夕暮れ時の神様
少女は蔵の上の屋根にバランスよく立っているわたしより少し背の小さい幼い女の子を見つめていた。
そして女の子は繰り返した。
「キミにはこの世界は何色に見えるの?」
と、変わらない笑顔で聞いてきた。
わたしは異常な光景に、呆然と顔を見上げて言った。
「
その答えに女の子は、幼い声で
「キミにはそう見えるのか、けどそれはキミの周りの環境のせいだ。世界に呪われているんだね。この世界から嫌われているボクのように・・・ね」
少女は、言っている言葉にただ瞬きをするだけだった。
そして、小さく聞き返した。
「ボクもって・・・どういうこと?」
それを聞いた女の子は、くるっと一回転して答えた。
「ボクにはこの世界の色がわからない、
「ボクの・・・世界、色?」
意味の分からない言葉に少女は戸惑った。
そうしていると女の子は、くるっと優雅に回り自信ありげに言い出した。
「ボクは世界を受け継いだんだよ。そして、世界を改変し始めたんだ。
ボクは新たな、この世界の唯一の神様になったんだ!」
「新たな・・・世界?」
女の子の威勢のいい言葉にわたしはただ女の子を見つめていた。
そして女の子は核心の言葉を少女に伝えた。
「そしてボクは、求めているものを手に入れ
見たい世界の色を実現を夢見ているんだよ」
「・・・世界の色」
そして、女の子は静かに言い放った。
「キミはこの世界に何を求めるの?」
「何を求めていたの?」
と、-----
「わたしが求めているもの・・・」
「それは何?」
女の子は、蔵から飛び降り少女の前に着地した。人間技とは思えない身体能力に口が閉じた。
女の子が私の顔を覗き込んできてわたしは小さくつぶやいた。
「世界を壊したい、わたしを拒絶した世界を」
そう、ずっと心の底で思っていたことを吐き出した。
そうすると女の子は一歩下がって、笑った。
そして、手をわたしに差し出し言った。
「そんなことされたら困るよ、だから迎えに来た。この世界の核に存在するボクの作った世界に迎えてあげる。願いが叶う力が手に入るボクの
その言葉を待っていたというばかりに、少女は目を見つめ手を取った。
触れた手を見て女の子は笑った。
「じゃあ、迎えの準備をしないとね、理架」
知るはずもない名前を呼ばれ、戸惑った。
「どうして、知ってるの名前」
「ボクにわからないことなんてないしできないこともないんだよ、言っただろこの世界の神様だって」
なんてことのない答えに問いかけた。
「神様の名前は?」
その問いかけに神様は後ろを向いて答えた。
「シーシャ、それがボクの名前さ」
そういうと神様は指をパチンッっと鳴らした。その瞬間、神様を中心に空気が弧をかくように振動した。
そして、神様はもう一度こちらを振り向き
「扉を開けたよ、いつでも外に出られる。最後の思い出作りにでも行っておいで。迎える準備ができたら、使者をここに連れてくるから」
「最後の思い出・・・」
わたしは行きたい場所が思いつかなかった。
黙っているわたしを見て神様は
「別に、ここで待っていてもいいよ。どうせ世界を越えたら
みんな、理架のことは忘れてしまうだろうし」
その言葉にわたしは何も思わなかった。
けど、神様はつづけた。
「けど、家族や恋人はわずかに存在していたということを覚えているかもしれないね、確信はないけど」
「いない、そんな人たち・・・」
感情なく吐き捨てた言葉に、神様は寂しそうに微笑んだ。
そして、目の前から光とともに消滅した。
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