神様に出逢う時間(前)


中学2年の2学期終業式

小学校から大学まであるエスカレート式の有名な女子私立校[柊木ひいらぎ女子学院]。生徒はそれほど多くはないが、数々の有名人を出している学校である。校長先生もこの学校の卒業生で、元女優の有名人。この学校の職員は全員女性で、卒業生という少し凄い学校。この学園では男性など入ることすら禁断だった。

白色のリボンが付いた紺色の上品な制服を着た女の子たちは、終業式をしていた体育館から急ぎ足で教室に戻っていた。教室に戻ると先生が生徒に通知表を渡し始めた。

ざわめきだすクラスに


わたし 藤咲ふじさき 理架りか

無言で通知表を受け取り、見ていた。


黒い瞳。女の子の平均的な身長と体重。真っ黒な膝ぐらいある後ろの長い髪。まわりの反応は純粋に綺麗な女の子だった。だけど、彼女は誰にも近づこうとしたりは一度もしなかった。そのせいでクラスでは、近づきにくい存在でもあった。

すると横から、

「また学年1位なんだ、すごいね理架」

と、笑顔でわたしに話しかけた来た。

「・・・そんなことないよ、普通」

わたしは唯一の小学校からの幼馴染の赤坂あかさか ひなたに言い返した。ひなたはこげ茶色の濃い茶髪でいつも髪の毛をカールしていた。わたしとは違いかわいい感じの女の子。ひなたは人見知りだからわたし以外のクラスメイトにはまだ緊張していてうまく喋れていなかった。

「来年になったら進路のこともあるし、理架なら付属大学、推薦とかで余裕で入れるでしょーいいなぁ。私は単位ギリダだし、これから頑張らないとなー」

と、二人きりの会話をしていた。そんな会話を耳で聞きながら、軽くうなずき微笑んだ。

そして誰も聞こえないような小さな声で言い放った。

「未来なんて真っ暗で何もないのに・・・みんなは何を夢見ているんだろう」

少女は窓越しに遠くを見つめていた―――――


退礼が終わるとみんなが帰り出して、ひなたと一緒に帰ろうとしたとき担任の先生に呼び止められた。

「ひなた、先に帰っていいよ」

「じゃあまた遊ぶ約束しよー、電話かメールする!」

「うん、待ってる」

ひなたが曲がり角を曲がって見えなくなるまでわたしは少し寂しそうな顔で見ていた。それから先生の待っている職員室の横にある空き教室に向かった。

「しつれいします」

扉を開けると、担任の若林わかばやし すみれ 先生が笑顔でこっちを見た。

「ここに座って、藤咲さん」

わたしは直感的に感じていた。何を言われるのか、何を思っているのか先生の顔を見て、また目の前が少しずつゆっくり・・・濁り始めた。

「進路はどうするの、昨日提出だった進路調査票何も書かずに出したでしょ?せめて付属大学の名前ぐらい書いててくれないと困るのよ。成績上位なんだから他を受験しても大丈夫だとは思うけど、藤咲さん何か考えているの?進路で悩んでいるなら先生に教えてくれない」

「まだ、何も決めていないから書かなかっただけ」

思っていた質問に、なんとなく距離を置いて話してしまう。呼び出されるぐらいなら嘘でも付属大学の名前を書いておけば良かったと心の中で思った。

そんな様子に気づかずに先生は

「夢とかないの?将来したいこととかでもいいわ。付属の大学にはいろんな学科がたくさんあるのよ、先生は文系を選んだんだけど藤咲さんはどう?」

笑顔でわたしに聞いてきた。

「夢、したいこと・・・」

軽くつぶやいて、わたしは前を向いた。そして先生に向かって質問をしてみた。その回答に期待など微塵もせずに。


「先生には、この世界は何色に見えますか・・・?」


先生は驚いて、そしてまた笑顔になって

「そ、そうね・・・黄色かしら?世界は希望にあふれているから」

その答えを聞いて、わたしはイスから立ち上がった。

「先生、さようなら・・・また3学期に、それまでに考えておきます」

そう言い放って、教室から急いで走り出た。先生の叫び声が小さく聞こえていた。わたしは耳をふさいで学校から出た。


わたしは帰り道を勢いよく走っていた。

息を切らしながら、一直線に家に向かって走り出した。そして家である自分なりに学校と同じぐらい、それ以上の広さだと思っている屋敷をにらみつけて、目の前にある大きな扉に手をかざした。するとその扉は少女を認証したかのようにゆっくりと静かに開き始めた。

その様子に少女は扉に向かい

「わたしが世界ここからいなくなく瞬間」

下を向いて言って、屋敷の中に足を踏み込んだ。そうして、扉はまた閉じた。

少女以外何も入れるなというばかりに―――――


そして世界から少女は切り離される。


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