頭が真っ白になり冷や汗まで出てきて困惑していた。
そのせいでわたしは反対側から近づく気配ない足音に全く気付かなかった。
そして不意に肩をポンと手で叩かれ、わたしは驚き振り向きながらしりもちを
その場でついてしまった。そして目の前には、クスッと微笑んだ少女がそこにいた。
わたしが少女を見上げて驚いているとわたしとは少し違う、大人っぽい笑みをしてわたしに右手を差し出した。
「もしかして、ここに住んでいる人かな?」
と、左手で
「はい・・・そうですけど」
わたしは家の方を向き、そう答えて手を取って立ち上がった。
「驚かせてごめんなさい。こうやって驚かしたりするのが好きなのよ昔から。許してね」
わたしは純粋にこの人にされたら何でも許してしまいそうと思ってうなずいた。
そして、油断していたわたしに今日一番の不幸なことが起こった。どこからか叫ぶ声が聞こえ、ふと横を見るとあの全身真っ黒の不審者が意味不明な言葉を発しながらわたしの向かって一直線に走ってきたのだからだ。
わたしは、何もできず立ち尽くしていると横にいる少女がわたしの前に来て、小さく呟いた。
『カトレア・バインド』
そう静かに言うと、周りの空気がピンと張った気がした。
そして、少女が手を前に出すと地面から青紫色に光る魔法陣みたいなものがすっと浮かび上がり走ってくる不審者に向かい青紫色に光り輝く長い鎖が襲い掛かった。
そして、半不透明な薄く光り輝くカトレアの花が空中に飛び散った。鎖は不審者の手と足を捕らえ、空中に投げ飛ばした。
そして、不審者の着ていた真っ黒いコートが吹っ飛び中からスーツを着た男性が見えた。
そしてわたしのすぐ後ろの草むらに勢いよく激突した。一斉に葉っぱが舞い上がりわたしは茫然としていた。
そうしていると、少女は軽やかに不審者に近づき笑顔でハッキリ言った。
「先生?、これ以上ふざけたことをすると生徒のわたしが許しませんよ、生徒会権限を使用してひどいことさせますよ?」
それを聞くと、草むらからか細い声が聞こえてきた。
「だって、転校生だよ?誰より早く会いたいっていうのが担任の先生としての思いっていうか・・・いつも問題児ばっかり相手にしていて疲れていたからさぁ、息抜き混じりに・・・ダメかなぁ、
「先生でも、ルールは守ってください。迎えに行くのは生徒会の私達の役割なんですから!大体何なんですか、問題児って・・・否定はしませんけど先生なら先生らしくすることがあるでしょう!」
目の前で繰り返されている言い争いにわたしは見ていることしかできなかった。言い争いに茫然としていると、また後ろから数人の足音が聞こえてきた。けれど目の前の二人はまるで気づいていなかった。
わたしは怖くなり足音とは別方向に逃げようとしたとき、声が聞こえた。捕らえるとか、捕まえる・・・そういうセリフが。わたしはその場から、なんとなく遠くにある蔵に向かって全力で走り、逃げ出した。足音や、声が聞こえてこなくなるまで全力で一直線に。改めてわたしの屋敷の広さを痛感した。アリスと一緒に遊んで体力など、ほとんど残っていなかった。
けれど、いつも家に帰ればそんなこと感じなかったのに今日はいつもと何か違うような違わないような実感にわたしは焦っていて考えることができなかった。
そして、ふいに目の前が白い
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